2010年5月の井上力

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5月31日(月) 12日間の座り込みおわる
5月30日(日) 闘病観察・25
5月29日(土) 約束を守った人が罷免され
5月27日(木) 岩屋で「語る会」
5月24日(月) こっちこそ「断腸の思い」
5月22日(土) ありがとうございました。藤原蔓男さん
5月19日(水) 闘病観察・24
5月18日(火) 兵庫県の強みは何か
5月16日(日) 言わんこっちゃない
5月15日(土) 市長が神戸空港売却を宣言
5月13日(木) 知事が神戸空港を民営化する?
   

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2010年5月31日(月)の井上力
12日間の座り込みおわる

辺野古のテントで2200日続いている座り込みと連帯しよう!三宮のマルイ前、厳密に言えば「阪神カメラ」さんの前で、20日からきょうまで続けられた座り込みと署名は「沖縄から基地をなくす兵庫県実行委員会」=自治労県本部呼びかけ=の手で行われてきました。23日の鳩山首相の沖縄入り、28日の共同声明と閣議決定、そして福島大臣の罷免、社民党の政権離脱・・・本当に激しい出来事の起きた12日間でした。丸々2時間いたことはない、いい加減な参加の仕方でしたが、顔を出し、ビラを配ったりマイクを持ったりしました。署名をしてくださる人の数が日に日に多くなったように思います。

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2010年5月30日(日)の井上力
闘病観察・25

「社民党の政権離脱、首相こそ退陣を」・・・あすの『おはよう新社会党です』。

毎日新聞社と琉球新報の沖縄県内世論調査結果は、内閣支持率8%、辺野古移設反対が84%で同賛成は6%。共同通信が行った世論調査は、辺野古移設評価せずが66.1%、「鳩山首相辞めるべき」が5割を超したそうです。

ニューヨークタイムスは日米共同声明を「オバマの勝利」と書き、沖縄の地方紙2紙は、電子版・号外で社民党の政権離脱を報じています。

*** * ***

母が「半生記」(91歳です。本人は半生記とは言っていません)をパソコンで再び書き始めました。父親が存命の学生時代がやはり一番楽しかったのでしょう。「オーラルヒストリー(口述の自分史)」が流行しているようですが、私は非協力です。一人娘で「働く女性たれ」という教えを受け、それがその後の人生の不幸を幾分かでも和らげた。私にはその程度のことしか分かりません。

1919年という年は、スペイン風邪大流行で同年代の子どもが大量に亡くなり、学校に入る、就職する、何をするにも競争が緩やかだったというのが母の口癖です。父親が死んで戦争が始まったことを、私の祖母(母の母)は「イヤなことを体験することなく、ええときに先立った」と言っていましたが、それからが苦難の連続でした。極めつきは姉が父親と同じ結核を患ったことと息子の社会党入党だったでしょうが。アジア・太平洋戦争の始まりは12歳のときです。男性の不足、旧民法、空襲、夫の就職、夫の単身赴任、夫の死、水害、母親の「恍惚症」(痴呆症と命名され今は、認知症)・・・もっともスペイン風邪に加えて戦争で男性が不足したのは、資格を持った女性にとって仕事に就ける確率を増やしました。現代の、少子化なのに競争が激しい時代とは大変な違いです。

辛かったことは忘れるに超したことはありません。片手が動く、ローマ字入力ができる、女学校時代のことを書いているようでした。老健に入ったSさん、ご夫婦とも歩くのが辛そうな同じ棟に住むIさん、私が訪ねる予定です。

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2010年5月29日(土)の井上力
約束を守った人が罷免され

きのうは「くらし・まち・県政」を語りあう会という名称なのに、「福島さんが罷免されたって、今メールが入りました」と実況するOさん、原和美さんも「政局」について、など、集まっていただいた方々も永田町の動きに大きな関心を寄せておられました。

日本国憲法第68条「2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。」という条項だけを拠り所に福島瑞穂・社民党党首は罷免されたようです。68条は何の条件も付けず総理大臣に任命と罷免の権限を与えています。

まだ1週間もたっていない先週の日曜日、23日、沖縄へ行った鳩山首相はたらい回しの挙げ句辺野古に新基地をつくる意思を固めたことについて「断腸の思い」と言いました。私は、三宮の座り込みやビラまきなどで「腸がはり裂けんばかりに悲しいのは沖縄県民であり、国民」と言ってきました。

