2006年6月の井上力
神戸市はフェロシルト搬入におおらかです 

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日付

見出し

6月24日(土) 「補助金いらない」という謀議
6月23日(金) フェロシルト情報隠しが止まるか?
6月18日(日) かさねてシンドラーのリフトについて
6月11日(日) 計13基が灘区に
6月10日(土) シンドラーのリフト
6月9日(金) ふたたびシンドラーについて
6月4日(日) ドアも市場も開けっぱなし
6月2日(金) 闘病観察・13
6月1日(木) イワヒデさん、神戸からジャワ島へ

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2006年6月24日(土)の井上力
「補助金いらない」という謀議

村岡親子の犯した罪は、神戸地検が具体的に法廷で明らかにしてくれます。市議会は、その背景や土壌を明らかにし、土壌を入れかえ、市民が植える木や花が健全に育ち、花を咲かせ、実を結ぶことができるようにすることです。有害な土壌のもとで健全な市民生活は不可能です。

村岡親子事件に対し、ウミがたまってそれが傷口からあふれ出ているのに、これを安物の絆創膏を貼ってごまかそうとする動きが顕著です。痛くても大胆な切開手術が必要です。ウミを出し切らなければなりません。

傷口が開いて、悪いところがはっきり見えているもののうち一つは、贈賄業者の営業を容認した上で、要綱を改正し、別の業者の参入を妨害したことです。

六甲アイランドの中間処理施設。
手前は許可され、向こうは不許可

これは毎日新聞がスクープした地検押収文書がカギを握っています。5月の市長定例会見では「要綱の改正や経緯等の事柄がその中に含まれていた」としながら、その後、「民事訴訟で神戸市敗訴の可能性が指摘された要綱行政についての一般論だった」という見解・答弁に変更しています。

もう一つの傷口は職務権限を行使して、資源リサイクルセンターの運営に営利企業の参入をはかり、贈賄業者が入札で委託契約をとった事件です。

「混ぜればゴミ・分ければ資源」(神戸市)のあとに「集めればワイロ」が加わる?

神戸市が「神戸市議あっせん収賄事件等に係る内部行政監察結果報告」(5月26日、以下「内部調査結果」)でまとめた経過は、以下のとおりです。村岡被告や自民党市議団から働きかけを受けて、環境局が「二分割して委託する」方針を「報告」し、「市長が了承した」かのような表現です。

平成15年2月27日

市会予算特別委員会において環境局長から、総合リサイクルセンターに福祉工場制度を導入すること及び福祉工場は営利を目的とする株式会社は運営主体になれない旨の答弁があった。

8月12日

「総合リサイクルセンター管理運営主体選定委員会」において、リサイクルセンターの管理運営主体として市内19 の福祉団体の中から「社団法人神戸市手をつなぐ育成会」(以下、「育成会」という。)を選定した。同日、局長決裁により育成会が委託先に決定した。

平成16年1月16日

環境局長が市長に対し、業務を手選別業務と管理運営業務に二分割して委託することを報告し了承を得た。
2月10日 育成会から市に対し、手選別作業部門は福祉工場として認定されるよう努力してほしい、同部門は市が直接育成会に委託してほしい旨の書面が提出された。

★をつけた'04年1月16日の「報告」と「了承」の内容が問題です。この会議の議事録は、公文書公開請求したところ、存在しているが「国の事務に支障を来たす」ことを理由に、非公開とされました。

環境局長が、この会議で二分割を含む案を報告したのは事実です。しかし会議では、6とおりもの案をもとに検討がおこなわれました。その6案(PDFで10ページのうち第8ページ)は神戸市のホームページにもアップされています。

方法 問題点 村岡 育成 組合
福祉工場 転載を省略
神戸市のPDFファイルをご覧ください
×
× ×
×
民間委託 × ×
× × ×
× × ×

「○」「△」「×」を、6つの案について環境局がつけています。×は、それぞれ「国の信頼を失う」「市会の信頼を失う」「育成会の信頼を失う」「労働組合の信頼を失う」でしょう。△は言わば「相手のあることだが、可能性なしではない」でしょう。なお、「市会」とすること自体が大問題であり、ここに「村岡」と書かないところにも、問題はあります。

