県政まる見えに 2012年3月12日更新
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井上力の“いまどきの県政”
2012年3月12日
被災地の声に耳を

3月6日(火)に公表された兵庫県知事の「東日本大震災から1年を経過して−−被災地へのメッセージ」を読んでカリカリ。「切れ目なく、スピード感を持って、きめ細かな」支援、その中身は区画整理と再開発、心のケア、県内避難者への支援。元気と自立を、と軽く。

関西電力の要求に応え、2度にわたって節電を県民に呼びかけた、その熱意と出費の1割ほどの「心」さえ、このメッセージに見いだすことはできません。

福島から「自主避難」のある女性は、神戸での避難生活を辛く感じることが多くなったとおしゃっています。ある男性は、与党の国会議員が「被災者に、兵庫県内で復興住宅を建てる」と約束していることに強い期待をしています。ある男性は「みちのく談話室」での交流をいっそう深めるために、また参加していない方への呼びかけをするために、名簿づくりを提案し、やっと、集まったときに名札をつけることだけ実現したそうです。

一日が10年に値するような大災害であり、人類史上初めての原発震災であり、兵庫県民も含めすべてが当事者です。被災者と支援者、その他の人などと分けて考えることはできません。

医療機関と介護施設の復旧は今どこまで、とりわけその専門職の確保はどうなっているのでしょう。

「がれきがあるから戻れない」「がれきが撤去できても戻れない」状態を、どう打開していこうとしているのでしょう。

福島では「避難の義務」だけでなく「避難の権利」地域をつくること、家族が離れて過ごさなければならないとき、その家賃や交通費はもちろん(賠償で)ですが、だれでも、週4日労働などの軽減勤務が可能となる補助制度も必要です。避難者登録制度ではなく、3週間程度の長期休暇と「転地療養」制度も必要です。需要と雇用が復旧・復興とともに拡大する施策が必要ではないでしょうか。

「阪神の経験」と言うなら、住まいと仕事を同時に失った中高年の神戸市民が、いきなり決して遠くはありませんが郊外の仮設住宅に住むことになり、以来、仕事をなくしたまま、ついに仕事もコミュニティも失ったまま、という「被災」が、目立ちました。「創造的復興」は、これに応えませんでした。

「当事者としての兵庫県」や関西広域連合が、まず取り組むべきは、受け入れ災害廃棄物の基準を決めることなどでなく、関西電力のすべてかその一部の無償譲渡=没収により、配電・送電の分野から日本のエネルギー政策を一新していくことです。「まず」とは言うものの、全県民参加の議論が必要ですし、訴訟も立法も必要です。


井上力の“いまどきの県政”
2011年3月29日
原発震災/福島から子どもと妊婦を受け入れよう

2011年統一地方選挙(第17回統一地方選挙)兵庫県議会議員選挙、神戸市灘区選挙区でのうったえです。

1めんに、「いのち」を守るうったえと、ちびくろ保育園・野花会理事長、神戸子ども総合専門学院長、田中英雄さんの呼びかけなど。これはYouTubeからどうぞ。

http://www.youtube.com/user/inouetsutomujugon

余談ですがjugonでdugongではありません。

2めんは政策集です。

今回の原発震災については

●原発関連情報を全面即時公開

●稼働中の原発は停止し、総点検

●被災地の妊婦、乳児たちを関西など安全な地へ受け入れ

そして原発防災計画の見直しも急務です

原発推進計画はストップ

電力総需要の30%は自然エネルギー利用で(揚水発電所の増設など含む)

国、自治体の防災計画は今回原発事故以上の想定で、徹底的に見直し

をうったえます。


井上力の“いまどきの県政”
2011年3月20日
希望と安心の県政−井上力とともに/動画へのリンク

雇用問題 井上力の動画3
希望と安心の県政
(雇用問題)
   
空港問題および財政問題 井上力の動画2
希望と安心の県政
(空港問題)
および財政再建
   
医療と介護 井上力の動画1
希望と安心の県政
(医療と介護はだれでも・どこでも・いつでも)

YouTubeより


井上力の“いまどきの県政”
2011年2月13日
希望と安心の県政−井上力とともに

兵庫県政に次のような提案をします。

新行革に反対です

×「新行革プラン」を知らない人が半数を占めるのに、「第二次新行革プラン」

×'07年末に新行革プラン提案のとき、知事は「4回目の見直しはしないように」と言いましたが、その後も変更や見直しを重ね、名前は「第二次新行革プラン」

×「第二次」では、乳幼児医療費助成の対象を5万5千人減らし、重度障がい者の医療費助成も対象者数を減らす計画がうちだされました。また特別養護老人ホームなど社会福祉施設に、職員の勤続年数に応じて加算される助成金(年間1人あたり10万円)を削減

×税制改「正」のたびに地方の税・財源は細っています

×神戸市をはじめ市町は、第二次新行革プランに困惑しています(「県市協調とは県が市に押しつけることか」)

●ムダを削れば財政再建は可能です

・塩漬け土地は731億円(うち10年以上保有が66%)、全都道府県および全政令指定都市で最高

・空港・高速道路・ダム・巨大企業への補助金から県民みどり税の使い方にいたるまで

 

医療と介護

だれでも どこでも いつでも

×「後期高齢者医療制度の廃止」はみんなの声でした。民主党政権に代わって「新制度」は「国民健康保険の市町村合併(県が国民健康保険を運営)」。全国知事会も総反発×公立病院が独立行政法人に

×「新制度」も75歳以上を別勘定、全世代の負担増、国庫負担減・市町村負担増×介護保険の保険料負担が激増

●「新制度」に反対。差別医療に反対。だれでも、どこでも、いつでも、最高水準の医療を

●国庫負担を増やし、保険料と利用料や窓口負担の引き下げを

 

「小規模多機能」を増やす

写真は国道大石川にろっこう医療生協が開設した「小規模多機能とががわ」

×兵庫県内で特別養護老人ホームに申し込んで、まだ入れない待機者は2万5千人(2010年1月)

×介護保険と健康保険の給付を受ける「寝たきり専用賃貸住宅」まで現れています(中部地方)

●「小規模多機能」をもっとたくさん

? 小規模多機能 ?

要介護の高齢者を対象にした地域密着の居宅介護施設。

「小規模多機能」では、登録した25人が自宅に住み、「訪問介護を受ける(ヘルパーに来てもらう)」「通って半日過ごす(デイサービス)」「泊まる日もある」という3つの機能を、専門員や家族(主たる介護者)と相談して組み合わせ、ケアプラン(介護計画)がつくられます。

あき
県政最大の課題

市民の働く場の確保

×失業問題は深刻です。有効求人倍率は長く0.5(求職2人に求人1人)。サラリーマンの年収が60万円も減り、商店・飲食店の閉店がつづきます。大学生・高校生の就職内定率は史上最悪。地方経済の疲弊は小泉改革より深刻です。

×給付金つき職業訓練の政府新年度予算は775億円(米軍思いやり予算は1,848億円も出せるのに)

×兵庫県が全国一の基金を確保した「重点分野雇用創造事業」の成果もさっぱりです

●「緊急雇用」「重点分野」「ふるさと雇用再生」も、月10万円の給付金つき職業訓練も、対象者を増やし、最後の一人まで雇用に結びつくように

●兵庫県労働部の復活(政府では労働省の復活)

●ハローワークを市と県に移管。広域連合への移管に反対

●県・市が事業をおこして直接雇用を

たとえば神戸での中学校給食の実施は雇用拡大につながります。地元でとれた農産物や魚介類の消費拡大にも直結します

●公契約条例を制定

? 公契約条例 ?

自治体が発注する工事で小規模のものは、激しいダンピング競争で人件費が削られ、大規模の工事は下請・孫請け段階で人件費が減らされます。千葉県野田市で全国初の条例が10年度から施行されています。

公契約法は国際常識です。国会はILO(国際労働機関)94号条約を批准していません。県条例が必要です。

 

議員報酬を削減

×政令都市解体論(大阪)や市長による市会解散請求(名古屋)など、議会不信から議会不要論まで渦巻きます

×議員厚遇への批判が高まって、市町村の議員年金は廃止されます。県議会の議員年金は残ります

×議会は「是々非々」の立場を取るべきなのに、現状は「是々非是」です

×委員会の傍聴は許可制、常任委員会の会議録なし

15道府県が議会基本条例を制定し、議会の改革(権限・能力向上、市民への報告)を始めています

●議会の役割は、決算審査や委員会の審査で「事業を仕分け」、ムダを削り予算を捻出することです

●理想は「労働者並みの賃金で働く代議員」。県議会の費用弁償は、自宅からの距離に応じて実費に

●自分の年金を心配するのが議会の仕事ではありません。国民が一番不安に感じているのが年金です。だれもが老後の不安を減らせるよう、地方議会は年金制度の再建・改革に総力を

●政務調査費は会派分・個人分の区分をなくし、減額

●行政は分かりやすい決算書を、議会は委員会の情報公開など「県政まる見えに」

あき

消費税とTPPは成長戦略どころか

「衰退戦略」

×民主党政権の1年半、「全額税方式の最低保障年金」は取りやめに?

×消費税増税(結論を出すの)は統一地方選挙後の6月

×「コンクリートから人へ」どころか、基地は元の辺野古へ。子ども手当は実質増税で相殺され、保育所待機児童は減りません。県内の公共交通は補助金が減らされてガタガタ。「地方主権」は名ばかり、赤字県債は増える一方

×伊丹空港と関西空港の統合・新会社発足で、兵庫県と神戸市は「空港島の地主」となり、伊丹空港は取り上げられます。兵庫県と神戸市が主張してきた「関西3空港一体運用」案は、見直しを迫られます

×売れるものは武器までも。巨大企業を保護するTPP(環太平洋パートナーシップ協定)参加と法人税減税で農業と地方経済・県財政は衰退必至です

●TPP(環太平洋パートナーシップ協定) 参加に反対

消費税増税に反対

●郵政改革法案成立で郵便局をまもり、ゆうメイトの正規化

労働者派遣法改正、労働局・労基署は不安定雇用の是正指導強化を

●少人数学級の実現

●保育所待機児童をなくす

●私学助成(私立幼稚園を含む)の拡充

●定時制高校廃止反対

●空港・高速道路・新幹線から地域の足を守る交通政策へ


井上力の“いまどきの県政”
2010年8月17日
消費税引き上げ求める知事・県政

深刻きわまる昨年度決算(見込み)が公表されました。その定例会見(8月13日)で井戸知事は「その場合には、消費税や地方消費税の取扱いなど避けて通れないと思います」と。交付税措置される可能性など、さらさらないことを承知しながら・・・。

赤字県債の大量発行です。財政規律の破壊というより、財政モラルを国家ぐるみで喪失した結果です。グラフをつくりました。

県債残高3兆5千億円。赤字県債の残高も1兆を超えて2年目です。将来負担比率366%、県債管理基金積立不足率65%。

これから自動車や家電メーカーへの公的援助が終わり、つまり駆け込み需要が終わる上、今後は関西経済の落ち込みに加えて円高大不況が深刻になります。退職金課税の総額が減り、住宅ローン破たんや若者の失業、法人税の繰り越し控除(「繰り越し控除という制度があって前年以前の赤字を当該年度の所得が生じても差し引いて税計算ができる制度があります。この繰り越し控除の制度を活用して、例えば、銀行ではほとんど法人税などは払われていない状況が続いています」・・・知事の13日の記者会見)など、いい材料はありません。

