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2017年2月13日に追加

損さっせん?「コンセッション」

けさ『神戸新聞』が報じたところでは、双日が降りて、だれしも考えていたとおり、神戸空港およびターミナルビルと駐車場の運営権を、2018年4月から42年間にわたって手にするのはオリックスグループ(関西エアポート、オリックス、およびバンシ)になるます。説明会には数十社、双日が「検討」して公正な入札を演出しました。

神戸空港は、その埋め立て経費も含め、借入金で建設し、その返済は着陸料等、空港を経営することで得る収入および剰余で返済することになっていました。

住民投票条例を否決するにあたって、'98年、市長と投票反対の与党は「市税投入せず」を約束しました。

約束は「守られてきました」が、運営権売却で、所有権を残したことによって、436億円の借金だけ神戸市に残り、オリックスが得る剰余の一部を報酬として神戸市が受け取り、借金の返済の一部に充てることになります。なお、42年後も借金は残ります。

10年で累積損30億円(他に県の補助金30億円と交付税40億円)と私は言ってきましたが、その原因は「市債償還費」にあります。借金返済を棚上げできれば、破たんを先送りできるというわけです。コンセッションは運営会社に「損さっせん」というわけです。

けさの『おはよう新社会党です』に次のように書きました。

「神戸空港に異議あり」とうったえ続けた中田作成さんが亡くなって26日で1年、神戸空港の開港から16日で11年です。今年も抗議集会を超党派で開きます。(16日12時15分・市役所前)

神戸市はコンセッション(公設民営の一種)で来年度から42年間の運営権を売却します。滑走路だけではどうしようもありませんからターミナルビルと駐車場付きです。毎年4億円の報酬を市が受け取るPFIと言われる民営化です。最初だけでもうまく行けば水道事業への営利企業の参入につなげたいという構想を安倍政権は持っています。

空港建設でできた借金は市の借金で、もちろん運営会社に債務返済の義務はなく、市債の返済は42年間以上にわたる市民の義務となります。

新社会党はPFIで失敗事例が続発していることや、舞子ビラ信託・民営化の大失敗の反省もせず、その教訓はちっとも活かされていないと指摘しています。バブル期の土地信託は巨額の信託報酬を自治体に約束した銀行が約束を果たせず、各地で悲惨な結果に終わりました。

リニア新幹線の延伸や伊丹の存廃など、視界は不透明なことだらけです。


2015年6月4日に追加

「累積損」は30億円

 

元のデータ

「神戸市」→「くらしの情報」→「神戸空港」→「アーカイブス」→「財政計画」→「神戸空港管理収支の見通しと決算値の対比について」

市のホームページに掲載されたのが3月24日です。'14年度は決算見込み。'15年度は予算。着陸料や土地使用料など1億3,700万円のスカイマークの滞納は、羽田には払ったと報道されましたが、神戸にはこの先も含めてどうなんでしょう?

「雑入」は、10年間ずっとあります。'14年度決算と'15年度予算は、着陸料収入より多くなっています。着陸料、停留料そして土地使用料を合わせた額より上回りそうです。みなと総局の新都市整備事業会計、つまり他会計からの繰り入れ(流用)です。

2年度目('07年度)〜'09年度の雑入は欄外にあるように(他会計からではない)繰越金が含まれています。4年度目('09年度)の雑入は繰越金が56百万円と、基金からの繰り入れが177百万円です。5年度目('10年度)の雑入は442百万円すべてが基金、6年度目('11年度)は基金が底をつくまで使って基金からが186百万円と繰入金(流用)309百万円を合わせ、雑入は495百万円。

以上、欄外に書かれていることを表に書き込むと以下のようになります。雑入などを除いた「本来の」収入と、「損益」「累積損益」を計算しました。そのグラフが最初に紹介したグラフです。また、収入の「県補助金」「地方交付税」について、グラフにしました。

タイトルを「累積損30億円」としましたが、神戸空港運用(10年)の決算は、「雑入の累計≒累積損益」30億円+「県補助金」30億円+「地方交付税≒市一般会計からの繰り入れ」40億円で、あわせて100億円の赤字運営でした。毎年10億円です。累積損が出始めたのは'11年度であり、それ以降わずか5年で100億円とも言えます。「臨海土地造成事業」=「空港島全体の造成費用と売却の収支」とは、まったく別です。

 表の単位は百万円です。グラフの単位は億円です。

年度 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15
収入 1,493 1,554 1,599 1,727 1,964 2,183 2,383 2,499 2,635 2,883
雑入 74 15 149 233 442 495 529 579 804 795
前年繰越金   14 149 56            
基金より       177 442 186        
(本来)収入 1,493 1,539 1,450 1,494 1,522 1,688 1,854 1,920 1,831 2,088
支出 1,015 1,255 1,426 1,727 1,964 2,183 2,383 2,499 2,635 2,883
損益 478 284 24 -233 -442 -495 -529 -579 -804 -795
累積損益 478 762 786 553 111 -384 -913 -1,492 -2,294 -3,089

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

地方交付税も県補助金も、「ある」ものが「配られている」のではなく、かなりの部分が財源対策債などの市債や県債です。

なお、「10年」という年月は、滑走路に投入された国費=国庫補助金が返還を求められなくなる年月です。つまり廃港にしても248億円の「国庫支出金」を返還しなくてよい期間に入ります。

運営権「売却」よりも先に検討すべき市民的課題です。


2015年2月16日に追加

「累積損」は21億円

けさのチラシに載せたグラフです。データは神戸市

「損益」も「累積損益」も、水道や市バスの会計では強調されますが、空港の会計にはその表現がありません。新都市整備事業会計の内部留保資金から「借り入れ」ています。

けさの『おはよう新社会党です』には、次のように書きました。

空港の収支は、独立採算でも企業会計でもありません。県の補助金4億円と福祉に使っても教育に使ってもいい交付税6億円を投入しても、なお8億円の赤字です。年度末には「累積損益」が21億円を超えます。

35万人の署名で市民があれほど心配した埋め立て開始から16年。市民の暮らしを蝕む神戸空港はいっときも早く廃港に。

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2015年2月14日に追加

神戸空港の破たん

きのうの『朝日』大阪版の夕刊は、神戸空港の破たん問題でした。

運営権売却の「先行き不透明」をまとめた後段の部分に「負債」が231億円とあります。空港整備事業費は594億円、起債は267億円で、国庫補助金は248億円などでした。ややこしいのですが臨海部土地造成事業費2,780億円など空港島総体と滑走路は切り離して考えることはできません。

開港の際に、就航便ほしさに空港条例と規則で着陸料の安売りをしたのと同じことが、「運営権売却」でも起きそうです。

閉店前の大安売り!ダイエーを思い出します。


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2015年2月9日に追加

通常ないこと が あった

けさの『おはよう新社会党です』に、スカイマークの破たんと神戸空港というタイトルで(実質、第2回)次のように書きました。先週、「神戸市への滞納はないそうです」と書いたことへの訂正・おわび(なんで、詫びなきゃならないか!)でもあります。

★西久保・前社長は3割の大株主でしたが、保有株の7割(同社株の2割)を売却しました。インテグラル・佐山展生氏のツイッター(は、以下)

 

佐山展生氏はファンドのインテグラルの代表者の一人です。90億円をスカイに貸し付け、神戸市などへの滞納を払うとしたファンドです。

西久保慎一・前社長は、スカイマークに「ポケットマネーから」7億を貸していることが債権者説明会で公表されていました。極めておおざっぱに計算してみたら30円×2千万株=6億円ですから、「返してもらった」つもりなのかもしれません。

ストックオプションを乱発して、労働者(従業員?社員?)を株主にしてきた経過からして、本来は労働債権として最優先に保護されるべき「紙くず」の値段が下がるであろうことが予見できるのに、前社長が株を売ったのです。それとも社員は内部情報を入手して、もっと高い値段のうちに売っていたのでしょうか。スカイ社と前社長にはモラルのかけらもありません。

本来なら神戸市が、入札参加を禁止する、空港への乗り入れや滑走路を使って営利活動をすることを、即日、無期限に禁止すべきではないでしょうか。・・・と言っても、格納庫に差し押さえの紙を貼りに行く勇気も資格も、いまの神戸市長にはなさそうです。市と市民が利益を共有しているのではなく、スカイ社と神戸市が運命共同体なのです。