中田作成さんは公文書公開請求で'03年9月12日に保健福祉局障害相談課が、厚生労働省に出向いた出張記録を入手しました。福祉工場方式は「(厚生労働省では)前任者からきちんと引き継ぎが行われているようであり、社団法人での運営を認めることを前提に、何か問題があればクリアしていこうという姿勢であると見受けられた」としています。

「3」は、現行と似ていますが、「福祉工場」を含んでいます。だから「国は△」なのです。福祉工場の可能性は、なお1月16日の会議が始まった段階では、あったのです。「国の信頼を失う」ことからスタートしていないのです。「4」が採用されるのですが、なぜ「福祉工場はダメ」「国庫補助はいらない」というように議論が傾斜していったのか、だれがそれをリードしたのかは、この資料だけでは不明です。しかし、この資料を公表した結果、明らかになったのは「当分、二度と福祉工場にはできない経過が、国と神戸市の間にできてしまっている」つまり国の信頼はすでに失ったということです。

すでに「国の信頼を失」ってしまっているのです。だから議事録を非公開としたのは、国への配慮ではなく、「市長への配慮」だったとしか考えられません。

出回っている文書が、議事録そのものである証明書を、神戸市がだしていた!のです。

きのうの本会議でも、私の質問に従来の答弁を市長は繰り返し、「福祉工場を取り止め、国の信頼を失った」のは市長じゃない、そして村岡親子じゃない、とでも言わんばかりでした。

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2006年6月23日(金)の井上力
フェロシルト情報隠しが止まるか?

エレベータ・ウォッチャーではなかったのにネット上ではとくに、はまってしまいました。今週は、火曜日の福祉環境常任委員会が朝10時から午後8時まで。そして、きょうは本会議でした。

4月22日に書いたフェロシルト問題で進展がありました。フェロシルトは次のようなものです。(中田作成さんが情報公開請求して出された資料。撮影は神戸市。K社の最終処分場)

のべ3か所、西区に搬入されているフェロシルトについて、要綱と基準の改正を「秋に」おこなうことを、きょうの本会議で梶本助役は答弁しました。3年前の7月30日の環境保全審議会答申で示された要綱改正も、基準の改正も、環境省からの「指示が多いから」という理由(?)で、手つかずの状態でした。

20日の常任委員会では、4月16日に中田作成さんから提出された陳情を審査。要綱基準の改正は、「しなかった」ことの言い訳しか、残念ながら引き出せませんでした。不作為か怠慢か、あるいは何か?

「他府県からの産廃おことわり」の自治体が多いなか、なんと神戸の産廃行政はおおらかなことでしょう。造っても造っても、産廃はなくなりません。六甲山の谷という谷が産廃処分場となって、やがてボタ山のようになってしまう心配を、本気でせざるを得ません。

以下は、答申のなかで関連する部分の一部です。

 ・・・最終処分場等の施設については同様の施設に対する苦情等の発生状況,搬入出車両が集中する道路,住民自治組織等の状況,他都市における事例等を勘案して,周知対象範囲を設定することを指導するべきである。さらに,チラシの配布や掲示等によって,周知対象範囲の住民に十分な周知を図ったうえで,説明会を開催するよう,あわせて指導するべきである
 また,法に基づき住民からの意見書が提出された場合,これに対する事業者の見解書の作成と市への提出,事業者からの専門的知識を有する者への事業計画等の説明機会の設定,市による設置許可(又は不許可)の公告,事業者の見解書及び許可証(許可条件)の閲覧についてもルール化するべきである。(本文12ページ、PDF14ページ)

 今後,本要綱に基づく各基準を最近の法改正事項等を踏まえて見直すとともに,維持管理基準の中に事業者が実施した点検・検査結果の市への自主的な報告についても盛り込み,報告内容(報告がないものについてはその旨)について,市役所で閲覧ができるようにするべきである。(本文12ページ、PDF14ページ)