ちかぢか「介護保険10年の課題」「社会政策の変遷と県政・県議会の役割」「わたしの住まい・わたしのまち」「関西3空港、そして神戸空港」「これでは困る兵庫県」という5つのテーマで井上力後援会の学習会をおこないます。


井上力の“いまどきの県政”
2008年8月12日
都賀川事故

記者:

 河川の緊急総点検についてお話しがありましたが、68カ所で看板がなかったので、これから看板を設置していくというお話でした。それだけ、これまで注意喚起が十分でなかったということが明らかになったということだと思いますが、どのように受け止めていらっしゃいますか。

知事:

 注意喚起は従来からしてきていました。また、もともと表六甲河川の危険性について神戸の市民は相当理解されて、共通認識になっていたはずです。私が都賀川を守ろう会の人達と数年前に都賀川を一緒に歩いたときも、六甲山に黒い雲が出てくれば、夕立の危険があるので川から離れるように指導していますというお話をお聞きしています。市民の理解も協力もいただきながら進めていかざるを得ないと思っています。今回の大きな事件が起きて、改めて調査・点検をしてみたところ、進入路があるのに注意喚起看板が整備されていないところが68カ所ありましたので、急遽整備を進めていこうということにしました。こうした点では、問題点が明らかになったということでしょうが、河川の管理として不十分だったということが明らかになったかというと、これはいろいろな議論や見方があるのではないかと思います。私は、注意喚起看板が設置されていないという事実があったことは、認めさせていただきたいと思います

きのうの知事の定例会見です。先週おこなわれた緊急総点検の結果と、注意喚起の看板の案を兵庫県は公表しました。

きょう「灘区安全会議」が予定されています。


井上力の“いまどきの県政”
2008年8月4日
都賀川事故から1週間

7月28日に起きた都賀川事故について、河川管理者である兵庫県は警報システムを設置するなどの「安全確保策」を発表しました。「表六甲河川」には「表六甲24水系・51河川」があり、親水施設はそのうち、13水系・15河川。灘区内では、石屋川(東部建設事務所北)、高羽川(成徳小学校東)、観音寺川(阪神西灘駅の東側)、そして都賀川(阪急から河口まで)です。

1.急激な増水に対応するための警報システムの整備
2.親水施設の緊急総点検と改善
3.河川利用者への情報提供及び防災意識の啓発

緊急総点検は、きょうから、とも。

これまでも「防災ネット」などシステムがなかったわけではありません。神戸海洋気象台はあの日も午後1時55分に大雨洪水警報を出していました。最善策であるかのように報じられてきましたが「警報システム」がいいのかどうか、定かではありません。「当分の間」とされている消防署による広報車での警報伝達(周知)が、ローテクですが一番優れた方法です。

都賀川のなかにつくられた遊歩道は、通勤に使う人さえあります。夏涼しく、冬暖かで、信号待ちもなく交通事故の心配のない遊歩道は、そこが川でさえなければこんな便利な道路はありません。バーベキューを楽しむ人も多いのです。一方、市民の水辺は特に夏休み中の子どもたちが楽しみにしてきました。


井上力の“いまどきの県政”
2008年7月1日
同じ首長でも・・・

知事が日経新聞1めんトップという派手な餞別に送られて出張し、帰ってきました。

同じ「首長」でも・・・。片や首長国の主権者、片や日本の知事。次のように大使から「説明」を受けたそうです。アラブ首長国では次の6か所を訪ねたそうです。

(1)在アラブ首長国連邦日本国大使館訪問(知事の海外出張報告より

大使は神戸について「医療バイオ分野で強み」という認識なのだそうです。

(2)アブダビ保健庁訪問

知事より、田中紘一氏の神戸国際フロンティアメディカルセンター構想及び神戸市医療産業都市構想について言及し、地元としてもバックアップしていることを強調した」のに対し、

シクシクCEOからは、本会談を今後の神戸プロジェクトを進めるステップにしていきたいとのコメントがあったほか、アブダビに医療拠点をつくりたいと考えており、製薬会社に興味があるとの発言があった」そうです。(知事の海外出張報告より

あらゆる人々から不評ながら病床規制が県の仕事であり、また日本では株式会社の病院経営は認められておらず、バックアップ以前の問題があることは知事から語られていません。アブダビ側には「神戸プロジェクト」があり、その最終目標はアブダビに医療センターをつくることだそうです。

(3)アブダビ計画経済庁訪問(知事の海外出張報告より

経済ミッションの相互派遣、経済・投資セミナーの実施、両地域の交易・投資の促進、行政関係者の相互訪問・交流の実施等を行っていくことで合意した。

(4)アブダビ教育評議会(ADEC)訪問、(5)アブダビ商工会議所訪問、(6)アブダビ日本人学校訪問


井上力の“いまどきの県政”
2008年6月13日
知事とアラブの王様の開明度

兵庫県知事がきのうの定例会見で海外出張日程を公表しました。目を惹くのはUAEのアブダビ首長国訪問です。

アラブ首長国連邦では、アブダビを訪問し、経済・医療・教育などの分野で話し合いを進め協定締結などを行う予定です。あと、ドバイで大規模プロジェクトの視察や経済団体を訪問して兵庫、神戸への関心を持っていただこうとするものです。

と述べています。「アブダビの子供(ママ)達は裕福ですので、ほとんどの子供が掃除はメイドがするものだと思っている。ところが日本人学校では生徒が掃除をしているということで、将来のアブダビを担う子弟教育は日本流が望ましい」なんて記者に答えているのはご愛敬で、神戸の未来、日本の医療の未来に激震が走りました。

日程は資料にリンクしました。

大きく報じているのは『日経』です。1面トップと関西ページで神戸の新病院・神戸フロンティア・メディカルセンターにアブダビの投資ファンドがSPCを通して100億円、投資するというものです。

アブダビの埋め立てや湾岸諸国の淡水化事業などに、日本(神戸)は技術を提供できただけで、UAEに資本が蓄積されたのを指をくわえて見ているだけでした。結果として超高層ビルが林立する大都市に世界屈指のリゾート「特区」ができあがり、先進国日本の子どもたちは「部屋の掃除を自分でしなければならない」国際格差が生まれたのでした。ついには病院一つ造るのもUAEの政府系投資ファンドに協力を仰がなければならないという、とんでもない事態に立ち至りました。

もちろん神戸先端医療センター長や、日本でもだぶついている投資マネーは、これを機会に営利を目的とした病院経営がPFIの多用で可能となると、視線は未来に向いています。 UAEの「高級リゾート特区(特区である必要はないのですが)」と神戸の「外資参入医療特区」は一対のものです。

兵庫県の病床規制はどうなっているのか。なぜアラブの王様が経営する病院でなければならないのか。県民がお産に際して入院できる病院を探し回らなければならないのは、なぜか。

病院を市場原理に委ねるべきではありません。知事とアラブの王様の「開明度」が問われます。


井上力の“いまどきの県政”
2008年2月26日
「史上第2位」から1年

兵庫県がきのう補正予算を発表しました。債権放棄2件などが新聞で紹介されました。特損が22.5億円、債権放棄が19億円、増資(世間では補助金という)が10億円です。まことに、「過去の借金は震災復興関連」ですね。

県税収入について、昨年の今頃'07年度当初予算案を知事が記者の前で説明したとき、次のように述べています。

平成19年度の本県の財政環境についてご説明します。県税収入については、税源移譲を除くベース、つまり現行制度ベースで、平成18年度当初予算に比べて約700億円の増が見込まれます。後ほど説明しますが、これは史上第2位の規模です。・・・県税の現行制度分では6,640億円の税収を見込んでいます。このうち法人関係税は2,408億円です。県税のピークは平成3年の6,650億円ですので、過去2番目に大きな額を見込んでいるということです。法人関係税のピークは平成元年の2,937億円であり、まだ500億円ほど、ピークには遠いということですが、これからも期待をしていきたいと思っています。('07年2月7日の定例会見)

だから「見込み違い」であり、新行革なのですが、昨日発表された補正予算は、「見込み違い」発覚後も▲につぐ▲です。

紹介した赤い字の部分がどう修正されたのか、また、「一体改革」で昨年は政府にダマされていたこと、今年も地方財政計画はウソばかりであること、などを明言していただきたいものです。政府の「改革」や「地方財政計画」は、去年の兵庫県予算以上に「見込み違い」だと。


井上力の“いまどきの県政”
2008年2月25日
借金の名目替えて新行革

(19日の書きかけ40字ほどを消去しました)

兵庫県予算案は、今年も収入の不足を赤字公債などで埋め合わせて編成されています。

「赤字国債は、施設などの裏付けがなく、建設国債はホールや道路など、いざとなれば売り飛ばして借金返済ができるので、より健全」などと、どこかの国の古き「良き」時代、言われていました。某市の著名な市長(故人)は「借金のススメ」と言い、自治体が将来の税収を使って今の市民生活に施設(下水道や都市開発)を供することを推奨・実行しました。

兵庫県知事も、つい先日、大阪・橋下新知事の言動に関して、記者会見で次のように述べています。(1月29日の定例会見

 元々地方財政において地方債というのは、地方財政法第5条で、赤字対策ではなく社会資本整備の財源にしか使えない、そのために発行が許される制度として認められているわけです。それは何故かというと、例えば、道路にしても、公共施設にしても、耐用年数がありますよね。整備をする時の人たちだけが使うのではなく、耐用年数期間の人たちが使うわけですよね。ですから、耐用年数期間の人たちにあまねく負担をしていただくという意味で、ある程度は借金でつくって、元利償還金を後の世代の人たちが負担をするということで、世代間の公平を確保するという仕掛けになっています。国の赤字国債はちょっと性格が違います

ところが「ちょっと性格が違う」方へ県財政は変質しています。建設公債が赤字公債に、どんどん取って替えられています。残高ざっと7,500億円。

県議選直前だった昨年の今頃は「大幅で歴史的な増収」と県予算を語っていた人と同じ人物でしょうか。もっとも「大幅で歴史的な」「見込み違いがあった」と半年後の8月には訂正したのでしたが。

行革推進債について、グラフのように「これまで9年間で3,574億円」借り入れてしまったけど「今年からの11年間で2,400億円」に「後年度の発行枠を減じる」のだそうです。今年度が350億円ですから正直に言えば「来年から10年で2,050億円」です。ところで、「枠」を決めるのは知事の専決事項でしょうか。県民は、こんな「枠」は認めたくありません。

兵庫県と神戸市の'08年度予算案について、けさの『おはよう新社会党です』に、次のように書きました。

赤字公債ふくらむ
神戸空港は破たん秒読み

 予算を審議する県会と市会が始まりました。

 1年前の今頃「大幅で歴史的な収入増」だった兵庫県は、1195億円もの収入不足。「行革推進債」(施設の裏付けのない赤字公債)や退職手当債(同)を借り、今年も「県債管理基金」に手をつけます。

 病人のふとんをはぎとるのは1年先送りしたものの、75歳以上を別立て保険にし、保険料を年金から天引き。路線バス助成削減で全但バスを3割路線廃止に追い込み、神姫バス傘下に追いやりました。それでも神戸空港への支援は続けるそうです。

 神戸市一般会計は4年連続の減少。70億円の収入不足は、やはり赤字公債で。

 「空港特会最後の黒字予算」は、地方交付税や燃料譲与税などで辛うじて編成できました。建設費の利息支払い(特会)も多額になり、来年度から元金償還も始まります。ベイシャトルに6億や神戸ワインに20億(補正予算)。スパコンの冷却より市トップの頭を冷やすべきです。