当初予算に盛り込まれる運営権売却のための「空港資産評価」2億円、「市税を投入しない」という市会決議に反し、市税を選りに選ってこんな所に使うとは。

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2015年2月5日に追加

神戸空港 累積損失22億円

きのうスカイマークが債権者説明会を開いたそうです。債権者は510にのぼるそうです。

下に引用した2つの表。(上)は神戸新聞より。

『神戸新聞』5日より

スカイマークの負債総額は711億円。エアバスの違約金は含まれていません。神戸市への滞納は2か月分だそうですが1億3,329万円です。空港への直接の滞納は94百万円。

(下)は、神戸市の空港管理収支の見通し(開港から10年分)と、その見直し(青色斜体字)、これは2014年予算に相当するものです。

神戸市ホームページより

(下)の表にある着陸料+停留料+土地使用料は7億12百万円。支出は26億35百万円。この会計は計算上の地方交付税5億9千万円+県補助金4億円+雑入等8億円で成り立っています。支出項目に減価償却費はありません。駐車場とベイシャトルも含め、どんぶり勘定です。いや正確には「官庁会計」。「ベイ・シャトルをご利用のお客様は、神戸側専用駐車場がご旅行期間中何泊でも無料です。 片道のご乗船でもOKです! 」など。

雑入は、新都市整備事業会計からの借入金で、すでに累計は20億円を超えました。スカイマークを再生するため滞納などを棒引きにすると今年度の借入金(官庁会計用語では流用と言います)は10億円に達しそうです。累計は22億円でしょうか。

新年度予算に盛り込まれるそうですが、神戸空港は3空港一体運用のために運用権を売却する方針をすでに打ち出しています。けさの『神戸新聞』は、その新関空(関空+伊丹)の一次入札が、期限を延長せざるを得なくなったと報じています。

「途中で契約解除できるように」条件を変更するそうです。自治体が痛い目に遭った土地信託の二の舞が早くも始まりました。

神戸空港の運営権売却の条件を検討するそうですが、県の補助金、地方交付税(晴れて市補助金と名乗ることになります)、航空機燃料譲与税(同じく国の補助金)・・・、新都市整備事業会計からの補助金は?・・・他に何をつけると売れるのでしょう?駐車場、さらに周りの土地・・・?ポートライナー?地下鉄山手線?まさか、まさかですが。

こういうとき、寅さんは「持ってけドロボー」と演じていたのですが・・・。

神戸空港は廃港に。

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2015年1月29日に追加

スカイの破たんと神戸空港

神戸空港の生い立ちと歴史および現状において、それと不可分な関係にあるスカイマーク(以下スカイ)が、一昨日28日、民事再生という破たんを表明しました。きのう新社長が記者会見を行ったことや、神戸市長のコメントを神戸新聞が報じています。新社長「神戸にはウチの格納庫がある」(・・・ウチって今から借金を棒引きにする交渉があなたの最大の仕事なんですが・・・)。神戸市長「引き続き、役割を果たしていただきたい」

同社の発足は阪神大震災直後、羽田−福岡間に初めて就航したのは'98年でした。'96年末に行われた設置許可申請に関わる公聴会には同社は登場するはずもありませんでした。ほどなく経営危機に陥り、これを救済したのが西久保慎一・前社長でした。

神戸空港は'99年に埋め立てを始めてしまいましたが、陸地がどんどんできあがっても就航の計画はなかなか発表されません。運輸省(当時)航空局は「神戸市営の航空会社を持てるなら別だが、就航便は数便程度」としながらも、「小泉構造改革」下のスカイは羽田の割り当てを得ます。スカイが神戸空港に就航することを表明したのはANA、JALに先立つこと1年強、'03年10月でした。JAS(東亜国内航空)は'03年末にその名がすべての空港から消えました。大手2社の神戸就航表明は'04年12月でした。「改革」路線の神戸市幹部と神戸の「官財界」が国を動かし、スカイを救済し、スカイが神戸空港を救済したのでした。

'05年からは「スカイマーク・スタジアム」の命名権を買い取り、神戸市と同社の関係は強まりました。東証一部上場企業('13年、マザーズから)となり、社員2千人の大企業へと成長したのは'06年の神戸開港からの6〜7年の短い期間のできごとでした。'09年11月、日航の神戸からの完全撤退表明などもスカイを上昇気流に乗せました。

破たんの原因は、3点です。

LCCを大手2社と海外航空会社が仕掛け、新関空がLCCを優遇したこと。得意としていたはずの燃料の先物取引がとんでもない裏目にでたこと。そしてA300の購入計画と国際路線への参入計画です。金融資本の融資を受けないやり方が潰されたという一面も見逃せません。

きのう発表されたスカイの「運休」で神戸空港の一日便数は27往復便となります。7割を占めていたスカイ便は18便、なお3分の2(66.7%)を占めます。3便のうち2便は那覇と新千歳で、あしたが最終便となります。

上の「1月のフライト情報」から、2月はスカイが消え、夜の米子便が消えました。共同運航便をどうするかという交渉も、進行中のようです。いろいろ思惑があり、それが色濃く反映された「運休」の決定です。

労働者に責任を押しつけ、クビ切りが打ち出されるのは必至です。ユニオンに相談してほしい。兵庫ユニオンへ。

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2015年1月19日に追加

搭乗率(利用率)58%に

けさの『おはよう新社会党です』は、久しぶりに神戸空港問題でした。次のとおりです。上のグラフは次号以降の『おはよう』に。

神戸空港が、3度目の危機を迎えています。

12月の利用率(搭乗率)は58%まで激減しました。

一日30便のうち7割を占めるスカイマーク便は値上げで55%に。全社で8月には80%もあった搭乗率が12月には54.5%に激減。「安売りのダイエー」がその姿を消してしまったことと二重写しになります。人件費比率が低い空運業は便数を減らしても、経営改善につながらない特性があります。資金援助ではなく、JAL、ANA2社との共同運行(コードシェア)の合意をしたそうです(スカイマークは否定)。

神戸空港の最初の危機はJALの撤退でした。2度目の危機は新関空の発足によるLCC(ローコストキャリア)優遇と誘致策でした。これらは今も解決されていません。

今年度は新都市整備事業会計から空港に8億円がつぎ込まれます。搭乗率が直接、空港の収支を圧迫するものではありませんが、大ピンチです。

開港前から「神戸市営航空会社」がないとダメだと運輸省(当時)は指摘していました。2月16日、開港9年・抗議集会です。

     


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バックナンバー4へ JAL倒産と神戸空港(〜'10年10月)
バックナンバー3へ 開港から自民党政権崩壊('09年8月)まで
バックナンバー2へ 2003年から開港('06年2月)まで
バックナンバー1へ 2000年2月から2002年末まで

タイトル

更新(追加)日

 

とうとう(運営権)売りますか

2012年8月6日

 

危機のポイント/羽田便の低迷

2012年7月11日

 

新自由主義政策としての経営統合

2012年6月12日

 

羽田便4月の利用者数は最低を記録

2012年5月15日

 

羽田便は2年連続100万人割れ

2012年3月12日

 

廃港しかない

2012年2月28日

 

市民に債権放棄せまる

2012年2月14日

海上アクセス
民事再生へ

ピーチは3月から

2012年1月13日

 

スカイのシェア2割→7割

2011年12月12日

11月13日に一部書き換え

ここにも国策民営

2011年11月2日

 

つづく深刻な危機 

2011年10月11日

11月14日に一部加筆

成長神話、無謬神話そして安全神話

2011年9月12日

 

動画・いまどきの神戸空港

2011年3月18日

 

目標の5割は可能

2011年3月8日

 

開港5年

2011年2月17日

 

年間乗客/計画達成率は55%

2011年2月7日

 

きょうの井上力に関連データアップ

2011年2月3日

 

乗客減 半年で止まる

2011年1月13日

 

関空は解体販売そして伊丹は民営化

2010年12月10日

 

利用者減少6か月連続

2010年12月9日

 

カネは出した。口は出せない

2010年11月25日

 

減る方さえ数えなければ・・・

2010年11月6日

 

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2012年8月6日に追加

とうとう(運営権)売りますか

つくった商品に高い値がつくということは、商品生産者にとって、喜ばしいことでした。

自治体がつくったモノは、「市民の利便のため」とか「市民の要望に応えて」だったはずで、売るためにつくったモノではありません。ところが「運営権の売却ができる」と言いだし、「高く売れる方がいい」という見解があります。運営権を売るために自治体はハコモノを造るという本末転倒。加えてグロ―バル時代の商品価格の変動と製造・販売・収益の関係への無知・無理解。