 情報の発信に関しては,市からの発信はもとより,今後は,事業者も積極的に情報を開示し,市民の信頼の得られる産業廃棄物の処理をめざしていくことが重要である。具体的には,排出事業者は,発生抑制,減量・資源化,適正処理等の取組内容について,また,処理事業者(特に処理施設設置者)は,廃棄物の受け入れ状況,処理・資源化の状況,講じている環境保全対策,自主測定結果等について,それぞれホームページや環境報告書等で公表していくことなどが考えられる。(本文13ページ、PDF15ページ)

 ・・・また,安定型処分場を有する最終処分事業者には,重点的に事前搬入チェック及び展開検査を指導していくべきである。さらに,必要に応じ,市外から搬入される産業廃棄物の性状等を事前に確認するなど,市外の排出事業者に対する指導についても検討するべきである。(本文16ページ、PDF18ページ)

昨年10月17日からK最終処分場に搬入が始まり、神戸市環境局は11月22日に「新聞情報を元に調査し」立ち入り調査。その後、「周辺住民の反対運動がある」(石原産業の記者会見)ことを理由に12月9日にストップしたものの、別の同じく西区の2か所の処分場が、中間処理と最終処分を続けています。

環境基準の58倍という六価クロムが検出され大問題となったフェロシルトは、昨年まで商標登録された「土壌埋め戻し材」だったこともあり、撤去命令がだされ、石原産業が刑事告発されたあと、106万トンが東海3県と京都府で、撤去を待っている状態です。

瀬戸市では「13万トンを現地処理」と石原産業が発表し、大騒ぎになったのは5月21日。四日市市の石原産業の敷地内には40万トンが野積みされています。京都府加茂町から撤去が始まったのは6月12日、この一部は神戸に運ばれます。

神戸には、現在7万4千トンが搬入されています。10トンダンプで少なくとも7,400台、すべて帰りはカラで、日曜祝日も走って、毎日20台です。周辺住民は、近所に産廃処理場があるというだけでも、大きな迷惑ですが、ありもしない「反対運動」まででっち上げられていたのです。

きょうの本会議では、汚職問題の質問も。こちらは明日にでも。

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2006年6月18日(日)の井上力
かさねてシンドラーのリフトについて

「情報を共有したい」と国土交通大臣が言ったうえで、シンドラー社製エレベータの所在を隠したため、いっそう不安が広がっています。その公的機関に占めるシェアの多さゆえ、参入の経緯に議論が及ぶのを避けているとしか思えません。

神戸の場合、全118基のシンドラー社製のうち、神戸市関連が41.5%であることを以前書きました。その後、神戸市に「民間」のうち他の公的機関関連分を公表してほしいと申し入れました。いわゆる公団住宅(UR賃貸)に、少なくとも26基あることがわかったからです。民間分譲マンションではマンション価格が下落することなどを恐れて、公表を避けてほしいという管理組合もあります。

しかし、下のグラフのように市関連と旧公団だけで三分の二に達するのです。参入障壁撤廃のかわりに、何らかの手段でシンドラー社製を契約してきた行政や旧公団の責任は重大です。

行政はシンドラー社製エレベータのある
公的施設をすべて明らかにするべきです(一部24日追加)

神戸市都市計画総局が「都市再生機構住宅のシンドラー社製エレベータは計35基」と公表(19日)して、書きかえました(6月24日アップ)

6月17日の独自調査結果を加えたグラフ(18日アップ) 市が6月9日に公表したデータ

閉じこめ情報など新たに入るニュースは、ことごとく公的機関です。しかも「安かろう・悪かろう」ばかりでなく、少なくとも神戸では、かつて高額で契約され、現在では大手国産メーカーなどとともに10社程度の同額入札です。(6月4日の井上力

6月15日に新社会党兵庫県本部が西日本支社に次のような申し入れをおこないました。

新社会党兵庫県本部が独立行政法人・
都市再生機構西日本支社に出した要請
(6月15日 要請項目のみ・要請文省略)

1.