井上力の“いまどきの県政”
2007年12月13日
カード
がたくさんあると不便ですね

兵庫県は社会保障カードに住基カードを活用するべきだと「提言しました。10日の知事定例会見で12日付の「提言」です。定例会見で知事は次のように「説明」しています。年金記録についての耳よりの情報や、知事の私生活、とくにカードをたくさん持っていて徐々に整理中であるとか、カードが増えると不便で仕方がないとか、相当いじわるに赤い字にしてみました。

赤字は引用者

 住民基本台帳ネットワークシステムは、高度情報化社会のインフラ、基盤ネットワークで、その上に、いろいろな利用システムを構築すべきだと考え、すでに運用を開始しています。

 社会保障番号カードについて国の検討会でいろいろ議論されていますが、今後の検討にあたっては、住基カードの活用を基本とした検討をしなければならないと思っています。1つは、費用対効果の関係から見て、既に全国民には住民票コードが付番されています。それなのにまた社会保障番号を付番するということで、何のためにそうするのかよくわからないというのが率直な感想なのですが、今の年金番号も住民基本台帳ネットワークとリンクしていません。ちゃんと法整備をした上で、リンクすれば特定ができるはずなのに、そういうことが考えられていません。今度の社会保障番号制度についてもその点についての対応が全くあいまいです。全部自分で付番して自分でコントロールしようとする発想があります。どうして、こういう話になると常に自分で自分でという発想になるのかよくわかりませんが、そういう点について、住基カードというベースが既にあるのに、なぜそれを利用しないのかを強調したいと思います。それからカードがどんどん増えると不便で仕方がありません。1枚のカードでいろいろなことができた方が住民にとっては便利です。私もたくさんカードを持っていますが、徐々に整理をしています。そういう国民の声にどうして応えないのかということです。ICカードの中には、病歴とか、今飲んでいる薬とか、いくらでも情報が入れられます。そういうことからすると、ICカードの活用方法を考えればいいわけで、私もいつも住民基本台帳カードを持ち歩いていますが、このカードを作るときに、こんな利用の仕方ができますよと言ってきたことを、社会保障番号カードで同じことを言って、同じことをやろうとしています。何のために同じことを同じようにやろうとしているのか全く理解ができません。消えた年金5000万件のようなことと同じような現象になりかねないという意味でも、住民基本台帳カードをきちっと活用する、それをベースに作るというのが大事ではないかと思います。そういう意味で、住民基本台帳カードをきちっとベースにして、検討するなら検討すべきだと政府の税制調査会でもずいぶん発言していますが、なかなか理解が得られていないようですので、あえて今日発表しました。

さて所管課(係)は「費用対効果」「住民の利便性」「住基カードの活用」を理由としてあげています。しかし、次のような点については、触れられていません。

(1)「住民に定着しつつある」どころではない。'07年3月31日現在、兵庫県は累積交付枚数56,689(同年11月1日現在の人口は5,596,478人)に過ぎない。値引きや証明書自動交付機など経費を費やして「販売」に熱心。'06年度末、神戸市は普及率において全国第10位に堂々ランクインされたものの人口比1.18%に過ぎない。「定着」とは1%前後のことを言うのか。

(2)社会保障カードと住基カードを統合したとして、「たくさん持っているカード」の1枚が減るに過ぎない。電鉄会社、ガソリンスタンド、銀行・・・ICカードの普及は止まるところを知らず、まだまだ増える。(知事が一市民として多少の整理をしても、多分、1か月後にはさらにカードは増えているであろう)県民が緊急に減らしたいのは、灯油代であり生活費である。

(3)住基ネットには電子マネーや健康保険証の機能は持たないという約束があったはず。各地の住基ネット訴訟で住民が敗訴しているが、他の情報とのネットワークに慎重である限りにおいてである。


井上力の“いまどきの県政”
2007年12月4日
閉店へまっしぐら?新行革(2)

きのう、後援会幹部の方々に報告した新行革についてのレポートは、以下のとおりです。再掲部分もありますが。

兵庫県「新行革」についてのレポート

 2007年12月3日

<簡単な経過>

2007年8月

17日

県が'06年度決算見込み発表  知事定例会見は殺気だった雰囲気なし

 

22日

知事定例会見 「湾岸道路は30年債で。県は負担可能」「政務調査費は4月から領収書を5万円以上でよいとする新条例で運用されており、まずそれで実績をつくりたいというのも『考えられる対応』」

9月

25日

県議会に「行革特別委」  初会合

   

委員長  立石 幸雄(自民)
副委員長 岡 やすえ(民主)
理 事  日村 豊彦   五島 たけし   藤井 訓博   松本 よしひろ
委 員  石井 健一郎  梶谷 忠修    永田 秀一   藤原 昭一
     竹内 英明   松田 一成    栗原 一

  26日 県議会行革特別委第2回
  27日 県議会行革特別委第3回 「新たな行財政構造改革推進方策の策定に向けた取組みについて」
  27日 知事が定例会見で'07年度予算に620億円の収支不足が生じたことを発表
10月 9日 県議会行革特別委第4回  「新たな行財政構造改革推進方策の策定に向けた取組みについて」
11月 5日 兵庫県が新行財政構造改革(以下「新行革」)推進方策 企画部会案
  6日 知事が定例会見で初めて新行革について説明
  12日 神戸市が新行革に意見書
  28日 県議会行革特別委第5回 「新行財政構造改革推進方策〔新行革プラン〕                   (第一次案)」について」
  28日 知事が定例会見で新行革(第一次案)を公表 12月28日まで「意見募集」

なお、この<第一次案>にある「周知期間」について知事は記者会見で次のように述べました。

井戸知事 11月28日の定例会見
A記者 反省の意味合いは?
知 事 もう、失敗は許されない事態にある
A記者 失敗というのはどういうことでしょうか
知 事 第四回目の見直しをすることがないようにしなければならないということ
B記者 無駄な投資があったという反省は特にないということでしょうか
知 事 無駄な投資をしたという覚えはありません
D記者 周知期間は半年か1年?
知 事 3か月、1か月もあり得ます

県民生活切り捨て・県民局半減
私たちの身近なものを中心に

11月12日に神戸市が試算した「神戸市財政への影響額」

神戸市財政への影響

(百万円)

備考<市民の声>

老人医療費助成

747

医療は企業「戦士」のため?

乳幼児等医療費助成

188

子どもも受益者?

重度障害者医療費助成

100

健常者と「差別せず」?

母子家庭等医療費助成

16

県はシングルマザーの敵

重度心身障害者(児)介護手当支給

82

「自立支援しない法」にあわせ

妊産婦健康診査費補助

14

少子化歓迎?

バス対策(県単独路線維持)費補助

  4

歩け歩け。健康のため?

運輸事業振興助成費補助

  1

排ガス出しステップは高く?

スクールアシスタント配置

22

現場の声きけ

地域に学ぶ「トライやる・ウィーク」

17

受け入れ先への負担激増

自治振興助成事業

  9

胴元が負ける博打に未来なし

合計 これから10年にわたって毎年12億円、神戸市の負担が増える

市民生活への影響


●は神戸市財政への影響がないが、市民生活への影響大
○は神戸市への影響(前nの表)と重複するもの
▼は神戸市が列挙しなかったもの

老人医療、重度障害者医療、乳幼児医療などの自己負担激増
私学助成(高校・幼稚園も)単価の段階的カット
民間社会福祉施設運営交付金のカット
障害者小規模通所(小規模作業所)援護事業のカット
長寿祝い金など→3万、5万より記念品(県内特産品)と賞状の方が祝福は効果的!
スクールアシスタント、トライやるウィーク、外国人英語指導助手などバッサリ
5県民局が消滅(北播、中播、阪神北、丹波、神戸)。「阪神丹波県民局」の人口は185万人に。「西播磨県民局」の面積は2,432kuに(神戸の5倍)
部局、事務所の統廃合
職員(一般行政2,700教育420警察110)3,230人削減。'00〜'07年度までの削減実績と合計すると8,923人削減。給与等も減額
市町の公共事業を1,200億円(今年度比79%)、県単独事業で同700億円(同55%)まで削減
路線バス縮小、県民交流バスも

これから・・・道州制とたたかおう!

 総選挙と知事選・市長選にむけて、消費税・防衛利権(米軍再編)・構造改革が焦点です。それらが「改憲」の政治的条件を準備します。

 市場原理主義=新自由主義へと変貌する社会の矛盾はいっそう大きくなります。

 消費税は「平成20年代には10%台後半の税率に」と、すでに自民党は狙いを定めていますし、民主党も「福祉目的税化」という点では、大連立時代に突入しています。構造改革は、すでに四半世紀もの間、ずっと課題であり続け、農村の破壊と労働者・都市住民の窮乏化をもたらし、私たちの生活を底なしの暗いものにしました。道州制(兵庫県消滅)を視野に、私的資本にのみ奉仕する県と市の「改革」がここ数年、最後の激しさを増します。「最後の」と言うのは、生クビを切らずに大量の定員削減が可能となる団塊世代の大量退職という「好機」は、二度と来ないからです。県の新行革は「兵庫県消滅」への一里塚です。もちろん、県が消滅しても庶民からとる県税は消滅しません。

 県の職員や教職員、私立幼稚園や私立高校、民間社会福祉施設、障害者団体・・・一緒にパンフレットやチラシをつくり、それぞれ交渉し、いっしょに「たたかう」こと。この一点です。


井上力の“いまどきの県政”
2007年11月29日
「失敗は許されない」

新行財政構造改革推進方策(第一次案)がだされ、意見募集が年末までのちょうど1か月間。

きのうの知事記者会見は「反省」あり「失敗」を「認める」発言あり。普通、反省し失敗を認めれば、謝罪がついてくるものですが・・・。

なぜかおまけに「周知期間」は3か月?あるいは1か月とも。

話しにならないとは、このことを言うのではないでしょうか。

わかりにくい兵庫県サイトで、重要なものは「記者会見」の一番下にくっついています。パブリックコメントのページからと。


井上力の“いまどきの県政”
2007年11月14日
閉店へまっしぐら?新行革(1)

A3で83ページ、1.5メガにのぼる県の「新行革プラン」には、NHKが昨夜報じたように、神戸市がその影響を試算し文書で意見をだしました。 県内41の市町が怒り、とまどいを表明しています。「効果」が1兆6,800億円、そのために一般職を3割削減し、仕事を減らすというわけです。

その概要を11月12日の『おはよう新社会党です』には、次のようにまとめました。すべてにわたって減らした仕事は「NPO等が補完する」としています。

県民生活切り捨て・県民局半減

●老人医療、重度障害者医療、乳幼児医療などの自己負担激増

私学助成(高校・幼稚園も)単価の段階的カット

5県民局が消滅(北播、中播、阪神北、丹波、神戸)。「阪神丹波県民局」の人口は185万人に。「西播磨県民局」の面積は2,432kuに(神戸の5倍)

●部局、事務所の統廃合

職員(一般行政2,700教育420警察110)3,230人削減。'00〜'07年度までの削減実績と合計すると8,923人削減。給与等も減額

市町の公共事業を1,200億円(今年度比79%)、県単独事業で同700億円(同55%)まで削減

路線バス縮小、県民交流バスも

あすの「木曜コラム」は、某紙が県財政をコンビニの経営にたとえたことに乗じて、コンビニは出店と撤退を繰り返しているが、日本国兵庫県支店の玄関にやがて「閉店しました」という貼り紙が出るのではないか、と心配しました。