きのう、このページを更新したとき、見出しを「企業価値高まる=売値が上がる」としていました。それは以上のような理由からですが、余り適切ではないので、変更しました。「とうとう(運営権)売りますか」というのも、あまり適切ではありませんが。

一番下に載せたグラフの元のデータは以下のとおりです。

http://www.kksk.jp/php/public_file/files/017.pdfなどより。'11年度のデータは国交省の速報値から。あまりに悲惨なのでグラフは「国内線計」を省略していますが、'04年の「大阪・国内線」より、'11年の「国内線計」が少ないのが象徴的です。

関西3空港 利用者数の変遷(年度)

   
年度
関西・国内線
大阪・国内線
神戸
国内線計
総計

 

'94 '95 '96 '97 '98 '99
4,535,867 7,939,543 8,294,721 8,236,190 7,846,914 8,190,409
15,463,121 12,797,605 13,188,653 13,821,751 15,115,789 16,244,965
           
19,998,988 20,737,148 21,483,374 22,057,941 22,962,703 24,435,374
26,704,988 30,106,174 32,423,486 33,329,891 34,399,681 36,260,525

 

年度
関西・国内線
大阪・国内線
神戸
国内線計
総計

 

'00 '01 '02 '03 '04 '05
7,723,494 7,772,612 6,479,210 5,181,053 4,178,422 5,289,063
16,234,900 17,021,453 18,060,768 18,862,551 19,484,024 18,519,027
          354,146
23,958,394 24,794,065 24,539,978 24,043,604 23,662,446 24,162,236
36,811,167 35,774,257 35,016,742 32,584,285 34,824,999 35,301,572

 

年度
関西・国内線
大阪・国内線
神戸
国内線計
総計
'06 '07 '08 '09 '10 '11
5,460,214 5,683,930 5,221,565 3,944,217 3,773,798 3,748,720
16,842,868 15,937,494 15,382,431 14,606,951 14,192,982 12,909,395
2,738,143 2,972,212 2,576,726 2,335,407 2,215,092 2,565,405
25,041,225 24,593,636 23,180,722 20,886,575 20,181,872 19,223,520
36,270,967 35,604,627 33,291,923 30,458,306 30,590,071 29,048,861
 
 
は最大
 
 
は最小

以上8月7日に追加

関空「再」民営化=国有化法と呼ぶべきか、関空・伊丹統合法。4月1日に施行された「関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律」を「・・・を改正する法律」にしようと井戸敏三・兵庫県知事が言い出したようです。株式会社神戸空港を今からつくり、運営権を売却(コンセッション)する際、売却する権利のなかに神戸空港の運営権も一緒にして、念願の「3空港一体運用」をするべきだ、と。

100%政府持ち株会社となった新関空を定めたこの法律は、「地方公共団体等の協力」という珍しい一条を持っています。

「第五条  関係地方公共団体その他の関係者は、新関西国際空港株式会社が行う両空港の一体的かつ効率的な設置及び管理と相まって、両空港の適切かつ有効な活用を通じた関西における航空輸送需要の拡大に資するため、両空港の利用の促進及び利用者の利便の確保を図るために必要な措置を相互に連携を図りながら協力しつつ実施するよう努めなければならない。」

騒音対策を求めたり利用時間の制約を求めたりしてはならない、とは書いてありませんが、「資するため」とか「図るため」とか「連携を図りながら協力しつつ」・・・。お決まりの「関係地方公共団体等の責務」「国民の責務」となっていないだけで、それ以上も以下も、何もありません。ただし、ベイシャトルの廃業は、これでできなくなりました。2期工事完成後の関空の面倒を、関係地方公共団体は見なさいよ、ですか?

滑走路に国費が250億円投入された神戸空港を売却(民営化)することは適法なのでしょうか。自治体が出資した関西空港を国有化し、運営権を売却できると国会が決めたくらいだから「できる」というのが知事の解釈でしょう。新自由主義は投資を極限まで自由にし、「公の施設」も公有水面も公道でさえも、資本の餌食にできるシステムです。航空保安施設やボーディングブリッジの更新など、市税を投入するほかなくなった「設置と管理」経費を神戸市は出せなくなっているというのが知事の分析です。「毎年、何億も県が出してやっている。県も重荷だ」・・・

さて井戸知事の「提案」は、2度報道されました。

1回目は毎日新聞の6月15日で、「神戸市と共同で神戸空港の運用会社を作り、将来的に関西国際空港と大阪(伊丹)空港を一体運用する新関西国際空港会社との経営統合を図りたいとの私見」でした。

http://mainichi.jp/area/news/20120615ddn008020025000c.html

2回目は毎日新聞7月31日付で「神戸市と兵庫県が市営の神戸空港について、運営権売却(コンセッション)の検討を始めた」「香川賢次・神戸市空港事業室長は『市と県の方向性は一致している』と話した」という報道です。

http://mainichi.jp/area/news/20120731ddn002010019000c.html

8月3日に商工会議所や神戸市がつくる「21世紀神戸空港活用促進協議会」が開催され、商工会議所会頭は「24時間運用可能」の神戸空港を「含めれば」(新関空の)「企業価値が高まる」と「統合への期待感を示した」と神戸新聞が報じました。

http://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/0005265913.shtml

あらためて関西に3つの空港、5本の滑走路は必要なのでしょうか。

伊丹を廃港にするのは、ずいぶん先の話です。2045年大阪へというJR東海の計画がナンボのものかは別として、飛行機やオスプレイじゃあるまいし、2027年の名古屋開業より先に大阪までリニアが来るはずはありません。知事は「この狭い国にリニアは要らない」と言っていたのに改宗です。

あらためて関西に3つの空港は、不要です。グラフをご覧ください。今年、今年度は、やや持ち直しているそうですが、関西の航空需要は天井知らずという説は、古い説で、珍説となっただけでなく、原発と同じくらいウソになりました。ウソは上塗りが必要ですからLCCに貧困化時代の移動手段として脚光を浴びせています。

グラフは関空と伊丹の争奪戦のあと、両者とも利用者を減らし、神戸の実質開港初年度'06年度だけ総利用者数は増えましたが、また減り続けて昨年の東日本大震災だったということを示しています。

'94年9月が関空開港、「順調に」国内線関空便が伊丹へシフトし、'01年9月が大規模テロ、'03年3月がイラク戦争開戦と5月に大規模戦闘終結宣言、神戸開港は'06年2月(グラフは年度)、リーマンショックが'08年9月、日航の神戸撤退は'10年5月末です。

利用者が増えても減っても、関空の1兆円と神戸空港の2千億円は、焦げついたままです。

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2012年7月11日に追加

危機のポイント/羽田便の低迷

神戸空港の利用状況が公表されました。「前年同月比8.9%減の177,273人」「ピーチに押され」「九州路線低迷」「搭乗率60%を切る。4年5か月ぶりのこと」などと報じられています。

市長の「大阪の道(都構想法案)歩まない」(「神戸市を解体しない」)という記者会見と同じ日になり、地元紙もさらりと報じています。

LCC(ローコストキャリア)ではない、LCC商法の創始者であるスカイマークの今後が注目されます。ボーディングブリッジなどの使用料の割引要求など直接、神戸空港の経営成績に反映されます。経営統合を控えた昨年度の「関西3空港」トータルの利用者数が3千万人を初めて割り込んだなか、関西圏の航空政策という点でも、日本の航空政策とりわけ空港整備計画という点でも、「これまでどおりではやっていけない」ことが明らかになりました。新関空の発足は航空ビッグバンへの遅れた対応でもありますが、本質は「破たん処理」です。早くも二次破たんの心配の声が上がっています。

電機量販店の躍進が名だたる電機メーカーを駆逐するという、古い経済学では解明できない出来事がおきています。「もっと古い」経済学が指し示していた「収奪者が収奪される」という本質が衣装をまとわず大手を振って現象として現れ始めました。

神戸空港について言えば、LCCの影響もあります(関空−新千歳のピーチやLCC参入にともなう価格切り下げ競争)が、このページで重ねて指摘してきたように羽田便の利用者低迷が、危機のポイントです。「日航撤退・日航再生に見る神戸空港問題」は、何も解決されていま せん。大間違いを8月6日に訂正。1文字を2文字に