11過去の事故情報、あるいは「危ない思いをした」というすべての情報を集約し、その解決経過も含めて公開していただきたい。

2. 電子回路や電子基板の不具合なども含めて、シンドラー社のエレベーターについては慎重かつ速やかに安全総点検をおこない、その結果を公表していただきたい。

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2006年6月11日(日)の井上力
計13基が灘区に

旧六甲団地(グリーンヒルズ六甲)の12基すべてのエレベータがシンドラー社製です。きのうときょう、訪ねて恐ろしい事実が次々と判明しました。灘区には都市再生機構の住宅が他に5棟(うち1棟はエレベータなし)ありますが、それらは他社製で、グリーンヒルズ六甲だけが、工期を何回かに分けた建築物なのに、全てシンドラーでした。市内「民間」69基のうち、12基が灘区六甲台町にあります。

「8階の人が目的の8階を通り越して一度最上階まで行って戻ったという恐ろしい目に遭った。緊急通報しても来なかった」とおっしゃるのは9階に住むYさん。これは入居直後の出来事だそうです。「以前は毎月点検があったのに最近は間隔が空いている」とも。

「ドアに身体が挟まれ、開かなかった」は、2階のSさん。

昨日の午前中まで(?)貼り出されていた「ケン・スミス」名の開き直りの「声明文」を、管理事務所で入手しようとしましたが、その存在自体が不明です。しかし複数の方が「(都市再生機構の点検を知らせる掲示物の他に)シンドラーの社長名の文書が貼り出されていた」とおっしゃっています。

グリーンヒルズ六甲では、月末までに(神戸市からの指示も「月末までに報告を」)エレベーターの管理会社でもあるシンドラー社が点検をするそうです。

法令の定めで年に一度、特定行政庁である神戸市に行われる報告には、チェックリストが付いています。多岐にわたる点検項目ではありますが、電子基板のチェックはなさそうです。また例えば、ドアに1枚の紙を挟んでカゴが動き出すのか、止まるのか。腕と同じ程度のものを挟んだ場合はどうなのか。いつも使うエレベータは、だれかの背中が内側のドアが閉まる際に少しでも触れるとドアが開き、カゴは絶対に動きません。閉じこめ事故は、その意味では「安全のため」カゴを止めるのですが、今や世界中から伝わるシンドラー社の死亡事故についての情報は、これとは異なっているようです。

シンドラーのエレベータは、異なる設計思想で電子基板・電子回路がつくられているのでしょうか。危険を察知したとき、止まるのではなくて、たとえば火災のとき「最上階まで速やかに上げる」設計が考えられますが、それなら最上階で止めてドアを開け、そこで全機能をストップするものでなければならないと思います。

フェールセーフについてウィキペディアが書いています。

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2006年6月10日(土)の井上力
シンドラーのリフト

アップしてから「シンドラーのリフト」って、きっと私が初めてではないだろうとgoogleで検索したところ、やっぱりたくさんありました。私のお気に入りブログ<脳外科医「病室の窓から見えるもの」>にも。写真入りのブログなども。たぶんテレビなどでもしきりに使われているのだと思います。

親戚かなんか知りませんが、シンドラー社のコメントが不安と怒りをかっています。「リストはだせない」東京都に対して一度このような発言をしたようです。

親戚かなんか知りませんが、シンドラーのリストは人の命を救ったリストであり、人々を感動させた映画だったのではないでしょうか。今や「シンドラーのリフト」は、日本の若いいのちを奪ってなお、開き直りです。日米構造協議やその後の構造改革で、なぜ急速に進出し、公共施設に急速に参入できたのか、どのようにして競争入札をくぐり抜けたのか、謎です。