井上力の“いまどきの県政”
2007年11月6日
なぜいま10か年計画か

11月5日、兵庫県新行財政構造改革推進方策企画部会(なんと全角19文字)が企画部会案をまとめ、発表しました。

障害者医療の給付制限をはじめ、格差拡大・弱者切り捨て・地方切り捨て・公務員削減の「10か年計画」です。詳細は施策ごとに分析してわれわれの立場を明らかにしたいと思いますが、長期計画を打ち出すには今のタイミング、悪すぎます。

経済成長率は「H202.4%、H21:2.8%、H223.2%、H233.3%、H24以降:2.6%」と、今年1月の内閣府試算をベースにした予測だそうです。「自動車取得税が大きく落ち込んだ」と知事が困り果てて「620億円の見込み違い」を表明したのは先日です。その後、サブプライムローンの破たんで世界の金融市場から原油市場に資金が流れ、世界経済は大混乱に陥っています。第一に、「入る」の計り方が正確なようには見えません。単年度の予算で見込みを間違えたのに、10年も先の見込みを語るのは愚かです。

巨額の補助金を出して誘致した薄型テレビの画面生産も、2011年までの地デジ・バブル以降、どうなるか分かりません。知事自身が、失敗したシャープ姫路工場誘致の際に述べていたように、関連産業は幅広く、波及効果が大きいということは、右肩が下がりだしたときの波及も大きくなります。第二に、経済見通しは、この部会案には、ことによれば「ない」のではないかという疑いです。

第三に、神戸市の財政再建で明らかになったのは、市の財政規模を小さくすることによって経済の規模も小さくなってしまうという悲しい現実でした。41市町の財政に直結する県の財政は、「神戸市現象」の全県化につながるのではないでしょうか。

加えて、参議院で多数を占める民主党が新自由主義改革に熱心で、すでに大連立騒動の勃発以前にも、経済財政政策では協調路線がとられていました。私が主張する「小さな政府・大きな自治体」ではなく、「公的分野への私的資本の参入促進」一点張りの政策は、しかし、小泉・安倍政権の終焉とともに修正(「修正」程度であって転換や変革ではないが)が企てられる可能性があります。7月参院選から3か月、二大政党のそれぞれの混乱のなかで、方向性は何も明らかになっていないのです。三位一体改革=歳入歳出一体改革の先行きも不明です。消費税がどうなるか、その配分がどうなるか、すべてを国に委ねたまま、10年にもわたる財政計画を兵庫県がたてる意味は、まったくありません。

第五に、自治体が解決すべき緊急の課題は、いっそう鮮明です。くらしに事欠く県民の生活を再建する課題ははっきりしています。大企業誘致政策としてではなく、労働政策を打ち出すことが必要です。県内の労働者の要求に耳を傾けるのではなく、その要求に応えられない数字を並べ立てる目的の、この計画は、ただちに放棄すべきです。


井上力の“いまどきの県政”
2007年10月8日
10.7公聴会で公述しました

先日(9月19日)報告したことに加えて、きのうの公聴会で述べたことは以下のとおりです。公述申し出は9人で、それぞれすばらしい意見を公表しました。


(1)いのちを粗末にする高速道路行政に反対です。

 阪神高速3号神戸線東行き摩耶ランプの渋滞は、「社会実験」と称する5号湾岸線への誘導策によって、慢性化し、日に日に長くなっています。一般道の容量をはるかに超える交通量を「実験」と称して一般道へと迂回させているため、事故が多発しています。

 一般道を先頭とする渋滞が短いランプウエイを埋め尽くし、本線上に渋滞をつくり始めると瞬く間に「摩耶を先頭に○○キロ」という渋滞を生み出します。「出口渋滞」はときに第二神明道路まで続きます。

 渋滞の最後尾で起きる追突事故が増えています。昨年の夏、大阪方面に向かう小型トラックが追突され2人の若者が命を落としました。兵庫県警のまとめによれば、昨年12月までの一年間で20件、死者3人、傷者35人です。20件の事故のうち15件が昼であり、昼にこれだけの犠牲が集中するのは、車の流れをさばき切れていない構造的な欠陥がある証明です。事故件数は今年さらに増えています。

 渋滞の最後尾に停まった車は、高速で追突してくる車が、もうないことを確認するまで、恐怖の時間を過ごします。

 有識者委員会の方々も、阪神高速株式会社の重役の方々も、県や市の幹部の方々も毎日起きる大渋滞をぜひご覧いただきたいと思います。公団が公益にかなうとして有料道路を造り、その存続と利益追求のために会社を分割し、欠陥道路を「カイゼン」すると称して新たな欠陥を次々と造る愚が繰り返されています。湾岸道路の利用者を無理に増やすため行われている「社会実験」の結果、尊い命と膨大なエネルギーが消耗されています。

 おそらく、湾岸道路ができれば解決するとおっしゃるでしょう。しかし、摩耶ランプ付近の事故は、「湾岸道路ができ、3号神戸線から湾岸道路へ車を誘導したために」起きているのです。

 いったいどれくらいの犠牲者が出れば、犠牲者を出し続ければ、摩耶ランプ周辺の事故はなくなるのでしょう。あと何年、何十人の人柱を求めるのでしょう。

 いま、阪神高速株式会社がなすべきことは、事故が多発する地点の改良です。港湾幹線道路と神戸線をつなぐ道路の提案より、湾岸道路建設を優先するその考え方を、とうてい理解できません。

 神戸はその元々の地形から、東西交通を速やかに「通過」させることと、周辺部に迂回させる道路行政をすすめてきました。できればその通過交通を先人が築いた鉄道や一般道と分担することです。いや、山陽自動車道や中国縦貫道は、すでに供用されています。

 神戸市は港湾幹線道路を建設しました。3号神戸線にも多額の出資や負担をしてきました。大震災後、史上希な壊れ方をした有料道路の再建にも、多額の増資を強いられました。一般道路についても同様です。いま、港湾幹線道路は湾岸道路の代替が果たせない、とても貧弱な有料道路だと聞かされ、愕然としています。確かに民有地の上を有料道路が走る様に、拡幅の余地を見いだすことはできません。3階建てで、不安定で、無粋な外観は、できることなら視野から消えてほしいとは思いますが。その上、3号神戸線さえも欠陥だらけの狭いボロ道路だとけなされては、神戸市民は浮かばれません。

(2)行政の財政負担、建設主体など未定のまま、「計画ありき」で議論が進むことに反対です。


井上力の“いまどきの県政”
2007年9月19日
ムダ・ムラ・ムリの湾岸道路計画

『おはよう新社会党です』
などで使っているロゴです

湾岸道路有識者委員会(国土交通省・国道事務所)のホームページから

兵庫県と神戸市は、8月20日、大阪湾岸道路9期(六甲アイランド〜駒ヶ林)区間について、都市計画決定について、重大な一歩を踏み出しました。それぞれ以下のサイトをご覧ください。

神戸市の記者発表(8月20日)

兵庫県がサイトにアップ(8月31日あるいは9月1日)

国土交通省の計画

有識者委員会の記録

兵庫県知事あるいは神戸市長からの説明は、ほとんど探せませんが、
8月22日の知事定例会見がいちばん詳しい「説明」です。

阪神高速株式会社のサイトにはこの区間の問題について、めだった説明はありません。

すでに説明会が始まっています。

私は公述申し出をして、10月7日の公聴会に参加するつもりです。

灘総支部のサイト上にも「木曜コラム」や『おはよう新社会党です』で意見を述べ、情報を出してきましたが、あらためて『新社会ひょうご』9月25日号に掲載予定の文書をアップします。

 トヨタの成功は、ムリ・ムダ・ムラをなくす「カイゼン」で語られる。そうに違いない。しかし、トヨタが世界の代表的な多国籍企業となるためには、税金をつぎ込み借金して国と自治体が、道路を整備し、高速道路・自動車専用道路を造りつづけなければならなかった。

 日本道路公団の民営化を唱え、若者の人気を博して役人や国会議員と激しく渡り合った猪瀬直樹氏も「挫折」した。旧日本道路公団はその資産と負債を所有する「独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構」(以下、「機構」)と、高速道路を建設し維持管理を行う6つの「会社」に一昨年10月、「分割」された。

 ケインズ政策を口汚くののしった新自由主義は、国家の意思と国民の負担で高速道路を造りつづける道を確立した。阪神高速株式会社は毎年8月、「来年度予算概算要求」をする。株式会社が「概算要求」をする。'08年度の建設投資の財源は、政府保証債78億、郵貯年金等から150億、銀行借り入れ81億、「機構」からの「借り入れ」188億である。「機構」には有利子負債が35兆円もあり、資産の8割を超える。「改革」の結果、「新直轄方式」と名づけて、建設費を地元自治体負担とする仕組みがつくられた。上下分離(分割)前ならだれもが不可能と思った新線建設が可能となった。

 元々、高速道路は産業基盤を整備するためのものであり、これが「儲かる」なら、その恩恵に浴する資本が、その利益のために会社を興し、建設・管理すればいいものであった。しかし、世界一の吊り橋を持つ「本四架橋」以降、バランスが崩れ、「儲かる高速道路」でなくなり、産業基盤を整備するための道路でもなくなった。

 さて、湾岸道路の最終区間である神戸市内の「9期」区間(西伸部と名づけられている)について、県知事は8月22日の記者会見で「事業費は数千億円のオーダー」「有料道路と公共事業の合併施工」「新直轄事業(に準じる方式)だと地元負担は4分の1」「それを県と神戸市でどう負担しあうのかは・・・政令市の場合は政令市が全て負担するのが通例」とし、県負担分について「例えば地方債なら30年の地方債を発行して、30年払いをしていくというのが通例ですので、・・・その償還に耐えられないわけではない」と、悠然と答えている。さすが、実質公債費比率全国ワースト4位から2位へ今年「躍進」した兵庫県の知事である。

 県の都市計画決定に向けて説明会が行われ、10月7日には公聴会が行われる。財政問題は都市計画審査の主要な課題ではない。従って財政計画は明らかにしないまま「計画ありき」でボールは市民に投げられている。

 '03年11月から'05年1月まで開かれた「有識者委員会」とその「公募型ヒアリング」等で明らかになった諸課題は、未解決である。それらも含め湾岸道路は、次に列挙する諸問題についても何も解決していない。湾岸道路はムリ・ムラ・ムダそのものである。

●必要性について一般道を含めた処理能力は無視●神戸から放射状の道路整備はすでに完成●計画どおり完成すると「阪神間10車線・神戸東部14車線・神戸中心部10車線」となる●港湾幹線道路との重複投資を容認し、港湾幹線道路の活用案は切り捨て●活断層調査なし●工事中の水質汚濁●供用後の神戸港の汚染●ポートアイランド、六甲アイランド内の排気ガス・騒音・振動●景観(清盛の時代から千年かけて今の景観があり、一度造ればこれから千年の景観という指摘もあった)●船舶航行への支障(クィーンメリー号はきっ水から62メートル)●空港離着陸ルートとの近接●トンネル・沈埋トンネル案を切り捨て●濃霧・凍結・設計速度80キロ/毎時・安全帯など安全面●すでに「8期区間」の須磨海岸トンネル案への反対運動がある●既存阪神高速などの環境対策のためとする「まやかし」●総量規制・車社会からの脱却を放棄(順不同)


井上力の“いまどきの県政”
2007年8月28日
政務調査費/どんな実績が必要なのか

井戸敏三知事が22日の定例会見で県議会の政務調査費について、次のように述べています。(赤色は引用者)

 それから、政務調査費の取り扱いについてですが、基本的には、この6月の新議会から1件5万円以上の支出についての領収書添付が義務付けられており、その運用をある程度してみないと、さらに金額を下げるかどうかという議論にはなかなかなりにくいのかもしれませんが、国における取り扱い、例えば政治資金規正法の取り扱いがどういう論議になっていくのかということと関連して、一つの検討課題になるのではないかと思います。まずは自主的に議会の各会派で議論をされるのではないかと思っています。ただ、実績がない今の段階では、まず1回は実績をつくりたいというのも、一つの制度を改正した後の対応としては考えられるのかもしれません。

さて、実績とは?