6月も、羽田便の利用者数http://www.city.kobe.lg.jp/life/access/airport/img/HP24.06.pdfは、開港以来の最低を記録しました。データは神戸市より。グラフにしました。

  4月 5月 6月
06年 109,678 112,243 100,033
07年 116,727 122,819 115,109
08年 111,345 106,444 92,426
09年 78,366 85,374 85,175
10年 63,864 70,151 68,939
11年 61,753 70,777 66,654
12年 60,999 70,070 64,852

今年/最大

52.3% 57.1% 56.3%
 

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2012年6月12日に追加

新自由主義の極み!関空伊丹経営統合

関空・伊丹の経営統合(7月1日)まで3週間を切りました。前世紀末の大銀行を源とする巨大企業の「再生」(新自由主義改革)が、東京電力と関西空港という2つの舞台で繰り広げられています。交通分野では日航に続く「再生」で、これは国鉄分割民営化に遡ります。

大内裕和教授から先日、橋下(大阪維新の会)政治の背景とその行き着く先についての講演を聞きました。関空には触れておられませんでしたが、新自由主義・大量失業時代の引き金を引いたのはプラザ合意だったと。ちょっとおおざっぱですが、出来事を下に並べてみました。

1984年10月1日 関西国際空港株式会社設立
1985年9月22日 プラザ合意(瞬く間に、円が対ドルで2倍に急騰)
1987年 着工(バブルのアクセル全開) 国鉄の分割民営化も(4月1日)
1989年4月1日 消費税  / 法人税や所得税の減税
       バブル崩壊/超低金利時代/デフレ・内需の低迷/低成長
1994年9月4日 開港
1999年7月 2期工事着工
       政府補給金を毎年90億円投入へ  2012年度は65億円
       航空ビッグバン、LCCの登場、専用ターミナル建設へ
2012年7月 大阪国際空港と経営統合(基本方針に「伊丹廃港の検討」)
  2期工事完成

関空に出資した関西の自治体は様々な対応をしています。「伊丹廃港の検討」には、「利用者の利便を第一に考えて」という脳天気なコメントも、「11市協解散だ」という反応もあります。「伊丹を補完する地方空港」である神戸空港は、伊丹空港という国内基幹空港がなくなれば、それに取って代わるのか、それとも一緒に消えるのか。

「複眼の日本」とか「分散型国土の形成」(87年四全総、88年法律)と謳って、関空をつくれば関西経済は首都圏を凌ぐものになる、出資する自治体も儲かる、あとあとの税収を確保できると、ケインズの信奉者のようなフリをして民営関空が税金をごっそりと使い切ってしまった果てに、このありさまです。

「関西の航空需要が少ないのは、空港が伊丹一つだけだから」「関空と伊丹だけでは関西の航空需要に応えられない」と建設されたのが神戸空港でした。ケインズか新自由主義かと聞けば両者のいいところを併せ持つ?などと。羽田便の黒字が他の地方路線の赤字を埋めるなどと、ちょうど原発のようなことを言って。

*** * ***

神戸空港の利用者数で大きなシェアを持ってきた羽田便に異変があることを、先月と先々月、指摘しました。これは建設当初の思惑とはまったく異なるものです。5月の実績を加えてグラフにしました。

*** * ***

ANAは、岩国への12月就航を決めました。岩国市民にはそれをアメと受け取れと言い、ときを置かず米軍輸送機MV22オスプレイの組み立てと試験飛行を岩国で受け入れてほしいと防衛副大臣。

井原勝介さん(前岩国市長)はブログできのう、次のように書いておられます。

 岩国で試験飛行を行ったうえで、沖縄普天間に配備するとされているが、そもそも沖縄が簡単にイエスというはずはなく、岩国への「搬入」が、「一時駐機」になり、さらに事実上の「移駐」になってそのまま居座る可能性が非常に強い。甘いことを言っている場合でないことは明らか。
 私が市長在職中に、国と県が一緒になって民間空港を餌に空母艦載機の容認を露骨に迫ってきたことをよく覚えている。また、民間空港との裏取引で愛宕山の売却が行われたことも、岩国市の公式文書で明らかになっている。そして、今回のオスプレイ。すべて、民間空港に絡まっている。

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2012年5月15日に追加

羽田便4月の利用者数は開港以来の最低

神戸空港の利用者数が回復の兆しを見せるなか、羽田便の低迷について、前回触れました。先日発表された4月一か月間の利用者数は、開港以来の最低を記録しました。

ところで情報とは、政府にとって隠すことで意味を持つものであるのと同時に、リークすることによって大きな意味を持つものでもあります。

7月に迫る関空・伊丹の統合に関連して「伊丹廃港の検討」が「両空港の運営に関する基本方針素案」に。「リーク」とは言っても国交省の成長戦略会議報告書では、リニア新幹線の開通に伴い、廃港を検討することが盛り込まれていました。「運営権売却」は表向きの話で、実は「伊丹の地主」をちらつかせる必要があるのです。

リニア新幹線が1964年の新幹線開業とその前後の高度経済成長に匹敵する成功をもたらし、経済成長の号砲となり、またその象徴たり得るか?あるいは、その輸出が、東京=名古屋間の開通と同時に始まって、日本に海外から莫大な利潤をもたらすことになるか?

兵庫県知事はきのうの記者会見で、大阪延伸とリニアそのものに否定的な見解を表明し、それ故、伊丹廃港を素案に盛り込むことに反対を表明しています。(記者会見のテキスト版


2012年3月12日に追加

羽田便は2年連続100万人割れ

週末、神戸空港の2月「利用状況」が発表されました。

昨年まで3年連続して減少しましたが、3年前('08年度)の利用者数ちかくまで回復しそうです。

ジャンボがいずれ就航するとされ、次に新幹線より速い・安いとされ、そして今は早朝深夜便が可能な、運用時間の拡大を神戸市が国に要求している理由は、もっぱら羽田便の利用者増をめざしているからです。

羽田便の利用者数はギリギリ昨年度並みへ届きそうです(2月までの前年同時期比100.4%)。1か月あたりで6〜7万人。片道3万人台、1日あたり1,000人ちょっとです。孫の好きな新幹線N700系の1編成の定員は1,323人です。・・・これは孫に「わあ、ジイは物知り」と言われたくて調べたのですが・・・新幹線を(往復)貸し切りで1編成分(16両)が神戸空港の羽田便ということです。なお、孫はお風呂で10まで言えますが、数の認識はないようです。とても1,323人定員だということを認識するのは不可能なようです。またN700に次いで飛行機も大好きです。

神戸空港の羽田便/年間利用者数('11年度は2月まで)

 

'06

'07

'08

'09

'10

'11

利用者数

1,296,690

1,480,209

1,150,739

1,038,262

833,225

773,101

提供座席数

1,896,968

2,059,178

1,566,465

1,387,105

1,053,569

1,004,001

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2012年2月28日に追加

廃港しかない

きのうの『おはよう新社会党です』703号(阪神岩屋駅前で配布、および週刊新社会に折り込み)は、県と市の予算の特徴についてでした。見出しは「空港は毎日200万円の赤字」です。200万円という数字は新都市整備事業会計からの753百万円÷365日の概算です。本当は「一日400万円」が正確です。県補助金と、本来何に使ってもいい地方交付税が昨年度7億円、本年度8億円、来年度9億円、開港10年目は10億円・・・。

開港の時点で神戸市が発表した管理収支の'12年度の欄は次のようになっていました。着陸料が17億円どころか'10年度は6億円まで下がり、市債償還費は上のグラフのように再来年度をピークに上がり続けます。ほぼ10億円ほど穴があいている状態です。県補助金や地方交付税からとは別に、毎年2億円ほど支出をきりつめ、8億円ほど親会社から融通してもらうという赤字企業になっているのです。赤字企業なら潰せばいいのですが、独立していないので自主廃業も民事再生もできません。

単位:百万円  
  当初計画
着陸料 1,701
停留料 26
土地使用料 41
地方交付税 546
県補助金 266
航空機燃料譲与税 226
雑入等 1
収入合計(A) 2,807
   