閉じこめ事故などの記録に残っており、神戸新聞が報じた市営住宅をきのう訪ねました。Tさん(仮称)から玄関でお話しをお聞きしました。

「朝、ゴミを出すためにエレベーターに乗ったときでした。緊急通報の注意書きを目をこらして読み、ボタンを押したら管理会社が出て、来てくれました。小石が挟まっていたらしいということでした。記者にちょうど遇ってお話ししたように、怖い経験はもうたくさんです。うちは( )階なので荷物を持っているときは、どうしても使います」

他の住民は「そんな出来事があったとは知らなかった」とおっしゃる方もいました。

灘区では都市機構(思い出せる範囲で日本住宅公団・都市基盤整備公団など、名称が変わり、公共性を次々脱ぎ捨てている)の住宅も、シンドラーのエレベータです。

ただちに総点検、とくに制御に関連するコンピュータ基板を点検し、安全宣言を出してもらわなくては、不安がつきません。

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2006年6月9日(金)の井上力
ふたたびシンドラーについて

神戸市がシンドラー社のエレベータ問題について、「対応しました」という文書を発しました。シンドラー社製エレベータを使用する民間施設には、安全管理の徹底と「過去の不具合」について報告を求め、市関連施設については「すべてのエレベータ」について、安全管理の徹底と「過去の不具合事象の確認」を指示しました。

神戸市都市計画総局によれば、市内のエレベータの状況は、次のとおりだそうです。障害発生事例は3例報告されたそうです。すでに神戸新聞が8日に報じたとおり、灘区の市営八幡住宅(たしか設置は'01年頃)などでドアが開かず、人が閉じこめられた事件などです。

民間施設のエレベータ 10,776基

うちシンドラー社製のもの

69基
市関連施設のエレベータ 1,109基

うちシンドラー社製のもの

49基

(私が)間違えていたためグラフをつくりなおしました。6月10日

なぜこのようにシンドラー社製のエレベータは、公共建築物や関連施設で「強い」(丈夫・頑丈という意味ではありません)のか、ということについて、ある方が日米構造協議やその後一連の参入障壁撤廃問題の結果だと指摘していました。全国的に事故例が報じられるのも公共建築物が目立ちます。

新自由主義は多国籍資本に便宜をはかる資本主義です。「競争のスタートラインを公平にするために」と称して、大企業に便宜をはかります。ときにはワイロで、ときには公権力の発動によって、またときには激しく批判している随契で。もちろん私は日本のメーカーを擁護するものでもありません。4日にも書いたように、今やシンドラー社も仲間に入れてもらっているようです。

シンドラー社が、事故についていろいろ発言をしているようです。メーカーに管理を委ねて管理費が高止まりしていることから、マンション管理組合などは、管理会社を選択して別のメーカー系列の管理会社に乗り換えるケースも目立ちます。行政の指定管理者制度も。シンドラー社からすれば、すでに参入を果たした市場では「競争が事故の元」とでも言わんばかりです。

重複しますが、おはよう川柳木曜コラムに次のように書きました。

コラムの方の数字は、きょう発表されたデータでは訂正の必要が生じました。全部で49基で、市営住宅35基、学校6基、交通局などのビル4基、駐車場2基、福祉施設1基、観光関連施設1基だそうです。

6月5日のおはよう川柳

エレベータドアも市場も開けっ放し

 こんな事故、聞いたことがありません。エレベータがドアを開けたまま動いて高校生が死亡した痛ましい事故。こんな怖い話はありません。エレベーターやエスカレーターの世界企業シンドラー社が日本企業を乗っ取ったのは95年。以来猛烈に市場参入。折から高層化、高速化。国土交通省も各自治体も総点検を。

6月8日の木曜コラム

 エレベータがどの会社の製造か、関心を持っている人は少ないと思います。建築基準法で点検や行政への報告も義務づけられており、安全が大前提です。
 東京港区で土曜日に起きた死亡事故を発端に、公共施設でシンドラー社製のエレベータに次々と不具合が見つかっています。
 各社が競って高速化し、当然コンピュータ制御です。乗り心地も大切で、止まる前に逆に動くような感じがしたと昔話をすると若者に笑われます。時速60キロが世界最速で、ノンストップなら50階建てでも10秒程だそうです。
 監督官庁は神戸市建築安全課で、市営住宅33棟、学校など10棟がシンドラー社製。エレベータは市内に1万基あるそうです。
 2枚のドアの一方でも開いたまま動くことはない、なのに動いたのです。参入障壁というドアの開け方に無理があり、もう一枚のドア、法令による点検も機能しませんでした。