「断腸の思い」をネットで調べてみました。罷免という単語も入っていた「故事成語の意味と由来」に次のように書かれています。

 東晋の桓温 (かんおん) は、蜀の地にあった成漢(五胡十六国の1つ)に攻め込み、三峡(長江の上流の渓谷)までやってきました。
 そこで、部隊の中に猿の子を捕らえた者がいました。
 子を捕らえられた母猿は、岸沿いに哀しげに叫びながら、百里以上もついてきて、ついには船に飛び乗りましたが、途端に息絶えて死んでしまいました。
 その母猿の腹を割いて見ると、腸(はらわた)が細々にちぎれていたそうです。
 桓温は、これを聞くと怒って、小猿を捕らえた者を罷免してしまいました。

http://www.d2.dion.ne.jp/~nob_o/kotowaza/t_dantyo.html

由来は(どうも三国志ではない)断腸の思いをしたのは小猿を捕らえられた母猿で、抗議の死を遂げたのです。由来によれば、母猿に断腸の思いをさせた部下が罷免されるのです。拡大解釈しても、部下を罷免するときの将の思いではありません。

21世紀の日本では、庶民に悲しい思いをさせる宰相の心中を「断腸の思い」と言うのだそうです。最初から自民党時代の案に固執して対米交渉してきた外相や、この際自衛隊の基地を増やそうと政治主導ならぬ軍人主導の折衝をしてきた防衛相を辞めさせたり、また首相自身が辞めるのではなく、「百里もついてきた」福島瑞穂さんに辞職を迫った上で、そのクビを切ってしまったのです。

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2010年5月27日(木)の井上力
岩屋で「語る会」

共同声明と閣議決定は、わざと中身を違える・・・。そんなアホな。「公開密約」「二枚舌閣議」。学べば学ぶほどに「ウソをついてはいけません」。お母様に聞け。

けさの「木曜行動」のチラシに上のように書きました。きょうの全国知事会議、あすの閣議と日米共同声明は歴史に大きなシミを残しそうです。

岩屋地区で「井上力と語る くらし・まち・県政」は、あす。4回目の企画で、毎回30人ほどの方々に集まっていただきます。岩屋地区は震災前から「密住」とか「住市総」の補助制度に、容積率を緩和して木造住宅の建て替えを進め、ビルやマンションが大量に建設されてきました。旧・近代美術館や王子動物園からHAT神戸にかけて「文化軸」と神戸市が名づけて民間再開発や灘駅の改造が進められてきました。一方、駅から少し離れると、こうした地域指定はなく、震災の被害も非常に大きかった地域です。市場はなくなりました。

阪神大震災の朝、中町1丁目の公園に避難した人々はテント村をつくりました。持ち寄った材料でご飯を炊き、ラーメンを造り、分け合って食べました。自治組織ができあがるのも、すぐでした。テント村だけでなく校区の西灘小学校で炊き出しが始まったのは17日でした。自治組織・・・すごいと思ったのは、新聞広告の裏に番号を書いて「チケット」が教室や廊下、階段など「班」ごとに配られて、炊き出しを「早い者勝ち、体力のある者勝ち」にしないシステムがあったことです。岩屋公園も同様でした。周囲の企業にも協力を求めてコンテナを置き、住まいが復旧するまでの間、「岩屋テント村」は続きました。「村長」がいて、代議員がいて、共同生活のルールができあがり、ボランティアも駆けつけました。

当時の市会本会議で、3月28日に桝田伸二、5月15日に粟原富夫、6月27日に井上力、それぞれが「自治組織」に触れています。

あすの「語る会」を準備していただいているのも、そうした方々です。

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2010年5月24日(月)の井上力
こっちこそ「断腸の思い」

警報が出て、まちに子どもの姿もありました。都賀川の黄色い回転灯(警報)は、きのうからずっと点きっぱなしです。記憶では2月からずっと雨。けさの早朝行動は、現地(阪神大石駅前)で中止の判断。

けさ配る予定だった『おはよう新社会党です』は、沖縄問題。「断腸の思い」は沖縄や国民の思いであって、わざわざ沖縄へ行ってこう発言した鳩山首相が「胸がはり裂けるばかりに悲しい」と仲井真知事に語るのはおかしいと思います。胸(慣用句では「腸」となっていますが)がはり裂けるばかりに悲しく辛いのは、沖縄であり、国民です。