昨年、政務調査費をマイカーのローンの支出に使っていたり、自宅兼事務所の「家賃」に支出されていたという「実績」が、すでにあるのです。

誠に奇妙な論理ですが、「5万円」の新ルールで、どういう実績が明らかになると、どういう改正が行われるのでしょう。5万円未満には領収書不要という新「制度」(条例)のもとで、不明朗な支出を期待したかのような発言ではないでしょうか。

政務調査費は100%公費です。県知事が執行する予算です。きのうの『おはよう新社会党です』でも触れました。


井上力の“いまどきの県政”
2007年6月11日
懲りてない介護詐欺

けさの『おはよう新社会党です』に私が書いた「カッコ付き川柳」(「カッコがついてない、つまり様になってない三流」と酷評する人もいます)は、コムスンがテーマ。

「市も県も踊らされてるお立ち台」でした。吉田俊弘さんのカルタもテーマはコムスン。

ニュースとしてはワタミがグッドウィル(コムスン)施設の譲渡先として名乗りを上げたとか、グッドウィルの株価ストップ安が続く一方、ニチイ学館(アイリス)やセントケアなどの株価があがっているそうです。買収という名の乗っ取りや、事業譲渡という名の解雇が介護の現場に頻発する予兆です。

東京都が昨年12月15日に「実地指導」に入り、そして「監査の実施」が通知されたのは2月23日。コムスン、ニチイ学館、ジャパンケアサービスの3社です。

後に公表されますが、3月23日に「虚偽の指定申請」「人員基準違反」を理由に、3事業所に「指定取消処分相当」がだされました。その「監査結果通知」には「なお、この3事業所については、虚偽の指定申請(介護保険法第77条第1項第8号該当)及び人員基準違反(法第77条第1項第2号該当)が確認されたため、本来、指定取消処分相当であるが、監査結果通知日と同日に事業所の廃止届けが提出されたことから、処分の対象とはならない。このため、虚偽の指定申請により、不正に請求・受領した介護報酬(43,204,105円)を保険者に対して返還をするよう指導を行った。」とあります。

上記を含む東京都の監査結果報告と指導は4月10日でした。同じ日付でコムスンは、慇懃無礼に言い訳をしています。「株式会社コムスンに対する改善勧告について」というタイトルで。「改善勧告は行政指導であるため、行政からの公表にも該当しないという判断から、当社も報告ができなかったため」などなど。

4月10日の文書では、コムスンは、「また現在、当社では、昨年の介護保険法改正による収益の大幅な悪化を勘案し、ビジネスモデルの再構築のため、事業所の統廃合を進め」ているとし、真摯・反省・努力の文字もありますが、猛烈な勢いで「廃止届け」(コムスンの主張では統廃合)を出し続けました。

東京都は5月29日、「検査結果と改善状況」を発表しました。

コムスンが代表者名で「『東京都の実地指導及び監査ならびに自主点検』の結果について」という文書を発表したのは5月31日です。6月6日、厚労省が動く「そのとき」まで1週間を切っていました。

経過をたどると以上のとおりです。行政がきちんと指導できたような経過にも見えますが、ほとんど幕末の武士・幕府と悪徳商人・両替商の力関係に近いのではないでしょうか。時代劇では他に悪代官というのがいて、商人に貢がせていたり、情報を公開せずにそっと悪徳商人に知らせていたりするのです。現代劇では悪代官は区議、都議、国会議員・・・というのは早とちりでしょうか。宙に浮いた年金記録問題が沸騰しているさなか、同じ厚労省から出てきたという点では、少なくとも政治的です。

やっぱり「市も県も踊らされてるお立ち台」です。きょう3時からの兵庫県知事定例会見が明日にはアップされます。


井上力の“いまどきの県政”
2007年6月8日
介護詐欺。兵庫県は5都県の一つ

知事の記者会見は5月28日(月)のつぎは6月1日(金)に行われ、藤原紀香がきれいだったとか生田神社の加藤宮司は太っ腹だのと語っていました。日程が変則的になったのは外国出張の関係だったようです。コムスンの件は週明けになるようです。

兵庫県はコムスンの介護詐欺について、「利用者サービス確保」という緊急の対処をおこなうようですが、同時に神戸新聞はきのう「既に、三、四カ所の事業所で、豊岡市で発覚したケースと同様、提出書類の不備などが見つかっており、不正受給がないか精査する」と報じています。

年金納付問題なども社保庁としてはちゃんとしてほしいものです。就業していない介護士を登録していたのですから、その年金保険料はどうしていたのか。健康保険は当然のように国保なのか、それでいいのか。会社が労働者を雇用して研修もせずに利益だけ受け取ることが多いようです。めちゃくちゃになっていますが、労働基準法が適用されない「特区」はありません。ジュリアナに労働組合があったという話はきいたことがありませんが、こんなとき労働組合は要らないという人はいません。兵庫県の役割は膨大です。


井上力の“いまどきの県政”
2007年5月22日
シャープはどこへ? 
この部分は「きょうの井上力」とほとんど同じです

週末から報じられた「シャープが5,000億円を投じる新工場が、姫路ではなく堺に」というニュースに、きのう、兵庫県知事が定例会見で記者から矢継ぎ早の質問を受けました。ほとんど決定していると言われていた姫路ではなく、堺に決まる背景には、大阪からの距離や、亀山工場との距離や、海外への出荷の便利さが選ばれたと報じられたのです。

松下がプラズマ工場を尼崎へ、神戸にはスパコンが来て、姫路にシャープの次世代液晶パネルです。コウノトリでも大成功、丹波ドラゴンまで現れたのに・・・。

いま、ほとんど国家的プロジェクトとして薄型テレビの国内大量生産競争が繰り広げられています。日本政策投資銀行のデータは、部材・素材メーカーとの連携で、海外生産を上回る技術が維持できるかどうか、などを課題としてあげています。同時に(1)低価格化への対応(2)海外現地生産へのシフトの進捗度合に左右される、と。

野村総研は以下のように予測しています。

野村総研の予測

●市場規模予測
市場・分野(単位) 2006年度 2007年度 2011年度
ハード市場 薄型テレビ(千台)※1、2 56,651 71,097 128,834
携帯電話端末(百万台)※1 955 1,063 1,231
車載情報端末(千台) 4,131 4,214 4,624
デジタルカメラ(千台)※1 84,700 89,000 86,700
ゲーム機(千台) 23,010 28,470 11,860
デジタルビデオレコーダー(千台)※1、2 18,898 24,163 34,487
ロボット(億円) 90 115 415
放送市場 地上デジタル放送(億円) 6,807 9,964 21,490
衛星デジタル放送: BSデジタル放送
(億円) CSデジタル放送
2,261
1,870
2,901
1,919
5,972
2,106
ケーブルテレビ(億円) 2,792 3,043 3,702
 
※1: 薄型テレビ、携帯電話端末、デジタルカメラ、デジタルビデオレコーダーの予測値は、世界市場への出荷台数
※2: 薄型テレビとデジタルビデオレコーダーの予測は、「年度」ではなく、「年」単位

http://www.nri.co.jp/news/2006/061219.htmlより

北川正恭・三重県知事時代の亀山への液晶工場誘致以来、多国籍企業に貢ぎ物を約束する自治体間の大競争が繰り広げられています。投資額の何%をプレゼントするか、固定資産税をどれくらい、何年間減免するか、不動産取得税、事業税などをどれくらい・・・。

兵庫県は産業集積条例を定めています。たしかに大企業が撤退したまま空き地になっているより、他府県に大工場が建つより、誘致を成功させるにこしたことはありません。ことは臨海部の埋め立てが成功したか「もったいなかった」かという数十年来の議論の結論に直結します。

しかし、次世代液晶パネルの海外技術移転が禁じられている間は別として、資本は兵庫県や姫路市に強い思い入れを持って貢献することが約束されるでしょうか。県税からの貢ぎ物を受け取るだけでは困るのです。兵庫県知事が「私からも申し入れているトップ会談」(昨日の記者会見)で、雇用や中小企業育成についての協定が交わされるのかどうか。

きのうの『おはよう新社会党です』には、次のように書きました。

自治体間の競争は工場が撤退した後の遊休地をどうするかをめぐって繰り広げられています。海外進出のため巨大企業が撤退し、町が衰退する悲劇を繰り返さないためには、誘致の際に雇用や中小企業育成についての約束をしっかりと取り付けることが大事なのに、無条件誘致どころか優遇策や県税投入では話になりません。

自治体は企業誘致の競争をしている場合ではありません。緊急に、医療・福祉・教育の水準を高める競争で住民の期待に応えるべきです。


井上力の“いまどきの県政”
2007年5月7日
「兵庫県知事が死者を2千人増やした」発言について

4月8日(日)

石原慎太郎東京都知事が、4月8日、当選後のインタビューで「神戸の地震の時なんかは首長の判断が遅かったから、2千人余計に亡くなったわけですよね」と述べたこと、今もその発言を撤回していないことは、兵庫県政にとってとても重要な問題です。『朝日新聞』が報じました。

自衛隊への派遣要請についての賛否があったかのように言われていますが、そうではありません。私たちは消防や警察力が対処できなかった事実を踏まえ、自衛隊を改組して災害救助隊を創設すべきだと主張してきました。バールやジャッキが役立ちました。人手が要りました。屋根をめくり、天井をめくり、 畳を切り取り、床を破ってさらにその下の天井をはがしたところから、多くの人が救われたのでした。あるいは遺体で収容されたのでした。

4月9日(月)

テレビ等でも報じられ、次に反応したのは翌日の兵庫県知事でした。

2007年4月9日の井戸知事定例会見
 
F記者:

 関連してですが、細かな文脈は分かりませんが、一部報道では、先程お話にも出ました東京都の石原知事が阪神・淡路大震災について、「首長の判断が遅かったから2千人余計に亡くなった」と発言されたと伝えられていますが、この発言についていかがお考えですか。

知事:

 どういう趣旨でそういう発言をされたかよく分からないのですが、報道を見ておりますと、自衛隊の派遣要請をもっと早くしておけば、犠牲者は2千人減っていたのではと言われたようです。阪神・淡路大震災は、不意打ちだったということと、非常に上下動の激しい震度7の地震でしたので、犠牲になられた方々はほとんどが圧死だったと分析されています。私は、公的な救済機関が入る以前に、地域の防災力をどう高めておくかということが、緊急時の第一次的な救出、人命救助にとって、一番大事なことであり、その反省の上に立ち、地域防災力を強化するための自主防災組織の組織化や、防災訓練に努めてきたと思っています。自衛隊の派遣要請の早さと、犠牲者の数は、阪神・淡路大震災のケースではあまり脈絡のないことと思うだけに、今後一番危険視されている首都直下地震に対する備えとして、防災に対する総責任者がそのような認識を持たれているのだとすると、いささか心配ですね。東京都の人たちは夜も眠れなくなるのではという思いがします。だから、きちっと私たちは私たちなりの分析をしておりますが、あわせて東京都は東京都の分析を明確にしていただいて、防災計画なり、防災体制の整備を行っていただきたいと思います。何故、自衛隊の派遣が遅れ、犠牲者が2千人増えたなどと言われるのでしょうか。いい加減な議論はしていただきたくないというのが、私の率直な気持ちであり、誠に失礼だと思っています。

連休を控えて動きが激しくなります。

4月26日(木)

『毎日新聞』の小園長治・豊岡支局長が4月26日の「記者の目」「神戸・ポートアイランドの自宅で震度7の直撃を受けたあの時のように心が震えた。当時神戸支局員で、その後もずっと震災にこだわってきた私だが、初めて聞く数字だった。」と、石原発言をとりあげ、反証となる事実を多数書いています。 ちなみに、小園支局長は、中越地震のとき新潟支局勤務でした。

石原発言に対して4月26日、貝原俊民・前知事が反論しました。石原発言は「とんでもない見当違い」と。神戸新聞が報じました。冊子をつくる 予定であると、記者にはゲラが配布されたそうですが、貝原氏が現在籍を置く「21世紀協会」によれば、「冊子の完成は早くても5月末」 (私の電話に対して5月7日、担当課長)とのことです。

4月27日(金)

一方、石原慎太郎東京都知事は4月27日、定例会見のなかで記者から問われ、次のように述べています。東京都のホームページに7日午前の時点ではテキスト版がありません。以下はMedia Playerから筆耕しました。8日夕刻、テキスト版がアップされていました。(この色の部分8日)

ちょっと数字は違ったかも知れないけど、詳しくは佐々(さっさ)さんの受け売りでね。・・・(中略)・・・崩れた家のなか火が迫ってくる中で人がむざむざ死んだ・・・(中略)・・・自衛隊の出動が早ければいろんな形で救済できた。・・・(中略)・・・実は当時の内閣官房にも責任がある。それ以上言わない。ジャーナリストが調べなさい・・・(中略)・・・とにかく知事、市長の要請が遅れた。自衛隊は7、8時間、出動を控えていた。

2千人ががれきの下で、戦車が来るのを待ちながら、命を落としたというのです。ミサイルや機関銃が早く到着していれば、2千人が救われた、とでも言わんばかりです。

当の佐々敦行氏さんがどう言っているかを朝日新聞が報じています『8割が即死』と言われているのは事実でなく、石原知事の発言は間違っていない。自衛隊の出動で救えた正確な人数はわからないが、石原知事に災害時の初動の重要性を説く際に『2、3000人ほどが助かったでしょうね』と言ったかと思う」と。

確か、石原氏の「私は失言ブレーキ係。オウンゴールさせないようにするのが任務」(報知新聞3月26日)と任じていたはずの佐々敦行さんですが、選挙がすんだらオウンゴールをポイントだと言いくるめる役割に変わっています。

5月1日(火)

改めて井戸敏三知事が、定例会見のなかで記者から問われ、次のように述べています。何となく「撃ち方やめ〜」的です。

 2000人が助かったのではないかという点について、私たちは非常に反発をしたわけで、自衛隊等の災害救助の公的機関ができるだけ速やかに被災地で活動を開始するようにしていかなくてはならないという意味では、それは当然のご指摘だと思います。あまりにも大きな数字を上げられたことが我々被災地からすると、いかがなものだろうかということで、その点について私たち被災地の気持ちを述べさせていただきました。その点は石原知事もご理解をいただけたのかなと思っています。首都の災害は非常に大変だと思います。直下型の大地震の阪神・淡路大震災の場合、多くの人が近隣住民等によって救出されたと聞いています。そのような実態を踏まえて、公的機関が駆けつけるまでの間が非常に大事です。それに対する対応をどのように組織化しておくか、組織化していてもその時に機能するかどうかが問題ですので、事前の訓練等を含めた地域ぐるみの対策を検討、用意しておくことが大切だと思います。東京における大地震対策は、非常に大きな被害が予想されるだけに、いかに減災の手段をいろいろな形で組み立てていくかということが大切だと、石原都知事の発言もそういう思いから出ていることもあるのではないかと受け止めています。阪神・淡路大震災の経験も是非、よく踏まえていただいて、我々は突発的な対応を強いられたので、突発的な対応を繰り返すことがないように願っています

井上力の“いまどきの県政”
2007年4月26日
平和の声は大きくなった

以下は『灘・平和のための木曜行動』第243号に載せたグラフです。「護憲派の後退」とか言われますが、灘区の県議選に関する限り、平和の声は微増しています。増えたと言えるほどかどうかはともかくとして・・・。

 

憲法9条について

前回得票率 今回得票率

増減

新社会党 9条改憲に反対 38.92 39.78 0.86
共産党
民主党

26.79 26.69 −0.10
自民党 9条改憲案を提示 34.29 33.53 −0.76
新社会党と共産党を合計して一つの枠でくくりましたが、何らかの協定などがあったわけではありません。念のため。

井上力の“いまどきの県政”
2007年4月19日
県議選得票結果

'07年4月8日 県会 (定数2)

'03年4月13日 県会 (定数2)

原 亮介    (自民) 15,050 33.53% 原 亮介     (自民) 15,046 34.29%
石井 健一郎  (民主) 11,979 26.69% 石井 健一郎 (民主) 11,754 26.79%
井上 力   (新社会) 9,942 22.15% 吉田 俊弘 (新社会) 8,457 19.28%
島田 しずお  (共産) 7,910 17.62% 島田 しずお (共産) 8,617 19.64%
有効票合計 44,881   有効票合計 43,874  
無効票計 1,748   無効票計 2,236  
持ち帰り他 1   持ち帰り他 0  
投票者総数 46,630   投票者総数 46,110  
当日有権者数 101,602   当日有権者数 98,744  
投票率 45.89%   投票率 46.70%  

'07年4月8日 市会 (定数6)

'03年4月13日 市会 (定数6)

いさか信彦  (市民力) 9,506 20.67% いさか信彦   (たまご) 8,706 19.19%
吉田もとき   (自民)  7,323 15.92% 吉田もとき    (自民) 7,880 17.37%
うえわき義生  (公明) 7,026 15.27% うえわき義生   (公明) 7,470 16.47%
西下 勝     (共産) 5,759 12.52% 西下 勝     (共産) 5,611 12.37%
たじ 裕規   (民主) 5,588 12.15% たじ 裕規    (民主) 4,466 9.85%
小林るみ子  (新社会) 4,945 10.75% 井上 力     (新社会) 3,764 15.12%
村山あいみ  (無所属) 2,461 5.35% 小林るみ子   (新社会) 3,095
寺田 新     (自民) 2,145 4.66% 長谷川ちえ子   (自民) 2,568 5.66%
浜口ともひろ (改革) 1,244 2.70% 岡田かずのり(無所属) 1,068 2.35%
      ごとう基次   (無所属) 729 1.61%
有効票合計 45,997   有効票合計 45,357  
無効票計 638   無効票計 771  
持ち帰り他 4   持ち帰り他 1  
投票者総数 46,639   投票者総数 46,129  
当日有権者数 101,596   当日有権者数 98,740  
投票率 45.91%   投票率 46.72%  

以下は4月14日、選挙に深く関わっていただいたスタッフと選挙対策委員会にお配りした文書です。 得票結果は上記のとおり。10日の読売新聞が全立候補者を得票順に並べていましたが、私は93番目。定数は92ですから、ここでも「次点」です。'85年の市議補選(定数1に4人立候補)以来、7回めの選挙となりましたが、うち次点は3度め、当選は4回です。

大震災復興施策や神戸空港問題での住民運動の前進とともに、神戸市内で一定の地位を確立してきた新社会党が、今回の選挙では、準備の段階で大きくつまづいてしまいました。4年前の'03(平成15)年には、市内で県会に2人、市会に8人を擁立しましたが、結果は県会1、市会3の当選にとどまりました。

早くから、運動を総括・反省し、情勢を分析して準備を進める必要がありましたが、各区でそれが実現せず、加えて須磨区、兵庫区などで健康上の理由から立候補を断念せざるを得ない事態まで生じました。とくに地方選挙は地域密着でなければならず、突然、候補者づくりなどしても、それを有権者の皆さんに受け入れていただけるはずがありません。辛いことや悲しいこと、嬉しいことや腹立たしいこと、これらの感情を新社会党が有権者の皆様と共有せずして地方選挙は始まりません。きのう、きょう、発見したものではないはずの自明の理が、すっかり忘れ去られていたことに、今回選挙での「敗因」のすべてがありました。まちがいなく、たたかう前に敗北していました。

第二に、こうした状況について、市民の皆様に率直に現状をご報告し、力とお知恵をお借りすることもできなかったことも、大きな問題でした。

灘区でも選挙態勢がととのったのは昨年も晩秋のことで、かねて健康上などの理由から不出馬を表明してきた吉田俊弘さんのあとに、井上力が立候補し、市会を16年間続けてきた「2人擁立態勢」から撤退して小林るみ子一人に絞ることに落ち着きました。この段階でも、より多くの市民の皆様に実状をご報告し、対策を一緒になってお考えいただくことの必要性を認識しながらも、きわめて限られた方々にご相談したにとどまってしまいました。

新社会党の力は、誰やかれやの候補者個人の力のみではなく、党外の、市民の皆様との間の意見交換や一緒に学習することや、あるいは一緒に行動するなかで培われるものであり、いやそれだけが「力」であることを肝に銘じていたはずであります。その意味で、井坂市議が名づけた「市民力」は、ネーミングだけで言えば新社会党がめざしてきたそのものズバリであります。灘区でも、たたかいが始まる前に、後がないところまで後退してしまっていました。従って、市会を一人に絞るなら現職で経験のある井上力の方が・・・というご意見はごもっともですが、そうしたところで反転攻勢は望めなかったのでした。むしろ16年にわたって苦労を重ねてきた吉田俊弘さんからのバトンタッチを成功させ、後退を今回限りのものとして、前進への拠り所をしっかりとつくることに全力を集中したのでした。

選挙結果だけで言えば、市会の現有一議席を守り、県会では'90年代半ば以降(大震災以降であり、小選挙区制実施後)最高の得票を収めることができました。もちろん市会の得票率減少(15%から10%へ)、県会の伸び悩みなど、克服すべき課題は鮮明です。

深刻な総括を皆様方とともに行う決意です。

お力添えに心から感謝し、深くお詫びして、新社会党が一皮もふた皮も剥ける決意とさせていただきます。

以上、井上力が灘総支部に提出する総括案の骨子です。


2007年4月8日投票の県議選に、吉田俊弘さんのあとを受けて灘区選挙区から挑みます。

井上力の“いまどきの県政”
2007年3月28日
県政まる見えに

以下は、きのうの知事定例会見の一部です。赤字は引用者。能登半島地震について、次のように述べた後、記者からの質問がありました。「B記者」が問うまで、被災者生活再建支援法という兵庫県がもっとも注意を払うべき問題は、記者会見に登場しません。