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2006年6月4日(日)の井上力
ドアも市場も開けっぱなし

エレベータがドアを開けたまま動き出し、高校生のいのちを奪いました。何ということでしょう。東京で起きた痛ましい事故です。

エレベータの点検は公務ではありませんが、建築基準法施行令に定められており、自治体の責任も免れません。文字どおり「あってはならない」事故です。このケースは、港区の特別市営住宅だったようでもあり、なおさらです。

シンドラーエレベータという多国籍企業の沿革を調べました。'95年に日本の企業を買収して、激しく市場参入をなし遂げてきた会社だそうです。毎日新聞がホームページ上の会社情報を紹介しています。「安全」より「低価格」が強調されています。この企業は神戸でも指名競争入札に参加しています。

今年4月18日の長田駅東住宅2号棟のエレベーター設備工事では8社同額で抽選負け、昨年10月28日の多聞東中学校昇降機設備工事では10社同額で抽選負けしています。

同額で抽選というグループに入らなかった入札結果も、この会社(「この業界」という方が正確か?)は非常に分かりやすい札を入れています。「わかりやすい」と言っても「理解できる」という意味ではありません。'04年3月以前の入札結果はネット上に公開されていません。新自由主義は常に新たな秩序をつくりつづけています。

以下は「神戸市入札情報」から。

入・開札日

工事名と
シンドラー社の順位

備考

'04年4月9日 (仮称)玉津南住宅2号棟エレベーター設備工事 9者のうち
9位
'04年6月1日 三宮駅北広場エレベーター設置工事 9者のうち
9位
'04年7月2日 神戸市高速鉄道長田(長田神社前)駅西口エレベーター増設工事(昇降機設備) 8者のうち
8位
'04年9月24日 六甲有馬ロープウェー六甲山頂駅昇降機設置工事 辞退
'04年10月1日 港島中学校昇降機設備工事 10者のうち
10位
ここまでは最下位ばかり
'04年10月26日 塚の前南住宅エレベーター設備工事 10者のうち
4位
'05年1月28日 高羽小学校校舎改築昇降機設備工事 10者のうち
3位
'05年2月10日 阪急六甲歩道橋撤去工事 辞退 10者のうち7者が辞退。結果は不調打ち切り
'05年3月18日 (仮称)番ヶ平住宅エレベーター設備工事 10者のうち
7位
3者が失格
'05年10月28日 多聞東中学校昇降機設備工事 13者のうち
1位
14者が指名され
上位10者同額
'05年11月1日 (仮称)新長田駅南地区若松4第3工区南棟再開発ビル昇降機設備工事 12者のうち
9位
上位5者同額
'06年4月18日 (仮称)長田駅東住宅2号棟エレベーター設備工事 12者のうち
1位
14者が指名され
上位8者同額
2者辞退

ドアの話題が尽きません。ライブドアもエレベータのドアも、そして六本木ヒルズの回転ドアも、人の命を奪いました。乗っ取りや参入規制緩和が多くのいのちを奪い、タイガースファンの神経を逆なでしています。多国籍資本が奪ってしまった若い命に合掌。

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2006年6月2日(金)の井上力
闘病観察・13

介護保険新法で、そして国や自治体の号令の下、高齢者の要介護度がカイゼンされています。工場で生産性を上げるため「ムリムダムラ」をなくすカイゼンでトヨタは大躍進しました。「ムリをしてでも、ムダと決めつけた介護を減らすため、ムラのある身体の動きを調査してもらうのでなく、最善の状態で調査を受ける」と、要介護度はカイゼンされます。要介護度は変わっても、身体の状況に大きな変化はありません。