管理経費等 739
消費税 70
市債償還費 1,847
予備費 10
支出合計(B) 2,666
   
(A)−(B) 141

見通しですが、すでに一日30便と発着制限枠いっぱいですから、着陸料収入が増える可能性はありません。

報道で「独立採算にほど遠い」と書かれていました(『毎日』だったか)が、複雑な資金の流れは下記のようになっています。スマホからではとても読み取れない画像になってしまいました。粟原富夫市議の監修を経てカラーにする予定です。

★新都市整備事業会計の「新都市整備事業基金」を「繰り替え」空港整備事業会計へ(3回)

125億89百万円 (50年元利均等)

★新都市整備事業会計から空港整備事業会計へ貸付(建設時に5回) ターミナルビル等

52億17百万円 (20年後:2020年から一括償還)

★開港後、今年で2度目となる新都市整備事業会計から空港整備事業会計への貸付。この返済計画はありません。

'11年度 4億(未決算)
'12年度7億53百万円

空港整備事業会計からの市債償還は、この他に'11年度16億54百万円などで、ピークは'14年度の20億54百万円とされますが・・・近くボーディングブリッジの更新などが加わり毎年、新たな市債を発行します。

以上、主なデータは5年前の外部監査資料より。

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2012年2月14日に追加

市民に債権放棄せまる

あさって神戸空港は開港6年を迎えます。いまどきの神戸空港は、ベイシャトル(海上アクセス)をはじめとした外郭団体のリ・ストラクチャーで揺れています。市民に多額の債権放棄を迫る大問題ですが、「あり方検討委員会」は昨年12月27日、「意見書」を決定しました。『神戸新聞』が日曜日から連載を始めています。

本業の収益は427,858千円で、その費用は651,757千円('09=平成21年度)。ベイシャトルが黒字になる可能性はありません。市有地を借りて駐車場として貸し、こちらは191,636千円の費用で487,521千円の収益を上げています。市の補助金145,541千円を入れた上で黒字なのだそうです。(昨年3月の監査報告より)

意見書は、それでも事業継続が可能で、債務整理を民事再生でやるべきだとしています。「市三セク/航路事業だけでは赤字/自立経営波高く」という報道は、神戸新聞12日

神戸〜関空間のKジェットとしては'02年2月に運航を打ち切り、神戸空港開港の'06年7月から、神戸空港〜関空間のベイシャトルとして運航を始めました。その経過について唯一指摘しているのは33ページ(PDFでは35ページ)。

しかし、今振り返ってみると、航路再開にあたって、債務整理を怠り、多額の債務を残したまま事業再開したこと自体が問題であり、過去の負の遺産である巨額負債は現時点で整理すべきである。

事務局(つまり神戸市みなと総局)が検討委員会に、Kジェットが123億円もの債務超過(累積欠損158億円)になった経過について報告(第8回検討委員会)していますが、「運航初日のジェットフォイルのトラブル」など詳細で、「無利子融資」の事情については「事業継続の必要」と、あっさりしたものです。

意見書は株式化(DES)を勧めて結論としていますが、なお、市民負担を求め次のように結んでいます。

神戸市として港湾事業会計において必要な支援をしていくことについても、この際、市民に明らかにしておくべきである。

軌道修正の機会は4回もあり、その都度、神戸市は間違った判断をし続けました。1回目は'94年9月4日開港した関西空港への航路事業を、実質神戸市営で行ったこと。2回目は(国がどうしても航路が必要だというなら)阪神大震災を機に、会社を清算し(民営化し)ておくべきだったとき。3回目は'01年3月末で出国審査を国がやめたとき。付け足せばその半年後の9.11事件以降のテロ対策が強化されたとき。そして4回目は'06年の神戸空港開港にあわせて、7月13日ベイシャトルとして運航を再開したときです。つまり、今度が5度目です。

市民に債権放棄を迫って事業継続。これはあってはならないことです。

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2012年1月13日に追加

ピーチは3月から

関西3空港は、伊丹と関空の経営統合という「やや大きな港」をめざしているものの、次々押し寄せる世界不況と低成長の荒波に揉まれて、なかなか針路が定まりません。

経営統合という港に碇を降ろせるのかどうか。補給金の概算要求は'11年度と同じく75億円でしたが、年末の査定で6億円少ない69億円が認められ、来年度以降も削減するという約束が交わされたそうです。政府の予算書の、国交省航空局が所管する「社会資本整備事業特別会計空港整備勘定」「会社関係国費」「補給金」です。何度見てもこのネーミングには吹き出します。

「箇所付け」など特別な用語の多い役所のなかで、ネーミングは大事です。もう一つはLCC(ローコストキャリア)です。その名もピーチ。アップル社に対抗する訳でもないでしょうが。

1月5日に、関空から福岡と新千歳へ、250円で行ける席をピーチが売り出しました。ポートライナー三宮=神戸空港間より70円安く、値下げされた新神戸=谷上間より100円も安い(ややこしい表現をしましたが、神戸空港からピーチは飛びません。りんくうタウン駅から関空駅まで350円ですから、ここも100円安い)。「通常」でも新千歳へは4,780円から。

ANAは、神戸空港でこそシェアを落とし(12月に書きました)、JALは撤退しましたが、関西3空港からの就航先は大競争です。スカイマークが神戸から就航している新千歳、長崎、鹿児島、那覇に、ピーチも就航を発表しました。

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2011年12月12日に追加

スカイのシェア2割→7割

11月の利用者数が発表されました。JAL撤退から1年半、JAL撤退に伴う痛手から神戸空港は利用者数の回復が進んでいます。とりわけSKYのシェアは旅客数で4万から14万(1か月)、提供座席数で52千席から187千席へ。

リーマンショックから3年
神戸空港全体では利用者微減
スカイの利用者数3.5倍

データはhttp://www.city.kobe.lg.jp/life/access/airport/riyouzisseki.htmlより
  SKY 他社
'08年11月の利用者数  40,558 18.9% 173,951 81.1% 214,509
'09年11月の利用者数   45,805 25.0% 137,080 75.0% 182,885

'10年11月の利用者数 

95,925 56.5% 73,937 43.5% 169,862

'11年11月の利用者数 

144,891 68.2% 67,710 31.8% 212,601
表を変更しグラフをつけました(13日)

JAL撤退の穴をSKYが埋めました。かねて指摘してきた「スカイマーク空港」の面目躍如。また、かねて報じられていたように来年3月1日から「神戸−成田」2往復新規就航と「神戸−茨城」1往復増便を12月9日、SKYは発表しました。

利用者数ではピークの2007年度に遠く届きません。「一日30便達成」で便数は過去最大となります。管理収支の実質赤字は年間数億が続きます。

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2011年11月2日に追加

ここにも国策民営

空港と航空業、原発、基地は、国策民営です。

神戸空港を「西日本の拠点」とするスカイマークが、空港施設使用料をめぐって、日本空港ビルデング(ママ)との間で「払え」「払わん」と、揉めているようです。

'05年に羽田空港で初めて創設され、今年4月に値上げされた「空港施設使用料」は、法や都条例、あるいは大田区条例に定めるものではなく、店舗等を空港ビル内に出店する際に店子が払うテナント料でもなく、またもちろん法定の着陸料でもなく、搭乗者から空港ビルが徴収する「料金」です。航空会社が「代理徴収」するという契約になっているようです。

JALの説明では、「国内線」の使用料であること、「この料金は各空港ビル会社が、皆さまがご利用になる出発・到着ロビー等様々な施設を整備するための費用等に充当してまいります」ことや「当該料金は、航空券ご購入の際に航空運賃とともに空港ビル会社に代わって申し受けます」などとなっています。

スカイマークは今年1月、次のように言っています。

2011年4月1日〜4月10日の各種運賃において、羽田空港施設使用料については従来のままにしております。

「・・・合理的な根拠がないため値上げ分に関しては代理徴収することを拒否しております。当社としてはお客さまに対して値上げについての責任を負いかねますので日本空港ビルデングが自己責任において徴収されるよう先方にはお伝えしております」

契約書がどうなっているのか分かりませんが、空港ビルデング株式会社は、法律のような「旅客取扱施設供用規程」をつくり公表しています。「航空運送事業者等は、航空券を発行する際に、空港ビルに代わり出発及び到着旅客から本施設利用料を徴収するものとする」とか手数料を支払うとか。