きのうは岩国でも4,000人の集会が開かれました。『読売』が写真入りで報じています。井原勝介・前市長を代表にして愛宕山に米軍住宅を造って海兵隊や海軍に提供しようとする鳩山政権に「怒」のプラカードを示して抗議しました。

「在日米軍全体の抑止力を、現時点で低下をさせてはならない」(仲井真知事への謝罪のなかで、鳩山首相)と言いますが、嘉手納が攻撃され、基地機能が不全となったとき普天間から反撃する、あるいは嘉手納を奪還するために岩国から出撃するというアメリカの軍事戦略は、崩壊しています。普天間も岩国も海兵隊はイラクの占領やアフガニスタンへの「自衛戦争」に不可欠のものでした。「これは、ま、昨今の朝鮮半島の情勢からもおわかり」(同)ではないのです。

27日の全国知事会で首相が知事に圧力を加えさせてはなりません。訓練、演習の移転・拡散をきっぱりと断るべきです。各県で若者が仕事に就けない、地方の暮らしが疲弊していて、国はまず不況打開のために全力を挙げるべきです。

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2010年5月22日(土)の井上力
ありがとうございました。藤原蔓男さん

きょうは、どうしても行かなければと思っていた会合に、ついに参加できずに終わってしまいました。昨年2月に亡くなった藤原蔓男(ふじわら・つたお)さんをしのぶ集い。富士鉄広畑から新日鉄広畑へ鉄鋼労働運動と社会党の「労働者魂」。労働者出身の知識人でした。

藤原蔓男さん 新社会兵庫より

私らのような(20歳離れています)者を見るまなざしの優しく、小柄な体から発する明瞭で分かりやすい演説。まさに忸怩たる思いそのものの当時の私らの発言を、フォローして進路を明快に説いていただきました。職場で、労働組合で、あるいは地域で、規模の大小を問わず、仲間や後輩が藤原さんにうなずき、教えを請い、慕われていた藤原蔓男さん。

あの時代のことですから「もうついて行けません」と、弱音をはいた仲間をおそらくたくさん見てこられたでしょう。藤原さんが正しいことはみんな知ってる。でも差別賃金、合理化という不合理、借金をしてしまった、イジメに耐えられない、仲人をなぜ上司に頼まない、家族の反対に抗せない、役員選挙で労使協調の候補者に投票しなかったのはオマエだと毎日つるし上げられる、でも出勤し仕事に誇りを持ち続け・・・「憲法が工場の門で立ちすくみ」だった。

同じ鉄鋼の故・太田猛・元県議(藤原さんより先輩です)は、同じ境遇を経験し、でも最後に私は次のようなお話しをお聞きしました。今から6年半ほど前のことです。「入院してたら『委員長ちゃいまっか』と声をかけてくれる昔の仲間とたくさん出会う」と。藤原さんも同じような経験をなさったのだと思います。

別れていった仲間、最後まで一緒だった仲間、働く仲間の友情のなかに晩年、藤原さんは包まれていたはずです。何の心残りもない、正しく生きた人生。ただ、私の心残りは余りにも大きいのです。とくに「学習」ということについて。折に触れて思い出します。

ありがとうございました。藤原蔓男さん

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2010年5月19日(水)の井上力
闘病観察・24

ひと月ほど前に、さいたまから姉が蘭の植え替え、庭(団地の「専用庭」)の草刈りなどで来てくれていたのですが、そのお礼も言っていませんでした。母が気にして急かされ、お礼状の端に次のような「手紙」を書きました。

デイサービスに行っている「○○○○」が共同運営していた「御影」から撤退して「△△△」が単独で運営することになり、母は「○○○○石屋川」に火曜と金曜、「△△△御影」に土曜という計画になりました。「△△△御影」は、これまでと場所は同じでスタッフ総入れ替え、「○○○○石屋川」は初めての場所で、スタッフは半分くらい顔見知りだそうです。ケアマネージャー「××××」のWさんを交えて相談した結果です。6月から。

チンプンカンプンだと思います。母もまだ混乱しています。「前に一軒の家が建って風景が変わるのも高齢者にはよくない」と言いますが、環境の激変をみんなで押しつけているようです。