「闘病観察」は、昨年の3月、私の母が倒れて1年を迎えて中止していました。状態は改善されています。しかし、調理ができない、食器洗いは部分的に可能、洗濯が一部不可能、外出がほぼ不可能、掃除がきわめて困難です。ついでに言えば新聞は読めるけど、テレビは「わた鬼」などを除いて面白くないそうです。Tさんら、ご近所の方がよく訪ねてくださいます。訪問リハビリの先生や作業療法士から出された「宿題」は、熱心にしています。特別障害2級です。

これまでは要介護度は2で、毎週月曜日にデイケア、隔週土曜日にデイケア、そして訪問リハビリを週2回、週4回の昼ご飯は訪問介護でした。

今回の調査で要介護度は1とカイゼンされました。デイケアをやめ、訪問リハビリをやめれば1割負担の範囲内でおさまるのですが、徐々にでも右手・右脚の動きが良くなり始めており、リハビリを続けるべきだと本人も周囲も考えています。従来と同じ「サービス」を受ければ負担は次のようになるそうです。

今年7月以降、毎月母が支払うことになる負担額

従来と同じ「サービス」を受けた場合(金額)

207,500

区分支給限度基準額(金額)

165,800

区分支給限度を超える単位数(金額)

41,700

c=a-b
利用者負担

60,637

B+C

利用者負担(保険対象) 

17,269

利用者負担(全額負担分)

43,368

デイケアでの食費(昨年10月から自己負担)

5,600

合計利用者負担額

66,237

以上のデータはケアマネージャーのろっこう医療生協が算出しました

介護保険料(6月半ばに通知が来る)

健康保険料(6月半ばに通知が来る)

介護保険法は、「病を治す」という医療の分野に攻め入り、その一部かときには大半を介護市場として囲い込みました。医療は、「治らないから」として高齢化による「病」のすべてを介護市場に委ねました。病気には予防が大切だと今頃気づいて、「介護予防」を発明しました。介護の必要な人に介護予防を説教してどうするのでしょう。

母の場合は、医療保険の最高負担割合「3割」をすでに超える負担を求められそうです。要介護1だと、ベッドは購入しなければなりません。車イスについても特別の申請が必要です。制度説明は神戸市のホームページからどうぞ。

デイケアを週1回に減らし、昼ご飯は訪問介護を減らして配食サービスに代えようとしたら、デイケアに行っている人は不可能なのだそうです。

他の方々からも認定調査について、また保険料について、たくさんご意見をいただいています。母は不服審査請求をしようと思っています。集団請求できないのが残念です。

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2006年6月1日(木)の井上力
イワヒデさん、神戸からジャワ島へ

毎日新聞社の岩崎日出雄(イワヒデさん)記者が、神戸市役所へ来られたのは、先週の金曜日でした。特別委員会があり、それがお昼の休憩となり、私は午後の灘区での会合のため本庁を離れた直後に来てくださったそうです。結局、久しぶりにお会いすることはできませんでした。

岩崎さんは、阪神大震災の朝、神戸支局の記者としてカメラを持って被災地から大量の記事を送りました。阪神大石駅周辺の歪んだレールの写真は、その一つでした。鉄道陸橋が垂直に道路へ落下した西灘〜大石間など、凄まじい光景でした。阪神電車の高架は、御影周辺の戦前の工事部分は被害が少なく、戦後高架化された灘区の被害は甚大でした。

その後、東京本社外信部などを経てジャカルタ支局で遭遇したのがアチェの大津波(インド洋大津波)でした。ジャカルタから「久しぶりに新年度から大阪勤務、今度は堺です」とメールが到着していました。

きのうの夕刊に、何とジャワ島中部地震について「仮設住宅を建てない方針」が出されたと、記事を書いているのは岩崎さんではありませんか。地震は先週の土曜日の朝でしたから、やや平穏な生活は、あの私がすっぽかした金曜日だけだったのでした。

神戸・アチェ・ジャワ島と、被災した人々の姿をかれはずっと追いかけています。またお話しを聞きたくなりました。