そして11月1日、空港ビルデングはスカイマークを相手取って訴訟を起こしました。

国土交通省が大いに関与して創設された空港施設使用料です。中部空港と北九州空港でもこれは徴収されています。(1)スカイマークは創設の際や中部空港、北九州空港ではどういう意見を持っているのか(2)施設の利便性、利用者にとっての「使用価値」と、料金はどう比例しているのかを国交省に問いたい(3)羽田で創設された後、開港した神戸空港は徴収していないが、神戸市の見解はいかなるものか、など興味がわきます。

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2011年10月11日に追加

つづく深刻な危機

上半期の利用者数が発表されました。

先月と同様のグラフをつくりました。7月、8月(太字)は開港6年間で3番目に利用者の多い月でしたが、9月は定位置(4番目)に戻りました。3番になってもCSシリーズ進出とかはありません。

 

4月

5月

6月

7月

8月

9月

半期小計

2006年

215,267

235,655

210,395

206,115

243,979

242,569

1,353,980

2007年

221,125

248,692

231,674

238,363

292,552

268,320

1,500,726

2008年

218,861

235,024

200,592

201,205

249,344

228,911

1,333,937

2009年

162,422

180,992

176,829

199,592

223,670

220,980

1,164,485

2010年

172,388

202,914

144,341

161,026

188,655

191,208

1,060,532

2011年

179,356

207,885

194,629

212,317

254,485

227,809

1,276,481

平均

194,903

218,527

193,077

203,103

242,114

229,966

 
 

管理収支の深刻な危機が続いています。

本年度の神戸空港管理収支、約22億円のうち、着陸料等は約8億円で、地方交付税・航空機燃料譲与税・県補助金が当初計画を上回って投入され、加えて「雑入」のうち何と3億8,400万円が新都市整備事業会計からの借入金です。つまり、「基金」は昨年度中に使い果たし、造成会計と同じように「借金返済のための借り入れ」が始まりました。

見通し」にはこれまでの決算について、次のように書かれています。単位は百万円。

上記「見通し」は、年度末時点での決算見込みです。確定した「見通し」(つまり'10年度決算の確定数値)を下の表に加えました。赤ベタ白ヌキ数字です。(2011年11月14日に追加)

管理収支差額(平成18年度478、平成19年度299、平成20年度173)のうち、財政調整基金として、平成18年度464、平成19年度150、平成20年度117積み立てた。
その残額(平成18年度 14、平成19年度149、平成20年度56)は、決算剰余金として次年度に繰り越した。
雑入等のうち、新都市整備事業会計からの借入金として、平成23年度384。

3月次点での'10年度決算は見込みで、'11年度は予算です。この種の会計を見るときの注意点は、支出が「先ずありき」という点です。ここ数年は、支出のなかでも「市債償還費」が20億円まで急上昇します。当初の計画との間に、収入で毎年10億円ずつ穴が開きつづける状態です。「利用者数を増やす」→「離着陸の便数を増やす」ことが望めないので、「借り入れ」額はどんどん増え続けます。

やがて住宅供給公社やベイシャトル(海上アクセス)のように「神戸市民(新都市整備事業会計)が債権放棄」することになるか、一般会計をつぎ込む(市会決議を廃棄する決議)か。いや、ずーっとたまっていくのでしょう。関西空港には75億円の補給金が概算要求で約束されました。

  2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度
支出 1,015 1,255 1,426 1,727 2,066 2,261

同上'10年度決算

       

1,964

 
(うち借金返済) 288 501 732 1,072 1,395 1,609

同上'10年度決算

        1,369  
収入 1,493 1,554 1,599 1,727 2,066 2,261

同上'10年度決算

        1,964  
(うち雑入) 74 15 149 233 573 594

同上'10年度決算

       

442

 
(うち借り入れ)           384
             
収支差 478 299 173 0 0 0
             
繰り越し 14 149 56 0 0  
基金積み立て 464 150 117      
同上累計 464 614 731      

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2011年9月12日に追加

成長神話、無謬神話そして安全神話

神戸空港には99のウソがあり、原発には100のウソがあります。三宮マルイの前で5日から11日まで一週間、「9プラス25改憲阻止・市民の会」がおこなった「さようなら原発1000万人アクション」の街頭署名活動で、訴えました。ウソの数が1つ違うのは何か。存在するだけで生命を奪うか、そうではないかです。

自治体(財政)と関連するウソは、原発も神戸空港も、それぞれ1割ほどを占めています。税収一般、固定資産税、とりわけ償却資産税、国の補助金(または交付金)、建設中の経済波及効果と供用後・運転開始後の経済波及効果、これにはそれぞれ雇用と労使問題を含みます。空港消防は、自治体の消防とは別に設置が義務づけられていますが、原発は自治体消防に全面依存しています。いずれも一たび火災となると手に負えないという点では共通しています。航空機燃料のタンクは一目見て危険と分かるケバケバしい色が付けられており、原発の使用済み燃料プールは、何の危険も知らせていません。外見こそまったく異なりますが、これらこそ、原発と空港の「肝(キモ)」です。海上空港の場合は、いずれも海を破壊して成り立っています。埋め立てによる環境破壊、海洋環境の激変は海水温が上がる原発と、海水がよどみ汚れる海上空港など・・・。財政問題から離れますが、電源なしに成り立たない共通点もあります。成長神話、無謬神話、そして安全神話のベールにその本性が隠されていることが最大の共通点です。安全神話については石橋克彦教授の「本質的安全と制御された安全」論に私は賛同します。「科学的な装い」を凝らしたウソであることも共通します。ウソの数もほとんど同じ、共通点が多い両者ですが、いずれも「時代のヒーロー」にして「両雄並び立たず」、原潜があり「むつ」のように原子力商船も試されましたが、「原子力飛行機」はありません。従って空港と原子力が同居することもありません。

週末に神戸市が「神戸空港利用状況」をホームページにアップ しました。40字ほど削除13日たしかに「3か月連続で前年実績を30%以上上回った」「搭乗者数が25万人を超えたのは、2008年3月以来」

開港以来の4〜8月の旅客数、提供座席数、座席利用率は以下のとおりです。(市の上記ページより)

    4月 5月 6月 7月 8月
'06年度 旅客数 215,267 235,655 210,395 206,115 243,979
提供座席数 348,001 361,188 359,521 372,330 370,673
利用率(%) 61.90% 65.20% 58.50% 55.40% 65.80%
'07年度 旅客数 221,125 248,692 231,674 238,363 292,552
提供座席数 363,158 374,625 345,559 375,294 391,561
利用率(%) 60.90% 66.40% 67.00% 63.50% 74.70%
'08年度 旅客数 218,861 235,024 200,592 201,205 249,344
提供座席数 358,381 343,289 311,860 317,946 329,368
利用率(%) 61.10% 68.50% 64.30% 63.30% 75.70%
'09年度 旅客数 162,422 180,992 176,829 199,592 223,670
提供座席数 262,428 279,320 269,230 281,878 280,348
利用率(%) 61.90% 64.80% 65.70% 70.80% 79.80%
'10年度 旅客数 172,388 202,914 144,341 161,026 188,655
提供座席数 271,444 283,328 210,827 223,470 230,885
利用率(%) 63.50% 71.60% 68.50% 72.10% 81.70%
'11年度 旅客数 179,356 207,885 194,629 212,317 254,485
提供座席数 296,056 309,623 307,458 309,321 311,420
利用率(%) 60.60% 67.10% 63.30% 68.60% 81.70%

ひと月単位で見ると'07年8月が開港以来最大の利用者数で292,552人、最低は昨年、日航が撤退した直後の6月で144,341人でした。グラフにしてみました。

月別の変遷では、昨年('10年)が異常だったことが明らかで、「3か月続けて30%以上」前年を上回ったというのは、少し「成長神話復活」的です。

全日空につづき日航がLCC(ローコストキャリア)会社を立ちあげ、関空がLCC専用ターミナルを造ることに関連しているのでしょうが、スカイマークが9日、関空への帰還を発表しました。神戸が西日本の拠点と言ってきたのですが、変化が現れそうです。他のLCCが、例えばマニラ−関空−新千歳という便を飛ばし、国内に限っても航空運賃の値下げ競争はまだまだ続くようです。

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2011年3月18日に追加

空港問題および財政問題←ここからもYouTubeの「井上力の動画2」にリンクしています。


2011年3月8日に追加

目標の5割は可能

神戸空港の利用状況を神戸市が発表しました。めでたく対前年同月比、100超え。年間目標(403万人)に対し5割超え確実、誠におめでたいことです。SKYの新路線で、対前年同月比3か月連続増加。誠におめでたいことです。