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2010年5月18日(火)の井上力
兵庫県の強みは何か

記者:
 確認ですが、成長戦略会議の最終的な提案の中に、伊丹の将来的な廃港を検討するということが入ること自体についての憤ったりというような感想をお持ちでしょうか。 

知事:
 
憤ってますが、相手が書いてしまうのだから仕方ありません。リニアみたいな不確実な前提で廃港にまで議論を及ぼすのはいかがか、あるいは、羽田空港便の利用者が無くなっても900万人以上利用されている空港の機能を無くすことの是非はいかがか、また、羽田空港がハブ空港になれば大阪国際空港の価値はもっと上がるのではないかなど申し述べていますが、成長戦略会議がここは書きたいと言われているのであれば、それは成長戦略会議の提案であって、私の提案ではありませんので、成長戦略会議の責任でされることだろうと思っています。

兵庫県知事の定例会見(5月17日)http://web.pref.hyogo.jp/governor/g_kaiken100517.htmlより

きのうの兵庫県知事の定例会見、最後のところです。「憤っていますが、相手が書いてしまう」「それは成長戦略会議の提案であって、私の提案ではありません」などと、がんばっておられます。

ところで成長戦略会議の顔ぶれ、その肩書きを並べてみました。151ページの報告書を「書いた」のは次の11人です。左の◎と○は委員長と副委員長、右の●は航空分野の委員です。☆は分野の「とりまとめ」。

  大上二三雄 エム・アイコンサルティンググループ株式会社 代表取締役社長
  大江匡 株式会社プランテックアソシエイツ 代表取締役会長兼社長・建築家  
  大社充 NPO法人グローバルキャンパス理事長
・全国地域オペレーター創造ネットワーク代表世話人
 
  坂村健 東京大学大学院情報学環教授  
  木敦 モルガン・スタンレー証券株式会社 マネージングディレクター  
  中条潮 慶應義塾大学商学部教授
長谷川閑史 武田薬品工業株式会社 代表取締役社長  
  平田オリザ 劇作家・演出家  
  星野佳路 株式会社星野リゾート 代表取締役社長
御立尚資 株式会社ボストンコンサルティンググループ 日本代表 ●☆
  柳川範之 東京大学大学院経済学研究科准教授

最初は4つの分科会でしたが、途中から5つめ(なんと・・・この分野を抜いて日本経済を語ることができていたという不思議という意味で、なんと・・・「住宅・都市」)ができて委員は13人に増えていました。

  安昌寿 株式会社日建設計代表取締役副社長
  福田隆之 株式会社野村総合研究所主任研究員  

兵庫県知事は、この6人の委員が「書いてしまう」と言って「憤って」いるのです。

議論・バトルの勝敗は決しました。兵庫県の強みは560万人の県民だったはずですが、その強みを発揮することなく。沖縄で9万人が集まり、そこに招かれた知事や、主催した県議が県民の尊敬を集めているのと大違いでした。

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2010年5月16日(日)の井上力
言わんこっちゃない

原和美のポスター貼りの合間に、あすの『おはよう新社会党です』をつくりました。さらにその合間に沖縄のヒューマンチェーンに行っているOさんはじめ仲間から「雨だけど大成功」のニュース。私も読者の『琉球新報』は号外電子版。

週末、神戸空港民営化問題について、色んな方々のご意見をお聞きしました。国交省成長戦略会議の「とりまとめ素案」をご存じない方ばかりですが、それだけになお、唐突でおかしいというご意見ばかり。関心を持っていないし、神戸市政を見放したから、何が起きても知らない、と言うご意見も。

あすの『おはよう新社会党です』に少し紹介しました。 「言わんこっちゃない。市民生活を顧みないから、こんなことになるんや」「大阪の若い知事にさんざんコケにされて結局、敗北宣言でっか」「売却用地を知事と市長に買うてもらえ」・・・と。

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2010年5月15日(土)の井上力
市長が神戸空港売却を宣言

昨年、5月の第三土曜日、早朝から「神戸で新型インフルエンザ。保育所など休園」とテレビニュースは報じました。あれから1年です。

『神戸新聞』がきのう「矢田立郎市長が語った」として、「神戸空港の民営化」を報じました。神戸商工会議所や兵庫県知事の10日の見解とは少しニュアンスが異なり、「関西空港に買ってもらって一元化」だそうです。