さらに村岡親子事件が、元県議にして宝塚市長であった渡部完がK某という政商からワイロを受け取っていたことが元になって発覚した事件であってみれば、この日、判決前に早々と記者会見を終えてしまって、この記者会見のなかに実刑判決を受けた神戸の汚職事件についてのコメントがないのは、誠に残念としか言いようがありません。

県政まる見えにする必要がますます高まっています。

 続きまして、「能登半島地震への人的支援について」です。

 新潟県中越地震の際も阪神・淡路大震災の復旧復興過程をぜひ参考にしていただきたいという意味で人を派遣して協力をしてきたわけですが、今回も先遣隊として東田防災監等3名を現地に派遣します。復旧復興過程の手順や課題、あるいは本県での対応ぶりなどを情報交換することによって能登半島地震への対応の参考にしていただこうという意味です。併せまして、私も明日、被災地を訪ねて現状を視察させていただくとともに本県の経験等を石川県の谷本知事にお話をさせていただこうと思います。

 
A記者:

 能登半島地震の関係ですが、知事が明日現地に行かれるとのことですが、石川県知事に対し、具体的に何を伝えようとされていますか。

知事:

 例えば、被災証明をいつ頃出すかということをとっても、我々の阪神・淡路大震災の時は、急に出さなければならないという事態になって慌てて対応したというように、全部手探りでやってきました。その経験を踏まえ、我々には被災後行った作業の一覧表がありますので、その一覧表を示しながら、こんな状況になればこんな仕事が発生するということを説明したいと思っています。そういう仕事リストがあるだけで、事前にいろんな準備ができますので、非常にスムーズな対応ができるのではと思います。中越地震の時も、3日後くらいに泉田新潟県知事にお目にかかり、そのようなアドバイスをさせていただきました。それと、県庁職員が書いた復旧・復興に関する本なども参考に持っていきたいと思います。

B記者:

 地震に関連して、被災者生活再建支援法改正に際しての附帯決議で、新年度は制度の改正が論議される年にあたると思うのですが、今回の地震がそれに与える影響というか、論議の方向性について、知事のお考えをお聞かせください。

知事:

 生活再建支援法の運用については、所得制限がバラバラであったり、支出の対象が限られていたりなどの問題があります。本県としては、独自に支援金に上乗せする対策を講じたりしているのですが、制度の見直しの中で、所得制限の引き上げや、対象の拡大、あるいはなかなか困難かもしれませんが、住宅再建の本体部分への充当というような点について、前に進むように是非働きかけていきたいと考えています。今回の被災状況がどの程度かということが関係すると思いますが、かなりの数の全壊・半壊件数であるとのことですので、そのような論議、検討の必要性を、白日の下にさらす効果はあるのではと思いますし、期待をしています。


井上力の“いまどきの県政”
2007年3月16日
大震災12年と2か月を経て

兵庫県被災者連絡会・事務局長の田中健吾さん(60)が亡くなり、お葬式は13日、○○葬儀委員長のもと行われました。当時は40代で、12年間、被災地を走り続けてきた一人でした。仏式では13回忌の今年、改めて大震災を思い出す出来事が次々起きます。

3月6日に吉田俊弘さんが次のような手紙を関係者に出してくださいました。Fさん「吉田さんから手紙いただきました。涙が止まりませんでした」。Kさん「ときおり、そのお孫さんの今後について報せてください」。Mさん「被災地に住んでいるというだけで、私は被災者じゃありません。身近なところに同じような境遇の方がいません。今後もぜひ発信を」など、たくさんの方々から感想やご意見をいただきました。

 春暖の候、皆さまにはいかがお過ごしでいらっしゃいますか。
 さて、本日筆をとりましたのは、「井上力後援会のしおり」が大変好評で、また事務所が開設されておりますことをお知らせしたいからです。

 またすでに多くの方々に、私が健康等の理由で身を退くことについてお知りおきいただいておりますが、なおご挨拶が不足している旨のご指摘もいただくところです。改めて私の心情をご理解いただきたいのです。

 先日、ある方のご葬儀を手伝いました。あの大震災で遺児となったお孫さんと暮らしてこられた方を見送るのは、とても辛いことでした。式場のそこここからすすり泣きが漏れました。被災地の何千、何万という辛い出来事のすべてを知っているわけではありませんし、人の死に軽重があるはずもありませんが、誠に悲しいお別れでした。人は、しかしどんな境遇にあっても大地に足を立てて歩み続けなければなりません。がれきのなかで母を送り、祖父母の手で成長したこのお孫さんが、祖父の死を乗りこえてたくましく歩んでほしいと思いました。また資力はありませんが、できる範囲ながら支えてあげたいと思いました。

 大震災から12年、ちょうど私が皆様方のご期待にお応えできなかった12年でもあります。12年間ずっと聞こえていた声は、「人間を人間らしく」という地鳴りのような声でした。このお葬式だけではありません。まじめに生きている者、ささやかな幸せを願っている者にこそ襲ってくる大きな災難。そんな災難に遇っても、それを「みんなの力」で克服できる灘区のまちや神戸をつくることが、私や私たちに与えられた使命でした。

 お通夜には井上さんも来て、「何とか、支えてあげたいです。一人じゃできませんが、吉田さん、力を合わせましょう」と言ってくれました。井上さんは、いつもそのように言います。「一人じゃ何もできない」と。でも井上さんが言い始めるといつの間にか彼はすでに走り出していて、いつの間にかできてしまうのです。太田さんの選挙もそうでした。神戸空港と格闘した20年間も、そうでした。

 井上さんは、「だれでも、どこでも、いつでも最高水準の医療を」とうったえています。

 患者が病院を選ぶのではなく、病院が患者を選ぶ時代が始まろうとしています。井上さんは医療格差、教育格差、そして「貧困」とたたかおうとしています。「一人じゃ何もできない」という井上さんが、走り出しました。その目で見てきた貧困や格差が原動力になっています。私がもう少しのところで届かなかった12年間を、井上さんが取り返してくれそうな気がしてきました。いや、そうなるように私も力いっぱいたたかいます。

 準備も進んでいます。ろっこう医療生協有志による応援体制も準備が始まっています。社民党が支持を決め、土井たか子さんが応援に入っていただく予定です。後援会事務所も、金沢病院玄関の向かい、かつて故・太田猛さんが事務所を開いておられた場所に、横山津多枝先生のご快諾をいただき開設し、私も常駐しています。どうか遊びにお越しください。

 「後援会のしおり」を同封いたしました。ご覧ください。
 時節柄、ご自愛ください。

   二〇〇七年三月六日

                 元県議会議員  吉田 俊弘

各位

 

 

 


井上力の“いまどきの県政”
2007年3月1日
知事の要望を支持しよう

井戸敏三・兵庫県知事は26日の記者会見で23日、同知事が麻生太郎・外務大臣に送った要望書について明らかにしました。
http://web.pref.hyogo.jp/contents/000063560.pdf

「戸籍のない者」に係る旅券の例外的発給について(要望)

 

 旅券事務につきましては、平素から格別のご助言を賜りお礼申し上げます。

 さて、本県旅券事務所に対して申請のありました戸籍のない女性の旅券発給申請の取り扱いについては、平成19年2月14日付け旅券第1366号で旅券事務所から照会をさせていただき、貴省より戸籍謄(抄)本のない場合の例外的な発給は認められない旨の回答をいただきました。

 しかしながら、日本国籍があることが明らかでありかつ本人確認が可能な場合については、人権の観点から出生証明書等をもって旅券の発給を受けることができるようにすべきであると考えます。

 つきましては、今後とも同様のケースが想定されるため、現在、民法第772条をめぐる議論が進められていることも承知していますが、外務省におかれても、今回のようなケースにおける旅券の例外的発給に向けた必要な措置を講じられるよう重ねて強く要望します。

 平成19年2月23日

 外務大臣  麻生 太郎 様

               兵庫県知事 井戸敏三

木曜コラム」でも紹介しました。国は戸籍法で戸籍に関する事務を市町村に、旅券発給事務を都道府県に、それぞれ地方自治法に規定する法定受託事務としています。

戸籍の代替機能があるとされる住民基本台帳に登録されているにもかかわらず、戸籍がなく、したがって旅券(パスポート)がない、したがって再入国許可が受けられない、したがって卒業旅行に参加できない。という問題を、井戸知事は「例外的発給」で解決しようと、いま果敢に要望したのです。

法改正も近そうです。


井上力の“いまどきの県政”
2007年1月27日
兵庫県民はもっと石垣観光を?

兵庫県は'06年度予算に3つの空港関連予算を計上しました。(1)コウノトリ但馬空港の利用促進として「空港活用イベント事業等」(2)神戸空港の利便性向上として「県内各地からのアクセス性向上等」(3)大阪国際空港の周辺整備として「緑地整備事業等」を掲げ、5億3千万円支出しています。

JALの路線再編で、伊丹=石垣便が廃止されることがけさの新聞で報じられました。すでに発表されていた神戸=石垣便の新設は、関西全域と石垣を結ぶ路線の増便ではなく、伊丹からの便を神戸からに振り替えることだったのです。搭乗率が比較的高い便を伊丹からはぎ取って、神戸や関空に移す一連の流れに合致しています。

すでにANAは11月、石垣と主要4都市との間を運行していた直行便を廃止し、那覇での乗り換え便に再編しています(八重山毎日新聞)。記事にある観光への影響がどうかという心配がその後どうだったのかは、不明です。

航空会社は神戸市との約束(一日10便の着陸)を守るため、結局、搭乗率の低い路線を廃止し、伊丹から搭乗率の高い便を着陸料の安い神戸にシフトさせたということのようです。

県内3空港は、県営(但馬コウノトリ)、神戸市営、国営伊丹と、経営主体が異なりますが、兵庫県はいずれにも責任を負っているので、今回の路線再編にどう意見を言い、それが県民の立場から見て良かったのか悪かったのか、表明するべきだと思います。

神戸=石垣便の搭乗率が伊丹から飛んでいる現状より良くなるためには、「県内各地からの(神戸への)アクセス性向上」が課題だとは、とても考えられません。バスの利用者低迷が開港以来、ずっと指摘されています。


井上力の“いまどきの県政”
2007年1月22日
フェニックス共済って?