もう一つ特筆すべきは、ローカル線。全便で3年連続減少、羽田便は3年で半減です。対して羽田以外の便は久しぶりに対前年比で増加になりそうです。誠におめでたいことです。

県補助金や地方交付税をつぎ込み、他会計繰入金(「他会計からの流用」と読みます)で、収支が償う、誠におめでたいことです。

神戸空港利用状況(年度ごと)2011年3月8日現在

 

羽田便

その他便

全便

2006年度 1,296,690 1,441,453 2,738,143
2007年度 1,480,209 1,492,003 2,972,212
2008年度 1,150,739 1,425,987 2,576,726
2009年度 1,038,262 1,297,145 2,335,407
2010年度 769,803 1,238,849 2,008,652

2011年2月17日に追加

開港5年

「10年たてば馬脚が現れる」と私は考えていましたが、5年で馬脚が現れました。以下は、けさの「なだ平和のための木曜行動。

きのう神戸空港は開港から5年、市役所前で抗議集会が開かれました。

「38億円で売るべき空港島の土地を9億円で売るとは、行政訴訟で市は負ける。エジプトのようにたたかおう」と井上力・県会予定候補。新社会党市議団からは粟原富夫市議と小林るみ子市議も。

管理収支は毎年、10億円の穴が開き、県補助金、地方交付税などで凌いでいます。それでも新年度は6億円近い収入不足が出るためさらに他会計から流用。空港島建設費の償還も行きづまり、新年度も借金で借金を「返済」。関西3空港一体運用へのかすかな望みも絶たれ、関空に200億円以上つぎ込んだ市と県は関空の一地主となり、運営への口出しは制約されます。休止・廃港を視野に入れた全市民の議論が求められています。


2011年2月7日に追加

年間乗客/計画達成率は55%変換ミス訂正8日

神戸空港は16日で開港5年。

1月の利用実績が発表され、2月−1月の年間利用者数は、開港以来最低の2,230,254人(当初の計画は403万人)だそうです。計画を下回ること180万人。計画達成率は55%です。

ところで1月28日に神戸市が発表した「ユーロコプタージャパンT&E株式会社」が格納庫を持つ計画ですが、面積は約14,380平米。

売却収入は14,380×27万円=38億8,260万円のはずです。
今年度の返済予定額(借金して返済)は650億円。

ところが売買契約は6,850平方メートルだけで、あとの約7,530平方メートルは賃貸借契約。場所は以下のとおり(いずれも神戸市)で、分譲と賃貸の線引きがどうなのか分かりません。

『神戸新聞』の報道では、売買代金は9億2千万円だそうです。75%引きです。

上図は神戸市が発表した文書からですが、「進出区画」は当初の土地利用計画で「小型航空機機能用地(固定翼)」の用地です。このページの下の方。スカイマークも格納庫を持つとも報じられています。ANAの格納庫の代わりにANAと縁のあるヘリコプター製造会社に、土地代が下がり賃貸とあわせて相当の土地が使えることになったので、スカイも、ということのようです。

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2011年1月13日に追加

乗客減 半年で止まる

12月の利用状況が公表されました。SKYの長崎便など増便で、対前年同月比で半年続いた利用者数の減少が止まりました。

11月と12月のデータは次のとおりです。

    11月 12月 増減
2009年
全路線合計
旅客数 182,885 175,289 −7,596
前年比(%) 85.3% 85.8%  
提供座席数 250,490 262,676 +12,186
利用率(%) 73.0% 66.7%  
2010年
全路線合計
旅客数 169,862 182,703 +12,841
前年比(%) 92.9% 104.2%  
提供座席数 250,374 290,178 +39,804
利用率(%) 67.8% 63.0%  

提供座席数が久しぶりに30万席に近づきました。前月より39,804席の増、旅客数増は12,841ですから、先月より26,963席分の多くの空気を運びました。開港一年目、二年目の頃の12月は約40万席でしたが・・・。

SKYが11万人・17万席、ANAが6万人・11万席(万未満切り捨て)、ずいぶん差がつきました。かつてこのページ(バックナンバーに)に「スカイマーク空港」と書いたことがありましたが、いよいよ、その様そうです。代わって野球場からスカイマークの名が消えるそうです。

いずれもSKYで注目の長崎便(4便/日、全便が羽田=神戸=長崎便)は57.7%の搭乗率、熊本便36.9%、鹿児島便56.3%。

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2010年12月10日に追加

関空は解体販売そして伊丹は民営化

「四分六にしとこか」とだれかが言ったのかどうか。

関西空港1.3兆円の負債をどう「上下分離」するか、いや資産査定を厳格に行い、その試算に基づいて債務返済の責任割合を決めるのが本来です。なのに「シサン」と聞いて、なぜか「しさんじゅうに」と計算し(かけ算は正しい)、さらに答えを「1」と「2」に解体して読んでしまいました。「くにまじり」さんと「じもと」さんの会話です。

くにまじり「1:2ではどうでっか」(2代続いて関西人の大臣です)

じもと「ちょっとキツイでんなあ」

くにまじり「ほな四分六でいきましょや」

まさかと思いますが。関空会社発足以来そしてこの国では、ずっと丼勘定。

4:6に分けて、兵庫県や神戸市は「関空土地保有会社」のオーナーとなります。巨大人工島・関西空港島を保有します。流行りの言葉で言えば「領有権」です。実効支配です。ただし、モノがつくれるわけでも、別の借り手をつくれるわけでもありません。雇用も減ることはあっても増えることはありません。

伊丹廃港後を見据えて「事業運営会社」を高く売るためには、「事業運営会社」はスタートから好成績でなければならないのです。

『毎日』の記事(12月7日、9日)を参考に、上の表はつくりました。

「関空土地保有会社」のオーナーは、次ような構成です。 あわせて、無利子貸付額を付記しました。この項12月13日にアップ

関西空港株式会社の大株主と貸付自治体('10年3月31日現在)

 

所有株額面

億未満切り捨て

割合

無利子貸付

 

金額(億円)

国土交通大臣

4,795億円

58.92%

国土交通大臣

1,577.17

大阪府知事

895億円   

11.00

大阪府

495.09

財務大臣

622億円

 7.64

   

大阪市長

447億円

 5.50

大阪市

247.26

兵庫県知事

124億円

 1.53

兵庫県

13.82

和歌山県知事

124億円

 1.53

和歌山県

13.82

神戸市長

62億円

 0.76

神戸市

6.72

徳島県知事

33億円

 0.41

徳島県

3.57

三菱東京UFJ銀行

26億円

 0.33

京都府

2.23

みずほコーポレート銀行

21億円

 0.27

京都市

1.38

     

奈良県

1.23

     

滋賀県

1.23

     

三重県

0.73

     

福井県

0.73

小計

7,153億円

87.89

2,364.98

関空会社有価証券報告書(第26期)より

出資については22ページ(PDF26n) 貸付については60ページ(PDF64n)
無利子貸付の総額5,554.69億円 貸付期間は40年('96年8月28日閣議)
政府補給金(毎年度90億円)閣議決定は'02年12月17日 支給'03年度より>

出資の経過については「関西空港株式会社有価証券報告書(第26期)」の11ページから12ページにかけて(PDFのページは15〜16ページ)書かれています。民営・関空と言われますが、国交省・財務省・大阪府・大阪市で83.06%です。債権放棄をすれば行政訴訟が起きますし、まさに 退くも進むも地獄です。

関西広域連合の課題とならず、すでに3空港懇談会の手も離れています。

土地保有会社に対して国が債務保証をする(9日『毎日』)とか、運営会社が黒字になるので準備金を積み立てる(10日、同)とか、いろいろ報じられています。

問題は、現状の債務超過状態から上下分離(解体)すればその超過している債務がなくなるか、または見えなくなるかのように国交省が考えていることです。債務がなくなるのは、債権者が債権を放棄し、関空会社の再建を放棄するときです。資産の評価額まで減資するときです。国も府県と市も、財産の減少を納税者に詫びるしかありません。

貸借対照表は資産と負債が同額になっているからバランスシートと呼ばれます。運営会社が引き受ける有利子負債額4,000億円は、ターミナルビルや滑走路など、「上物」の評価額で、運営会社のバランスシートは成り立っているとされています。