 矢田市長はこうした経緯を踏まえ、「(3空港一体運用実現のために)神戸空港の株式会社化は重要な視点」と民営化に言及。「関空会社に神戸空港を買ってもらって一元管理するのが、利用者の利便性向上に一番いい」と語った。神戸新聞14日より

国交省が成長戦略会議でぶち上げた関空と伊丹の経営統合は、その道筋が定まっていません。伊丹を民営化し、関空と伊丹の持ち株会社をつくり、その会社は関空と伊丹の管理権を売却するとされています。

(1)解決策の前提

これらの課題に関して、これまでは、伊丹空港からの人為的な路線移管によって、関空の経営改善を図るというアプローチがとられてきたが、競合関係にある新幹線の運行強化も相まって結果として関空の需要増の効果は乏しく、関西全体の航空需要の拡大に至らない「同じパイの中での寄せ換え」にすぎないものであった。

このため、新たな抜本的解決策は、同一地域にある関空・伊丹両空港の構造的問題に正面から取り組みつつ、成長戦略として「パイの拡大」を意図するものでなければならない。

(2)関空のバランスシート改善

関空については、早期に政府補給金への依存体質から脱却し、1.3 兆円を超える債務を返済することにより、健全なバランスシートを構築することを目標とし、これを通じて前向きな投資の実行、競争力・収益力の強化を行うべきであると考える。

バランスシート改善にあたっては、関空のキャッシュフローから生み出される事業価値のみならず、伊丹のキャッシュフローから生み出される事業価値や不動産価値も含めてフル活用することも検討する。

更に、伊丹については、空港として活用する場合は、その価値最大化の観点から、戦略3で触れた空港ビル会社や、公益法人が行っている環境対策事業及びその原資としての駐車場事業との上下一体化を目指して検討を行う。

関空・伊丹の事業価値の最大化とキャッシュ化の手法としては、戦略3に基づき「民間と知恵と資金」を活用することが望ましく、両空港の事業運営権を一体で民間にアウトソース(いわゆるコンセッション契約)する手法を基本に、その可能性を追求する。

ただし、コンセッション契約については、税制上の措置など一般的なPPP 制度の創設や、関空会社の株主や債権者を含め、幅広い関係者との調整が必要である等、不確定要素が残る案であるため、実際のスキームとしては、例えば、持株会社の設立といった方式により、両空港の経営統合を先行させつつ、民間の提案を積極的に受け入れる中で、具体的方策を検討していくことが適当である。

なお、新たなスキームに基づく経営の抜本的効率化を図るまでの間は、激変緩和の観点から、時限的に何らかの支援措置が必要となるケースも想定される。

(3)関空・伊丹の一層の活用

(2)の措置により、新たな国民負担に頼らずに関空会社のバランスシートの改善を図ることができ、また、関空・伊丹の空港経営についても、以下のように民間経営の視点によって戦略的な経営が図られることにより、「パイの拡大」が期待される。

まず関空については、多額の負債から解放されることに加えて、非航空収支の一層の拡充等、事業運営の徹底的な効率化を実現することで、施設使用料・着陸料等の戦略的な引き下げやLCC 専用ターミナルの整備等を可能ならしめ、アジア全域を視野に入れた貨物ハブの形成を目指すとともに、LCC 誘致によるインバウンド受入拠点としての地位確立を図る。

また伊丹については、関空との経営統合により、当面は事業運営の徹底的な効率化等を図った上で関空の補完的空港として活用しつつ、将来的なリニア等の周辺状況の変化や跡地の土地利用計画の策定状況等を見通し、廃港・関空への一元化を検討する等、民間の経営判断により、具体的な活用方策を決定する。

(4月28日の国交省・成長戦略会議<航空分野についてのとりまとめ素案>18〜19ページhttp://www.mlit.go.jp/common/000113765.pdfより

『科学的社会主義』誌に原則的な批判を書きましたので、発売されたらアップしたいと思いますが、「民間の判断」が随所に出てきます。日本資本主義が民活と規制緩和に大きくカジを切った80年代、世紀の失敗策が関西空港でした。その上、神戸空港ができ、JRがリニア新幹線を名古屋まで開業した段階で伊丹の経営までおかしくなることは必至です。頼みのアジア国際線は羽田がまずその恩恵を受けると成長戦略会議は宣言しています。民営・関空の救済策を「民間の判断で」というところに、最大の矛盾があります。また「民間の判断」とは市民の判断、民間人の判断という意味ではありません。また3空港の一体運営をうちだした関西経済連合会や関西三空港懇談会でもありません。「市場の判断」に委ねるという意味です。