兵庫県は阪神淡路大震災以後、共済制度が地震への備えになるという考え方を貫いてきました。「終の棲家」と考えて多くの人が、よもやもう一度「家を建てる」ことなど計画していなかったため、復旧・復興に手が着かなかったのです。だれしも途方に暮れました。火災保険は、「戦争と地震」が原因なら給付せず、1月17日の午後、あるいは夕方になって起きた火災にもカネは出ませんでした。

「税金で私有財産を資することなく」「地震保険でもなく」「強制加入を避けて」「したがって、固定資産税と一緒に市町が徴収せず」兵庫県がスタートさせた共済制度がフェニックス保険です。人々が抱く不安を解消するのは行政の仕事だと思いますが、不安が募る状況に「公費は出せない」とし、新制度が発足したのでした。

12年たって、いまその加入者は10万戸。県の人口は560万人。

兵庫県は19日、郵便局の窓口でこの保険を販売する契約を日本郵政公舎と結びました。「外務員に持ち歩いてもらう」のだそうです。「ノルマは良くないから目標を立てず」と言いますが「見通しも立てようがない」ようです。

年金制度への批判が高まり、しかもその背景には4〜5万円の年金で暮らす多くの高齢者の存在があり、健康保険も介護保険も「持続可能なものに」として給付削減と保険料値上げが続いています。社会保障制度への信頼回復が先なのに、不死鳥だフェニックスだ、掛け金だと言われても、県下市町はもちろん、他府県の賛同は得られませんでした。

さて、いかに「地震保険ではない」と言っても、天災に際して行政の支援が不十分だったことが明白になったあと、「県営保険を」という呼びかけに応じる人は、そう増えそうにありません。


井上力の“いまどきの県政”
2007年1月15日
医療についての古くて新しい政策

きのう、選挙をいっしょにたたかっていただく50人ほどの方々に集まっていただき、新年挨拶を兼ねた集会がありました。赤松徳治さん、中田作成さん、鳴海妥さん、吉田俊弘さんを代表委員とする「委員会」です。そこで「県政政策」をご了承いただきました。と言っても骨子だけですが、以下のとおりです。

「だれでもどこでもいつでも最高水準の医療を」・・・とても古い要求ですが、緊急で大切な、かつ新しい要求が柱です。

◇医療(予防・治療・リハビリ)の充実で健康づくり

・だれでもどこでもいつでも最高水準の医療を
・乳幼児の医療費助成を充実
・後期高齢者医療制度では県の責任を明確化
・難病患者への助成を拡充
・アスベスト健康被害に対する支援を強化

◇福祉の充実のため都市部にも県税を使う

・保育・介護の現場に人材確保・人材育成の助成拡大
・介護保険の保険料・利用料を引き下げ
・特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホームを大量建設
・障害者医療・障害者福祉の充実。小規模作業所を支援

◇格差を広げないために。労働行政を再構築

・大企業のリストラを規制し、正規雇用を増やす
・地域最低賃金を大幅に引き上げ

◇負担増を許さない

・庶民への増税、大企業への減税に反対。消費税増税反対
・県税増収に見合った県道整備と河川整備で市町の負担軽減
・国民健康保険、建設国保、介護保険への県助成

◇こどもたちに明るい未来を

・少人数学級・複数担任制を早期に実現
・高校での進路保障を充実。私学への助成拡充

◇脱開発、地球環境と都市の緑をまもる

・県民緑税は廃止
・産業廃棄物行政の情報開示
・環境を破壊する時代おくれの公共事業は中止
・神戸空港への県税たれ流しをやめる

◇平和憲法を生かし「命」たいせつに

・住民を戦争に巻き込む「国民保護」計画を抜本修正
・「非核神戸方式」を県内の港に広げる

◇県政を大そうじ

・政務調査費のすべてに領収書添付を義務づけ
・公募入札・一般競争入札で談合排除
・委員会傍聴制度を充実

◇道州制に反対し、自治を拡大

◇個性生かし、景観保全のまちづくりに補助充実

◇東南海・南海地震対策、津波対策を急ぐ

◇震災復興を再検証し、県民生活の再生を


井上力の“いまどきの県政”
2007年1月13日
上げ底と底上げの違い

神戸空港に市税を投入しないが、県税をたれ流している兵庫県の立場で言えば、神戸=たじま空港間の路線が開設できる以外に県民への説明は困難です。

そんなボランティア精神豊かな航空会社は当分、現れそうにありません。せめて、神戸空港利用者が当初の神戸市の需要予測を満たしてくれることを祈るばかりでしょう。

そこに神戸市が発表した「来館者」「438万人」という上げ底の数字。底上げをはかるのではなく、上げ底では困ったものだとお考えなのではないでしょうか。

本ページのタイトルと似ているのは着想の貧困そのものですが、「いまどきの神戸空港」をご覧ください。重複しますが、神戸空港の実体をグラフでご紹介します。


井上力の“いまどきの県政”
2007年1月3日
また出た!元県議の嫌疑

けさの新聞各紙は、元県議であり、2世議員にして所属派閥が巨大な末松信介・参議院議員の収支報告や資産報告が書き直されるであろうと、神戸では1めんで報じています。

カネを一定額以上もらってはいけないが、借りるのはいい。これが政治資金規正法なのだそうです。そう言えば自民党が銀行から借金をしていて、献金再開しかその返済の術がない、などと言われています。

「貸してもらうのはいい」と言うとき、「貸して・・・もらうのはいい」というのが実体でも、うまく間を置かずに言えるかどうかで、コンプライアンス(法令遵守)かそうでないかが分かれるのだそうです。

もっとも、秋から噂されているように、神戸市の震災復興事業がらみでガソリンスタンドの代替地を三田市内に得たのが、このカネを「渡した人」であることはすでに調べがついているそうです。行政の関与がいかなるものだったのか、煙は見えても火元を隠し通したのかどうか、なぜ兵庫県内のできごとが大阪地検なのか・・・。

神戸の産廃汚職発覚の火元は、元兵庫県議にして当時宝塚市長が逮捕されたことでした。また、「元県議」の嫌疑です。


井上力の“いまどきの県政”
2006年12月27日
ゆーとーり出せるゆとり

さすがにかつて長い間、「県内5空港」を標榜しただけのことはあります。地下鉄は県庁前を通っていても「市内交通網」だからと冷たくした県が、「県内・複数地域を結ぶ公共交通」ではなく、県外、それも遠く「北海道や東京、あるいは沖縄・石垣を結ぶ」神戸空港に、大盤振る舞いです。

神戸市長が歴代、「市税を投入しない」(市会決議)という約束に基づいて「県税を投入」し続けるのです。住民から見れば、市税も県税も同じです。市税は神戸空港に使わないけど、代わりに県税で神戸空港の維持費をまかなうのであれば、「県が市会決議を破る」がごときものです。

10年で27億円

もちろん、ゆとりがあってのことです。神戸市の「ゆーとーり」なのかどうかはわかりません。その額は神戸市みなと総局がだした管理収支計画では以下のとおりです。開港からの10年間だけで27億44百万円にのぼります。この先、'16年度以降がどうなるかは明らかにしていません。

兵庫県が「新千歳6便、東京12便、那覇5便、その他4便」(いまどきの神戸空港)に、どう魅力を感じているのか、不明です。

年度

'06

'07

'08

'09

'10

'11

'12

'13

'14

'15

補助額
(百万円)

158

209

227

251

299

199

266

332

386

417


井上力の“いまどきの県政”
2006年12月25日
ゴマンとあってはならない

さっそく兵庫県議会が注目を浴びて「情報開示」です。'02年のオンブズマンの調査によれば都道府県の議会政務調査費の透明度ランキング、兵庫県議会は堂々の4位、ちなみに政令都市で神戸市会はトップという、清潔・清楚・クリーンな議会活動が、行われているのです。4位と言っても点数は極めて低いです。

県議会:5万円以上の政務調査費に領収書 条例改正案を可決し閉会 /兵庫
 12月県議会は20日、41議案のうち39議案を可決し、閉会した。自民、ひょうご・県民連合、公明の与党3会派は同日、県議に支給される政務調査費のうち、5万円以上の支出に領収書の添付を義務付ける条例改正案を提出し、可決された。

 政務調査費は、県政に関する調査費用として、県議1人に月30万円、1会派に月20万円支給される。改正では、政務調査費を5万円以上支出した場合、領収書やチケットなどの添付を義務付け、情報公開の対象にする。ただし、これまで通り、事務所費や人件費、事務費は添付の必要がなく、個人情報や法人情報は情報公開の対象外。来年6月11日に施行される。

 政務調査費を巡っては、複数の県議がマイカーのローン代を調査用の車のリース代と偽って支出したり、無料講演会なのに講演会参加費名目で支出するなど、市民団体の調査で発覚した。

 共産党県議団は「5万円以上に限定し、事務所費なども除外すれば、支出総額の約9割が対象外になり、県民は納得しない」として、すべての領収書の添付を義務付ける条例改正案を提出したが否決された。【藤田剛】

〔神戸版〕

毎日新聞12月21日より

さらに情報公開度が高まった?というのが引用の記事にある条例改正です。「ゴマンとある」政務調査費の不正使用を何とかしようという兵庫県議会の決意です。

神戸市会のルールとの違いで言えば、あたかも神戸市会は「領収書の貼付必要なし」であるかのようですが、私たち(新社会党)は領収書のない支出をしません。「5万円」ルールが、「5万円未満は何に使ってもいい」と解釈されるなら困ったものです。

この種の条例は議員提案ですが、「(地方議員といえども)議員とカネ」の問題を明らかにしようと考えるているのは、だれでしょう。この種の条例案の提案者は議員ですが、発議者・本当の提案者は、住民です。

条例は一般に、住民の意向を汲んで議員が、あるいは住民の意向を汲んで知事が、あるいは住民の意向を汲んで市長が、提案します。これが本来です。しかし、建前と実際がかい離しているケースも少なくありません。

政務調査費は誕生のときから、かい離していたため「第2歳費」などと呼ばれています。いや歳費も、費用弁償も、常に検証し続け、主権者からよく見えるようにしておかなければなりません。

歳費・費用弁償・政務調査費の根拠は何か

歳費は生活給ではありません。年功序列でもありません。原点を探れば労働者が勤務先で受け取るべき月給の補てんでしょうが、専業議員が増え、歳費は特別公務員に対する「給与」となっています。支払者は市長です。予算審議を議会は行いますが、議会費については審議しません。神戸市会では非公開の代表者会に「身分に関すること」として委ねらています。

費用弁償は、「通勤手当」にあたるものと解釈されています。兵庫県は広く、昔は自宅以外に神戸市内に家を持っている議員が相当数いたそうです。またそれができる人しか当選しなかったそうです。香美町から県議会まで毎日通っている労働者はたぶんいませんから、「通勤手当」では不適切です。費用弁償額には根拠と基準が必要です。もっと広い北海道議会ではどうしているのか、若干興味がありますが、少なくとも一番費用のかかるケースを全体に当てはめることなど、ありえません。離島にも必ず代議員は必要です。

一方、政務調査費は、いわば出来高払いの調査費です。もともと沿革をたどれば知事・市長が調査を委託する形式で出発した議会が多かったそうです。すべてにわたって領収書の貼付は可能です。人件費でも、月給の領収証は珍しいかも知れませんが、源泉徴収票の写しなら可能です。

問題となった自動車のローンは論外として、議会へ出るためのマイカーは費用弁償に属し、調査のためのマイカーは神戸市会では認めないことになっています。調査のためとされる「市バス地下鉄・優待パス」も返上している議員が増えています。広い兵庫県で、公共交通のないところもあり、3月の条例改正でもマイカーに一定の支出可能の状態を続けることにしたことが、不十分と指摘され、今回の「ゴマン」ルールになったのでした。

以上は、私見を交えており、条例や要綱に詳細はありません。確かに厳密に表現することは、かえって混乱の元になる(例えば自宅で読む書籍は調査ではないか?など)ことも考えられますが、明文化した方がいいと私は考えています。この点では、県議会の政務調査費は「会派分・月額20万円」と「個人分・月額30万円」に別けられていて明白そうですが、これまた解釈によっては混乱の元です。

市会は内部組織?県議会は外部組織?

9月に兵庫県が行ったホームページの大更新で、県のトップページ上から教育委員会、県議会、県警などが消え、「関係機関」となりました。リンクされていますが、アドレスも内部組織と関係機関では別けられています。「県議会情報公開条例」もありますが、「まる見え」どころではありません。

神戸市ではこれらが「内部組織」扱いで、www.city.kobe.jpのあとに/をつけその後に数字のついたアドレスを割り当てています。「神戸市情報公開条例」に基づいて公開されていますが、これも「まる見え」ではありません。