しかし、土地保有会社のバランスシートは空港島の資産について、「債務総額」−「4,000億円」という債務の残高から計算したというだけで、資産の評価額ではないのです。

上図の左下の関西空港の現状は、多額の「資産不足」(=「債務超過」)です。上図、右下の運営会社の資産に面積があうところまで、負債を減らすしかないのです。

ただし、関西空港という国家的プロジェクトのこれまでの経過を考える必要があります。もともと欠陥空港である伊丹空港の代替空港として建設されたこと。その収益は空港整備特別会計、現在の空港整備勘定へ、永年にわたって「上納」されたこと。その故に90年に関空開港後も伊丹空港を残すことになったこと、さらに2期工事(なお全体構想もある)。国と自民党がいうとおりに進めてきた結果、一日あたり3千万円も4千万円も税金で補てんしなければ飛行機が飛べない状態が生まれてしまったのです。銀行と大金持ちと減資を合意するのは当然ですが、自治体の出資についてはその責任の多寡に従って減資を不均一にするしかありません。

しかし、航空行政の大失敗の果てに、伊丹を「人手に渡し」、過去の自治体からの税金まで食いつぶして、「関西空港を解体して売却」というのでは、ひどいのではないでしょうか。中古車を解体し「部品取り」して、販売する業態があります。職業に貴賎はありませんが、国が、税金で造ったモノを解体して高価な部品だけ売って、コトを済まそうというのでは、話になりません。航空自由化協定時代の、先の見通しの(「運営会社は売却できる」)正しさも証明されていません。成長戦略と呼ばれていますが、土地保有会社だけでなく、運営会社の方も二次破たんの恐れがあります。

埋め立てて空港島を造成した。「新しい土地ができたのだから、その土地の評価額は造成費用に見合う」と考えるのは大間違いです。デベロッパー、開発資本は、その造成された土地をできるだけ早く売却することによって、原価を回収します。売れない土地から投下資本を回収しようというのは大間違いです。そういう計画を立て、70年代までうまくいっていた神戸市が、最近さっぱりなのは造成土地が売れないからです。土地が価値を増やしません。価値を増殖するのは人間の労働です。

神戸空港の扱いがどうなるかですが、管理収支で10億円ちかい穴が空いている現在の神戸空港に、「運営会社」が魅力を感じる可能性はなさそうです。神戸空港の滑走路には国庫補助が遅れながらも入っており、計算上、93.9ヘクタールで244.14億円の滑走路ですが、仮に無償譲渡しても、「くにまじり」さんが、突然立場を変えて「補助金返せ」と言い出しかねません。ずいぶん前に(バックナンバー3)このページに載せた図面ですが、「臨海土地造成事業会計」の地図は以下のとおりです。

番号 用 地 名 処分開始年度 面積 売り上げ 処分単価
(ha) 予定収入(億円)
@ 空港施設用地 平成14年度 6.7 17.42 26,000円/平米
A 空港施設用地 平成15年度 93.9 244.14
B 空港施設用地 平成16年度 37.7 98.02
C 旅客ターミナル用地 平成14年度 4.5 121.50 270,000円/平米
D 貨物ターミナル用地 平成15年度 2.8 75.60
E 駐車場用地 平成14年度 8.0 216.00
F 小型航空機機能用地(固定翼) 平成16年度 13.5 364.50
G 小型航空機機能用地(回転翼) 平成18年度 12.8 345.60
H 航空機サービス機能用地 平成16年度 11.5 310.50
I 航空機関連機能用地 平成16年度 7.1 191.70
J 総合物流施設用地 平成16年度 8.4 226.80
K 保管施設用地 平成16年度 1.4 37.80
L 業務施設用地 平成16年度 1.1 29.70
M 輸送用機械器具製造業用地 平成18年度 14.6 394.20
N 鉄軌道車庫用地 平成16年度 7.8 210.60
O 緑地(利便施設用地) 平成18年度 4.4 118.80
    236.2 3002.88  

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2010年12月9日に追加

利用者減少 6か月連続

神戸空港、11月の利用状況が発表されました。11月は前月より6便減り21便となり、利用者数も17万人を割り、対前年同月で6か月連続減少。12月からSKYが羽田便を1便増やしました。16日からはSKY羽田便6便のうち4便が「羽田−神戸−長崎」便になりますので、1日26便と少し多くなります。

12月8日の神戸新聞が「6か月連続減少」と報じました。そのとおりなのですが、今年1月まで23か月連続して減少(対前年同月比)、2月から5月まで4か月増加に転じたものの、6月から11月まで6か月連続減少です。12月は便数が増えますから、対前年同月比でそろそろ増加に転じそうです。

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2010年11月25日に追加

カネは出した。口は出せない

関西空港株式会社はすでに破たんしているが、破たん処理(減資)を出資者たちはイヤがっている。各企業の役員は株主代表訴訟で片っ端から訴えられるだろう。出資した自治体は行政訴訟に耐えられないだろう。そこで成長戦略。「成長」と名づけたからには、減資などあってはならない。そこで・・・

「負債=土地(島)保有会社」と「運営事業会社」に解体し、これに土地付き伊丹空港を現物出資して新会社を発足させる。新会社発足は2012年4月。

22日に関西の自治体に説明が行われた関空と伊丹の統合構想は、図で描くと以下のようになります。当初案では、年間40億円の伊丹の収益に課税されて本年度75億円の補給金を一向に減らせならないからだと説明されました。

いくつかの新聞が同じような図をつくっていましたが、井上力版が一番分かりやすいのではないかと、これが本当の自画自賛。

1兆3千億円の負債、うち1兆1千億円が有利子負債。リーマンショック前のトヨタなら1年で返済し終わる額ですが、仮に1年で130億円の利益を上げても100年もかかってしまう凄まじい借金なのです。従って311ヘクタールの土地付き伊丹空港をくっつけ、関空の方は土地を切り離して国営新会社を設立、再民営化をめざすという案です。

現物出資という形であっても国が増資するのですから、他の株主の権利は相対的に低下するのは当然で、国に次ぐ第二位の大株主、大阪府は179万余株(発行時約900億円)で11%の所有割合ですが、大幅に低下します。大幅に低下しないようなら統合効果はなく、関空の有利子負債は巨額のまま残ってしまいます。すでに大阪府は国交省とタッグを組んでいるようにも見えます。他の自治体すべて(大阪市、兵庫県、和歌山県、神戸市、徳島県)あわせても大阪府の持ち分に届きません。関係自治体がすべて「カネは出した。しかし口は出せない」状態に追い込まれていきます。

新会社の運営への関与は、絶望的です。伊丹をどうするか、神戸をどうするか、その両方に関わる兵庫県知事は、いよいよ追い込まれました。「3空港・5本の滑走路の一体運用」という兵庫県の方針に対し、すでに政権は「2空港・4本の滑走路」を運用するという回答を出してしまいました。

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2010年11月6日に追加

減る方さえ数えなければ・・・

10月の利用実績が発表されました。昨年と今年、8〜10月3か月間の全利用者数を並べると以下のようになります。1月まで23か月連続して対前年同月比減ののち、日航撤退直前の4か月間だけ対前年比で「増」でしたが、その後5か月「減」が続きました。

  8月 9月 10月
'09年 223,670 220,980 205,201
'10年 188,655 191,208 199,559

昨年は漸減、今年は漸増傾向。カギを握る便数は次のようになっています。

8月 9月 10月 11月 12月
21 23 27 21 26

SKYが搭乗実績でも提供座席数でもANAを引き離しました。ついに12月の「神戸市フライト時刻表」では、一番機はSKYです。

SKYが鹿児島便を再開し、AMXに代わって熊本便を、さらに長崎便・・・と、減る方さえ数えなければとっくに30便/日の規制撤廃と深夜便就航の実績づくりができたはずなのですが・・・。

「減る方を数えなければ」つまり増える方だけ数えれば、日本はとっくに完全雇用です。減る方を数えなければ産業集積条例や立地促進法は大成功し、全国の産業団地に遊休地は1平米たりともない状態が生まれています。減る方を数えなければ、いかに少子化といえども日本の労働人口は、さすがに中国には追いつけないまでも、激増中のはずです。減る方を数えなければ、中国進出企業数は10万社にのぼっている頃でしょう。・・・あほらし。

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