話しを戻しますが、成長戦略会議は「関西空港株式会社が、民営化された伊丹空港を買う」とは決して言っていません。1兆1千億円の有利子負債と2千億円の出資金を抱えた関西空港株式会社は伊丹を購入する(それも管理権だけ?)資金を持っていません。銀行の融資もあり得ません。また周辺自治体とそのお付き合いでなっただけの「株主」が、国営伊丹空港を(それも管理権だけ?)購入したいから増資を、と呼びかけられてなぜ「はい」とお金を出すでしょうか。持ち株会社でオブラートに包むしかないのです。その際、8,000億円でも買い手はつかないと言われ、4,000億円では関空救済にならず、アラブの王様か中国のファンド頼みと早くも指摘されているのです。それに神戸空港をくっつけて・・・ありえません。だから閣議決定までに神戸市長や兵庫県知事は動くのでしょうが・・・。

売れないのです。買ってもらえないのです。でもことによると市長と知事が言っているのは神戸空港の無償譲渡のことかもしれません。しかし、そもそも市営空港ですが国交省の補助金250億円が入っています。売りたいと言ったとたんに持参金を要求されたりしないでしょうか。

しかも仮に「買ってもらえた」として、一生懸命売ろうとして手つかずの用地はどうなるのでしょう。空港島272ヘクタールは滑走路など空港と、売却目的で埋め立てた用地で構成されています。ある意味、神戸空港はもともと「売りに出していた」のです。3,002億円の売値を付けた用地は、空港(滑走路)があるからその値段がつくと説明されてきました。

問題の核心は、用地を売却して造成費の借金返済に充てるとしてきた神戸市の約束は、どうなるのでしょうか?

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2010年5月13日(木)の井上力
知事が神戸空港を民営化する?

長く更新せず、心配するお声をいただきました。

原和美さんの社民党比例区選挙、毎月1回のペースながら「井上力と語るくらし・まち・県政」、関西3空港問題、沖縄、国交省成長戦略・・・

最悪の情報は月曜日の、神戸空港を民営化して関空、伊丹と経営統合という商工会議所と兵庫県知事の発言。設置主体の神戸市からは何の情報もでません。10日(月)の井戸知事の定例会見での発言は以下のとおりです。

空港の取扱いについては、成長戦略会議の案が示されて、その方向で決まると思います。もし、決まったときに、どのように評価するかということがありますが、地元としては3空港一元管理が望ましいという方向を出しました。国の設置する空港を先行させて、神戸空港の取扱いを後から追っかけさせるということだとすると、それは一つの選択だと思います。しかし、神戸空港はだめと言っているわけでもありません。触れていないということです。触れていないということだとすると、神戸空港としては、例えば、他の空港は外国便は乗り入れ自由ですし、北九州空港だと24時間空港として運用していますが、神戸空港は7時から22時と運用時間を制限しています。便数も1日30便に制限しています。これらは全部関西国際空港との関連です。関西国際空港との関連で規制をしておきながら、全く知らないと言われるなら、関西国際空港との関連の規制を解除するのが先決になるというのが論理の必然ではないかと思います。そのようなことも含めて、神戸空港のあり方を議論するときに、3空港の一元化の将来像を描くとすると、運営会社を株式会社化して次に備えるというのは、一つの選択になりうるのではないかと思います。水越会頭の案を詳細に聞いたわけではありませんが、国も運営会社をまず作って、それでその2つの会社を一つにして、2空港の運営を一元化するということですので、民間会社同士の一元化を念頭におけば、3空港一元化も俎上に上がりうるということではないかと思います

記者の問いに答えての即答ですから、完璧な発言を求めるわけにはいきませんが、三空港懇談会には神戸市長も商工会議所も一緒に出ていたし、そこには橋下知事や国交省航空局もいたのですから、上記のような発言は、あってはならないのです。

それとも設置・管理者であったはずの神戸市は、すでに当事者能力を失って、すべてを兵庫県知事に委ねているのでしょうか。兵庫県知事さえも橋下知事に完全に押さえ込まれて軍門に下ったのでしょうか。それとも知事個人が、3空港、5本の滑走路(管理権)を買い取るカネをお持ちなのでしょうか。

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